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私の魔術は使いにくい  作者: ロミ


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鯖くさらし岩(童話)

本日の2話投稿予定です

 


「今日の夕飯、バンバーグだったっけ、鯖の味噌煮じゃなかったっけ」


 宿での夕食、事前のお品書きには、鯖の味噌煮と記載されてたのに、バンバーグが提供された。


「申し訳ありません。隣町から大量に鯖が釣れたと報告があり、新鮮な鯖を調達する予定だったんですが、王都に運んでいる途中、渋滞に巻き込まれたらしく、鯖が腐ってしまったそうです」

 宿の女中さんは、申し訳なさそうに説明した。


「渋滞。魔物か何か出て、トラブルがあたんですか」王都の近くで、トラブルを起こすほどの強い魔物が出現することは珍しい。


「いいえ、いつも渋滞する街道があるんです。坂道の丘の上に、今にも落ちてきそうな丸い岩があるんですが。地元の人は、その岩が落ちない事を知っているので、丸い岩の下の街道を、気にせず通行するのですが、それを知らない商人や旅人は、丸い岩が落ちてくるのが怖い。落ちてから通行しようと思うらしく、足を止めてしまうのです」女中さんは、さらに恐縮してしまった。


「鯖の味噌煮の恨みは重い。街道に渋滞を発生させる丸い岩を吸い込みに行こうじゃないか」

 腰に手をあて、仁王立ちしている私はやる気満々だ。






「おはようございますキスグさん。遅くなりました。お迎えにまいりました」


 翌日の朝、ナターシャさんとイーサンさんが馬車で宿まで迎えに来た。


「え?おはようございます。なんでナターシャさん達がいるの?」

 隣町の、丸い岩がある街道まで、辻馬車で向かう予定だった私とヨハン。

 ナターシャさんに、行くとは伝えてないのに、情報網と行動力に、私もヨハンもちょっと引いてる。


「はい、昨日の夕食で鯖が調達できなかったのは、マーギン商会の不手際。申し訳ありませんでした。お詫びに今日は全面サポートさせていただきます。どうぞ馬車へ」

 ナターシャさんは馬車の扉を従者のように開け、私達を誘導する。


「は、はい。よろしくお願いします」

 ナターシャさんの圧に、拒否をできず私達は馬車へ乗り込んだ。




「ここが、渋滞が発生しやすい街道です。あそこの丘の上に見える丸い岩が渋滞の原因です」

 馬車に揺られて到着した街道はすでに渋滞気味。のろのろ進んでいる。


「確かに、今にも落ちそうな岩だね」

 丘の上に7mくらいの丸い岩が鎮座している。


 街道は片側一車線。脇に寄せるスペースもなく、片側が丘、もう一方の片側が平坦な森に囲まれた場所だった。


 丸い岩のある丘に到着した私とヨハン、ナターシャさん、イーサンさんの4人は、早速丘を登り丸い岩の元へ。


「景色いいね」


 丘の上から別世界のような景色が開けた。朝方に霧雨が降っていたため、白い霧がかかったような青空の下、緑色の畑や田んぼなどが広がる自然豊かな田園地帯の向こう側に、無機質な色とりどりの建物が並ぶ王都。日の光を浴びてキラキラ光っている。

 真下には、上り道も下り道も馬車が列をなし、どこまでも続いている一本道。


 そこへ、地元の老人が丘の上を通りかかった。


「こんなとこで、何をしとるんじゃ。景色を見に来たのか?いい景色じゃろ。わしもこの景色が大好きじゃ」老人は遠くの景色を見ながら嬉しそうに話す。


「綺麗な景色ですね。おじいさん、いつも来るんですか」


「ああ。若いころから辛い事があるとここに来てな、丸い岩と一緒に景色を眺めとる。

 そうすると何だか、いろんなことがどうでもよくなってな。

 この丸い岩のように、人生もいつ転がるかわからんじゃろ。好転するかもしれんし、転落するかもしれん。人生はわからんから面白いし、足掻くんじゃ。

 明日も、今日とそう変わらん日々じゃろな。だがな、だらだら過ごすのと、最善を尽くすでは、1日の疲れ方が違う。最善を尽くした方が心地よい疲れじゃ。

 今は、仕事を引退して、ここは毎日の散歩コースじゃな。

 わしは年取ったが、丸い岩は変わらん。そこがいいんじゃ」

 老人は、景色を見ながら遠い昔を思い出しているようだった。


「「・・・・」」


 私は丸い岩を噛った”丸い岩(絶対落ちない)”と表示された。


「そうなんだ。私もこの景色も、この丸い岩も好きだよ」

 おじいさんに笑顔で返した。






「ナターシャさん。上り道も、下り道も、この丸い岩の手前にスペース作れないかな。馬車が10台ぐらい止められるスペース。そしたら、渋滞緩和すると思うんだよね。

 丸い岩が落ちてくるのが怖い、落ちてから進もうと思う人は、そのスペースで待てばいいし。そうじゃない人は進めばいい。

 スペースを作る場所は、丸い岩が見え出した場所。

 スペースにトイレとか、飲みものとかあると助かるかな。どうかな。

 あ!この景色いろんな人に見て欲しいから、この丘の上の道もスペースとつなげて欲しい」

 私は、前世の高速道路のパーキングをイメージして説明した。


「スペースを作る・・・・。いいですね。スペースの確保が大変ですが、出来ると思います。このナターシャ、キスグさんの希望、アイデア絶対実現させて見せます」

 鼻息荒く、ナターシャさんが宣言したと思ったら、早速イーサンさんと目配せし構想を練り始めた。


 おじいさんと私、ヨハンは、少しの間、同じ景色を見ていた。






「それで、結局、丸い岩は、キスグのアイテムボックスには入れてこなかったの」


 隣町から帰ってきて、エリナ姉の研究所にお邪魔している。


「うん。絶対落ちないって表示されたし、地元の人には長年愛されている岩だったしね。アイテムボックスにいれる必要はないよね」




後日談。マーギン商会が立ち上げたパーキング事業が軌道にのり、いろんな街道に設置。現代並みに便利なパーキングエリア、観光地となります。




今回は、アイテムボックスに入れない物語があってもいいよねと思い、書きました。


鯖くされ岩。実在する岩です。検索してみるとイメージがわきます。


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