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私の魔術は使いにくい  作者: ロミ


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うみのみずがしょっぱいわけ(童話)

少し早い時間ですが、本日2話目の投稿です

 





「とんとんとん・・・・

 1階層の扉にスライムが当たっている音がする。

 1階層の扉の隙間から、少しずつスライムが這い出てくる。


 基本的に、ダンジョンの扉や、壁は物理では壊れないし、階層の魔物は出てこない。

 が、異変種スライムはダンジョン産じゃない。


 検索組は、今まで半年間、まったく魔物がいなかったダンジョンに、突如大量のスライムが発生したことに、興奮さめやらない様子。


 言えない、絶対に言えない。異変種スライムは私が持ち込んで、あやまって増殖させてしまったなんて、口が裂けても言えない。

 マイペースなバレンシア侯爵令嬢も、冷静さを取り戻したストーム副騎士団長も、お疲れ気味の騎士団員達も異変種スライムの事には一切触れない。ヨハンはもともと話さない。


 私は、扉の隙間から這い出てきたスライムを一匹アイテムボックスに入れた。

 ”女神の塩水バーション異変種スライム(塩キャラメル)”

 ん!?異変種スライムだけど、バージョンアップしてる。しかも塩キャラメルって、プリンの茶色い所。


 美味しそうだけど、またヤバイの見つけちゃったよ。

 うん、よし。考えるのやめよう。すべてエリナ姉に丸投げだ。



 1階層の扉の前で、興奮冷めやらない検索者をよそに、私たちは新しいダンジョンの入口の階段を上り、外に出てきた。

 外は夜になっており、少しひんやりした澄んだ空気が流れていた。空にはまん丸お月様が浮かんでいる。


「外も、綺麗だね。」私が小さくつぶやくと。隣に居たヨハンも空を見上げた。


 今日は、新しいダンジョン横の詰め所で1泊だ。雑魚寝だけど、屋根と床があるだけでありがたい。



 翌朝、朝食を終えて、1階層の扉の前までやって来た。

 検索隊の目の下には隈ができている。夜通しスライムを採取していたようだ。


 1階層の扉の前に異変種スライムはおらず、代わりに扉の周りは草や小さな花で覆われている。

 検索隊が捕まえてた箱の中のスライムも消え、草と小さな花になってしまったみたいだ。


 以前も、人まね魔物に異変種スライムをぶつけた時、朝起きたら2mの岩場も、人まね魔物の死骸があった場所も、草と小さな花で覆われていた。


 異変種スライムが、植物を生やしたんだ、いや変化したのかな。


 じゃあ、1階層の扉の向こうはどうなってるんだろう。


 1階層の扉に耳をつけて、音を聞いてみる。何も音はしない。


「空けてもいい?」私は検索者に、小声で聞いてみた。


 検索者も扉を開けたかったが、昨日のスライムの勢いのままなら、自分たちでは押さえきれず、溢れさせてしまう可能性を考え、扉を開けれなかったらしい。すごい勢いで、首を縦に振っている。


 私は、ヨハン、バレンシア侯爵令嬢、ストーム副騎士団長に目配せして、1階層の扉を開けた。





「まるで、天国にいるみたい。こんな景色、初めてみたよ」



 辺り一面が緑の草で覆われ、小さな色どりどりの花が咲いている。どこまでもどこまでも続くお花畑。空は高く澄み切っていて、かわいい雲が浮かんでる。ちょろちょろと1階層の扉の横から水が出ているのみで、大量の水も砂もない。

 メルヘンチックな空間へと生まれ変わっていた。


「これは凄い。どうなってるんだ」

「これは、水より検索しやすい。2階層への扉が早く見つかるかもしれませんぞ」

 検索者は、地べたにしゃがみこみ、草を触ってみたり、引っこ抜いてみたり、食べてみたりして興奮している。


 私も、ダンジョン1階層の地に足を踏み出し、周りを見渡した。


 少し歩くと、遠くの方に、白い山ができている。


「ヨハン何だろ、あそこ見て、白い山あるよね、行ってみよう」

 私はヨハンを連れて、白い山の方へ、


 白い山は、1mほどの高さで、触ってみると塩っぽい。

 アイテムボックスに入れてみると

 ”女神の塩(小さい石臼で作成)”と表示された。


 これが、女神の塩。前が女神の塩水だったから、これが水に溶けた物だったのかな。

 小さい石臼で作成って、小さい石臼なんてないよ。白い塩の山を見つめていたら閃いた。


 白い塩の山を勢いよく崩すと、地面の上に小さい石臼を発見。塩が出続けている。


 前世で子どもの頃、こんな童話、日本昔話のテレビで見た気がする。なんだっけ、弟がもらった何でも出てくる石臼を、兄が盗んで、海に塩を出したままの石臼と一緒に沈んじゃった話。だから海の水はしょっぱいんだって、子供の頃は本気で思ってたんだよね。


 どうやって塩止めるんだっけ、肝心なとこ思い出せない。うーん。

 左に回すんだっけ、右に回すんだっけ。

 普通は石臼で擦る時は、右に回すよね。じゃ左に回せば塩止まるかな。


 左に回してみよう。石臼を左に回すと塩が出るのが止まった。

 やった。止まった。


 石臼を右に回すとまた塩が出てくるのかな。今度は右に回してみた。

「塩出てこい」やった。塩出てきた。


 じゃあ、日本昔話では、何でも出せる石臼だったんだよね。2階層の扉も出てくるかな。

「2階層の扉出てこい」やった。2階層の扉出てきた。


「・・・・。」

 ヨハンが、慌てて私と石臼を抱えて走り出し、2階層の扉から距離をとった。




 遠くから「あれ見てみろ」「扉じゃないか」「行ってみよう」検索者の声がする。


 ヨハンは見つからないようにそっと離れた。





「・・・・。」

 無言のヨハン。圧が凄い。


 今、私たちは、新しいダンジョンの詰め所横、人気のない場所に来ている。

 やらかした。またやらかした。


 私のアイテムボックスに入った小さい石臼は

 ”女神の石臼(何でも出てくるダンジョン限定)”と表示された。

 なので、詰め所の横で、石臼を回しても何も出てこない。


「・・・・。」無言で私を見下ろすヨハン。


「わかっています。エリナ姉に相談します」







これで、新しいダンジョン1階層終了です。

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