過ぎたるはなお、及ばざるがごとし
本日も2話投稿します
「ここで、キスグやって欲しい事があるの」
私とヨハンは、夜、宿で寝ていたところをエリナ姉に起こされ、新ダンジョン1階層に連れてこられた。
「明る」
眩しい。眠い。まだ、お子様の私は眠いのだよ。ぼーとしながら歩いてここまで来たけど、新ダンジョンに夜はなかった。透き通るような青空と、一面のお花。目の前は広大な畑。
新ダンジョンの外は真夜中だったのに、変な感覚だ。
新ダンジョン内には人が誰もいなかった。
普通は、昼夜問わず、24時間交代制で働いているらしいが、今日はエリナ姉の指示で、マーギン商会が人払いをしたらしい。
私達3人の貸切り状態だ。
本当にマーギン商会全面協力、エリナ姉の発言力よ。
「キスグにやって欲しいのは2つ。1つ目は女神の石臼で銀杏の千豆を出して欲しい事。2つ目はダンジョン産の野菜の苗を出して欲しい事よ」
エリナ姉は、どこか緊張している。
「何で、銀杏の千豆は銀杏集めて餞別すれば手に入るよ。
エリナ姉、自分で言ってたじゃん、『過ぎたるはなお、及ばざるがごとし』って、やり過ぎることも、やり足りないことと同じようによくないんじゃないの。
ダンジョンの野菜の苗も、理の断りを曲げることだよ。ダンジョンの野菜を開発したことは素晴らしいと思うけど、自然に育つのを待つんじゃなくて、すっとばして苗を作っちゃうって、自然の法則に反してるよね。突然、大量の野菜が供給されたら、農家や流通、それに付属する業者が大混乱するよ。
徐々に栽培していって、その間に社会を整えるんじゃないの」
いつも冷静なエリナ姉が、こんな提案するとは思えない。なにかよくない事があるのかな。
「そうね。私もそう思うわ。でも、そうも言っていられないのよ。
我が家ゾルトラーク子爵領と魔の森の浅い場所を隔てた隣。ハメネイ国は経済状況と、食料需給率が著しく低下しているの。そのせいでハメネイ国は紛争が勃発しているわ。
もともと低かった食料需給率を、先の長雨が響いて悪化、建て直せなかったみたい。
それで、噂では、ハメネイ国が我が国に略奪戦争を仕掛けるって噂があるのよ。
調べてもらったんだけど、間違いないみたい。近じか我が国はハメネイ国と戦争になる。その最前線が我が家ゾルトラーク子爵領よ。
大丈夫。そんな顔しなくても。
両親も、兄も対策しているわ。隣の辺境伯やバレンシア侯爵家の後ろだてだってある。
負けないわ。でも、被害は出る。私は、被害を最小限に抑えたい」
声に緊張をにじませ、冷静に話すエリナ姉。私の動揺を少しでも抑えようとしているのがわかる。
「今回、私がダンジョンの苗の開発を急いだのも、マーギン商会に新ダンジョン1階層を買わせたのも、そのためよ。マーギン商会には結構無理をさせたけど、私の研究を全面支援する代わりに、開発結果はすべてマーギン商会の物だから、いいでしょう。
それに、ここ、バクシューレツ国にも、ハメネイ国の影響は出ているのよ。
ハメネイ国からの難民が増えているの。ここもハメネイ国の隣国だからね。
バクシューレツ国は大国だけど、何千、何万もの人々を受け入れっるのは、さすがにきついわ」
知らなかった。隣国がそんなことになっていたなんて。
我が家ゾルトラーク家が戦争巻き込まれるなんて。
両親や兄達、領民は心配だけどエリナ姉の言う通り、私達にできる事をやらなきゃ。
私は、女神の石臼を吐き出した。
「銀杏の千豆を100粒ほしい」願いを込めながら、右に回せば、「バラバラバラ」真っ黒い銀杏の千豆が出てきた。
次に「ダンジョン産の玉ねぎと、ジャガイモと、ニンジンと、キャベツと、かぼちゃと、さつまいも、すだちの苗が欲しい」願いを込めながら、右に回せは、「ぼとぼとぼとぼと」大量の苗が出ていた。
「これで、ゾルトラーク家に銀杏の千豆を送れるし、この苗を使って、この広大な広さのダンジョンで作物を育てれば、難民が押し寄せるバクシューレツ国も、食料危機におちいっているハメネイ国も、一旦は落ち着くはずよ」
エリナ姉は大量に出てくる作物見て、安堵の表情を浮かべた。
次、ハメネイ国へ向かいます。




