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私の魔術は使いにくい  作者: ロミ


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求婚

本日も2話投稿予定。

 



 バクシューレツ国と、ハメネイ国の国境についた。


 紛争時の国境は、荒々しかったが、今は荷馬車や馬、ラクダで移する人々が行きかう穏やかな道になっていた。


「以前見た時より、だいぶん落ち着いたんだね」

 エリナ姉の食糧需給率向上計画が功を沿うし、バクシューレツ国に流れていた難民がハメネイ国に帰り、難民テントや、進入禁止の柵などが撤去されている。

 みるからに、穏やかになった道を見ていると、エリナ姉の素晴らしさと、それを手伝えた自分が誇らしく思えて、嬉しくなって笑顔がこぼれた。


 ゆっくり進む荷馬車の中から外の様子をうかがっていると、バクシューレツ国の旅団の前に、ハメネイ国のきらきらした衣をまとった、お偉いさんらしき人達が並んでいる。


「ガサ」「キスグいるか、来てくれ」

 突然、乗っている荷馬車の帆がめくられ、バクシューレツ国の偉い人の従者が私を呼びに来た。


「なんですか?水ですか?」

 私は、この旅で、水をアイテムボックスに入れて運ぶ担当をしている。

 私の他にも、アイテムボックス持ちがいるが、貴重品担当や食料品担当、大荷物担当に分かれている。


「わからない。キスグを連れてこいと言われただけだ。来てくれ」

 偉い人の従者は、そう言うと、荷馬車から離れた場所で待っている。


 私とヨハンは顔を見合わせ、荷馬車から降り、待っている従者の元へ向かった。






 そのころ、スタークとピーターは、静かに行動開始した。

 なぜ、キスグが呼ばれたのか、バクシューレツ国の思惑も、ハメネイ国の思惑もわからない。

 何かあった時に、ヨハンだけではキスグを守りきれないだろう。


「スタークさん。私はちょっと出かけてきます」

 ピーターはそう言い残し、荷馬車を降りてどこかへ行ってしまった。


 ピーターが何者かはわからない。が、本人はバレないようにしているが、言葉や態度からキスグを敬う姿勢が、ちょくちょく見られる。

 ヨハンもそのことに気付いていて、何も言わない。いや、あいつは元から話さないか。


 大丈夫だろうと判断した俺は、キスグとヨハンの後を誰にも見つからないように後を付けた。






 バクシューレツ国の使節団と、ハメネイ国の使者が会談している、国境にある建物に来た。


「ここだ、入れ。失礼にならないようにな」

 偉い人の従者はそう言うと、扉の前に控えた。


 私とヨハンは、また顔を見合わせた。私に何の用事?私、変な事してないよ。

 私は、緊張しながらゆっくり扉を開けた。

「失礼します。キスグです」


 扉の向こう側には、私を勧誘したバクシューレツ国の宰相補佐の人と、ハメネイ国の煌びやかな布を被った20代後半ぐらいの男の人と。その護衛らしき人が1人控えている。


「こちらの方は、ハメネイ国第3皇子モハメド様だ。キスグに合いたいとわざわざこちらに来て下さった」宰相補佐の人が緊張しながら説明する。


「はー。初めましてキスグです」

 知らない人だ、初めて会った。黒髪に黒目の彫の深い顔をしているイケメン。身長も高く細マッチョ。

 肌の色が、日に焼けているのか、少し茶色ががかっている。気品があり、挑戦的な眼差しで、私に微笑みかけている。


「わざわざ、呼びだてて悪かったね。初めましてキスグちゃん。私はハメネイ国第3皇子モハメドだ。君の姉、エリナに求婚している者だよ」

 え!知らない!エリナ姉そんなこと一言も言ってなかった。ハメネイ国の王子に求婚されていたなんて初耳だよ。エリナ姉早めに教えておいてよ~。


「ハハハ。びっくりしたようだね。エリナは話してなかったかな。確かに求婚の返事はもらっていないが、他国だが王族の求婚を子爵令嬢が断るのは難しい。そのうちエリナも我が妻の1人になるだろう」

 モハメド王子は、自信たっぷりに宣言する。


 我が妻の1人?ハメネイ国は重婚可なの、知らなかった。

 なんか、イケメンなのに嫌な感じがする。エリナ姉は本当は嫌だろうな。エリナ姉イケメン好みじゃないし。

 今、ハメネイ国と我が国は和平を結んでないから、しっかり断れないんだろうな。国際問題こじれちゃったら大変だし。微妙な立場だな~。


 何で私を呼んだんだろう。何で私がこの使節団に居る事知ってるんだろう。しかもエリナ姉の妹だと知ってるよね。じゃあどこまで知ってるんだ!?大容量アイテムボックス持ちって事も、異変種スライムは私しか長期保存できない事も、女神の石臼の事も知ってるのかな?

 これは、なかなかヤバいよね。


「「・・・・・。」」

 私とヨハンが無言でいると、見かねた宰相補佐官が話し出した。


「キスグ、モハメド様はお前の大容量のアイテムボックスをえらく評価して下さっている。そこで、元砂漠の中心にあったダンジョン攻略にお前の力を借りたいとおっしゃっているんだ。名誉なことだぞ。

 ハメネイ国と、お前の国の友好関係を結ぶ上でも重要だぞ」

 宰相補佐官は、辛気臭い笑顔で詰め寄ってくる。


「「・・・・。」」

 無言の私とヨハン。


「キスグちゃん。これは悪い話ではない。ダンジョン攻略が叶えば、キスグちゃんの功績も大きい。

 エリナが私の妻にならなくとも、友好関係は確かなものになるだろう」

 モハメド王子も辛気臭い笑顔で詰め寄ってくる。


「「・・・・少し考えさせてください」」

 私とヨハンはそのまま部屋を退室した。



 どうしよう。どうしよう。えらい事になった。

 私は安全に国に帰りたかっただけなのに。断れば、このまま国に帰れるけど、エリナ姉は結婚させられちゃうし、了承したら、ダンジョンに行かなきゃいけない。私もヨハンも帰ってこれないかもしれない。

 どうしよう。こんな時エリナ姉なら何て言うだろう・・・・。断りなさいって言うな。


 ヨハンをちらりと見たら、腕を組んで、目を閉じている。


「ヨハン・・・・。」

 私は、心もとなくてヨハンを呼ぶと


「・・・・。わかっている。行くのだろう。もともとキスグの護衛を引き受けた時からか、故郷には戻れない覚悟はできていた。だが、生きて帰るぞ、帰ったら二度とキスグの護衛は引き受けないがな」

 ゴリラ顔のヨハンの笑顔があった。


「ぐすん、ぐすん、・・・・。ヨハンて長く話せたんだね」

 泣きながら笑顔で言う私に、ヨハンは笑った。












アウェイ感漂う、違うダンジョンに行くことになりました。

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