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私の魔術は使いにくい  作者: ロミ


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信じるか信じないかは、あなた次第です。

本日2話目の投稿です。珍しく長いです。

 


「うわ。気持ち悪い部屋」


 今、私は、マーギン商会、商会長の家、豪華なマーギン邸に来ている。






 私たちの旅団が、バクシューレツ国に到着し、宿で一泊した次の日。

 マーギン商会長自ら、エリナ姉に合いにきた。


「エリナ様、折り入ってお話があります」

 眉間に皺のよった、やつれた老人(商会長)が、エリナ姉に向かって、土下座している。


 エリナ姉も突然の土下座に、少し引いているが、

「あ、あなたの要望は、なんとなく理解しています。息子さんを救ってほしいという事ですよね」


 目に涙をいっぱい貯めて、勢いよく顔を上げた老人は、今にもエリナ姉に飛び掛からん勢いで、

「はい、我が息子は、2年ほど目覚めないのです。多くの医師、鑑定士、聖職者、除念師にも診せました。みな問題ないと言います。でも目覚めないのです。

 私はこの2年間、各国の眠りや、覚醒に関する者達を集め、薬の研究や、魔術の研究を支援して来ました。

 いろいろな新薬の開発、魔術の新しい見解など、支援に対して成果は出ているのです。

 ただ、息子には、まったく効果がないのです!」

 もう、目から大粒の涙を流して泣いちゃってる。


 ドン引きしているエリナ姉は、

「そ、そうなのですね。私に何をしてほしいの」


 土下座の状態から膝立ちになり、凄い勢いで、エリナ姉まで近づき、エリナ姉の両手を掴もうとした時、ヨハンが間に入った。老人はヨハン越しに、エリナ姉を見上げながら、

「不治の病で幾ばくも無い、辺境伯の奥様を回復させたと聞きました。お願です。そのお力、是非是非、我が息子に使って頂きたいのです」

 老人はエリナ姉を拝んでいる。


 エリナ姉は、ヨハンの陰に隠れながら、

「私の魔術は水魔法です。魔術で辺境伯の奥様を回復させたわけではありません。どうやって回復させたかは言えませんが、これから私は、薬の研究施設で新薬を開発する予定です。研究施設に今後も十分な支援を継続していただけるなら、息子さんを診てさし上げます」


 老人は、エリナ姉を見つめながら、涙でぐちゃぐちゃな顔に、安堵の笑みを浮かべた。


「ですが、勘違いなさらないで。診ますが、治せますとは言っていません。根本的な原因がわかっていないのです。まずは診せて下さい」


 エリナ姉の強い口調に。老人は大きくうなずき。

「わかっています。診て頂けるだけでも十分です。研究所への支援は継続させていただきます。息子の事よろしくお願いします」

 老人は、深々と頭を下げた。





 商会長が訪ねて来た翌日。

 商会員バイオレットにつれられ、エリナ姉、私、ヨハン、騎士団員の2名の合計6人でマーギン邸を訪れた。

 マーギン邸の壁は、近くの貴族屋敷の壁より倍高く、門も重厚で、屈強な門番が2名、門を守っている。


 門番に、来たことを告げると、中から、見覚えのある執事さんが出てきた。


「お久しぶりです。本日はよく起こし下さいました。会長がお待ちです。どうぞ中へ」

 執事さんに促され、重厚な扉を抜けマーギン邸へ入った。


 マーギン邸の園庭は、色とりどりの花で埋め尽くされ、バラのアーチや、兎や動物の形を模った木など、どこかメルヘンチックな空間だった。


 マーギン邸の中に入ると、広いエントランス、中央に2階へ続く大階段。

 エントランスには、花々が飾られて、濃厚な花の香りが充満している。


 大階段から、マーギン商会長が駆け足で降りて来た。その後ろをゆっくりした足取りで、エリナ姉と同じぐらいの年の、フリルいっぱいのドレスを着た女性が降りてくる。


「よくいらっしゃいました。お待ちしておりました。」

 老人(商会長)は、私たちの前に立ち万遍の笑みだ。そこへ、フリルドレスの女性が老人の横に到着した。


「ナターシャ、こちらはエレナ様、イーサンを診てくれる方だ」

「エレナ様、この子はイーサンの婚約者でナターシャ。いつもイーサンを励まし、寄り添ってくれる女性です」老人が誇らしげに紹介した。


「イーサン様の婚約者ナターシャです。お見知りおき下さい」フリフリのドレスを摘まみ上げ、優雅に挨拶しているが、その目は笑っていない。どちらかというと、エリナ姉に対して挑発的だ。


 その挑発的な表情を受け、「エリナです」エリナ姉のこめかみに青筋が立っている。怒だ。怒だ。


「テラスにお茶を準備しています。中へどうぞ」

 そんなことには気づかず、老人はお茶を勧めてくる。


「いいえ、息子さんを診てお暇させていただきます。息子さんのお部屋へ案内下さい」

 エリナ姉は、顔に無表情を貼り付けた。業務に徹するようだ。






 イーサンさんの、部屋の前に着いた。

 部屋の前には、屈強な男が2名立っている。そういえば、この屋敷で、女性を見ていないな。庭師も、掃除夫も、メイドも、屈強な男だった。うわさ通り、屋敷の警備を強化しているって本当だったんだ。


 老人(商会長)に促され、エリナ姉、私、ヨハンはイーサンさんの部屋に入った。バイオレットさん、騎士団員は扉の前で待機だ。


 部屋に入った瞬間 3人とも固まった。


 部屋自体は広いが、ピンクのカーテンが閉められ薄暗く、消毒薬の匂いが充満する部屋は、左側の壁には所狭しと、木彫りの人形が複数立っている。祭壇にはミイラ化した手。右側の壁には大きく口を開けた仮面が複数飾られ、壺や、剣など所狭しと置かれている。ベッドサイドには、怪しい光を放つランタンと、ランタンに照らされた、ネックレスや、指輪などの貴金属多数。

 呪念の集まりなのかと思うほどの異様な空間の中央には、天板付きの白い大きなベットに横たわる人間。骨と皮だけになった、浅黒い顔の人間が、指や腕に複数の指輪や、ブレスレット、ネックレスを付け、横たわっている。人間の枕元には、毛糸でできた熊さんや、兎さんの人形が寄り添って寝ている。



 この異様な光景の中、老人はにこやかに、エリナ姉に診てくれるよう頼んだ。


 我に返ったエリナ姉は、横たわった人間に近づいた。

 息はしているようだ、だが、もう自分で何かすることができないほど、衰弱しきっている。


 エリナ姉がイーサンさんに触ろうした時、エリナ姉に向けて後ろから殺気が飛んできた。


 とっさに、身構えたエリナ姉とヨハン。殺気は一瞬で消え、微笑むナターシャさんがそこにいた。



 エリナ姉との約束で、私がイーサンさんを噛むことになっている。


 嫌だ、マジ嫌だ。何でいつもこんな役回り、私は鑑定士じゃないんだぞ。

 銀杏の千豆食べされたら、いちころじゃん。元気になるじゃん。

 もう今度から、美味しいもので釣られるのは辞めよう。私は心に固く誓った。


 私は仕方なく、イーサンさんの手を取って噛みついた。


 ”イーサン(ナターシャによる執着、嫉妬の相乗効果状態)”

 震える。もう後ろを見れない。他人の感情でここまで人は衰弱するの。


 呪いに近いけど、呪いではない。ましてや病気でもない。

 鑑定士も現状を鑑定できるだけで、他者から向けられた感情なんて鑑定できない。


 私は一緒にブレスレットも噛んだらしく、

 ”ゲンスルー作、ブレスレット(愛情集約の相乗効果状態)”

 かなりやばめのブレスレット装着されてらっしゃる。相乗効果って何さー。

 ゲンスルー?聞いたことある。あ!辺境伯領でヨハンのハンマーに付与した付与士さんだ。


 イーサンさんを噛んだ後、うつむいたまま震える私に、エリナ姉が私の肩を抱き

「従者の気分が悪くなってしまったようです。これでお暇しますわ」と、宣言したエリナ姉は、老人の言葉を無視して、ヨハンに私を抱えさせ、足早にマーギン邸を後にした。









やっと書けた。今後の展開迷走中。

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