ジン兄は今日も私を振り回す
検証回です。短いですが、今日中にもう一話投稿予定です。
「キスグ、起きろ、湖に行くぞ」
おはようございます。
夜も明けない暗い時間から、私の部屋にノックもなく入ってきたのは、私の兄、ジン兄。子爵家次期当主なのに、デリカシーは無く、言葉遣いが乱暴だが面倒見の良い兄は、今日も私を振り回す。
私のマジックボックスに時間停止機能があるのか、昨日の検証の続きをしたいらしい。
朝4時から、ジン兄のタイミングに私を巻き込むなよ。
ジン兄の魔術は狩人。この世界では、魔術が職業なことは珍しくない。
ちなみに、父の魔術は剣術で、母は簿記。兄嫁は土魔法だ。
授かった魔術が、その人の性格や、能力に反映されることが多い。ジン兄は、朝が早く、いつでも準備万端。勘が鋭く抜け目がない。ジン兄は森に入ると能力が著明になる。存在が気薄になり、視力も体力も身体も強化される。
今日は、魔物の森の入口にある、湖に行くようだ。
この湖は、直径500mほどで比較的安全。昨日マジックボックスに入れた魚も、ここで獲れた魚だ。
子爵家からは、大人が歩いて1時間ほどで到着する。
「やっと、着いた」
「お疲れ、早速だが、昨日の魚を出してみろ」
「待って、疲れたから休ませて」
「いいけど、空が明るくなったら、湖の魚を獲りに住民が来るぞ。お前のワニ顔見せるのかよ」
ジン兄は、一応私の事を考えてくれたらしい。仕方なく、口に手を突っ込んで魚を取り出す。
「お!生きてやがる!これで、時間停止機能があること決まりだな」
「生きた魚を、口から出すって、私は鵜なのか」
「まー落ち込むな。人生思うようにはいかないものだ、時間停止機能がある事を喜べ」
「今度は、液体をマジックボックスに入れる検証をしようぜ、まず、この湖の水を吸い込め」
「え!この湖の水!汚くない?おたまじゃくし泳いでるよ」
「そう!汚いのが良い。液体を吸い込むとき、範囲で吸い込んでいるなら、不純物も一緒に吸い込まれる。水だけ吸い込んでいるなら、厳選して吸い込めることになるだろ。おたまじゃくしが泳いでるとこに顔を突っ込め」
私はじっと湖の中を覗き込んだ。ジン兄の言っていることはわかる、検証には必要だろ。
でも、理屈と行動できるか別問題だ。嫌だ。顔を突っ込みたくない。
私は湖の水を手で掬い、口に入れた。
マジックボックスには、湖の水(約150cc)と表示された。
「キスグ、俺の話聞いてなかったか、顔を湖に突っ込め」
「嫌だよ。汚いもん。口は汚れなくても、顔は汚れるんだよ。頭の中で湖の水って表示されたから、水だけ吸い込めるんだよ」
「・・・・。」
ジン兄にじっと見つめられ、無言の圧力がかかっている。
「・・・・。」
私も見つめ返し、圧力返しをするが、負けてしまった。
「わかったよ。やるよ、やりますよ」
私は、おたまじゃくしがいる場所に顔を突っ込で、水だけ吸い込むことを意識して水を吸い込んだ。顔はびしょ濡れである。
マジックボックスには、湖の水2(約1ℓ)と表示された。
「湖の水2、量も表示されたよ。吸い込んだ時と取り出す時だけ、頭の中で表示されるみたい。あれ?水はどうやって取り出すんだろう?手で掴めないよね」
私は、手を口に入れて湖の水1を出すイメージをすると、口の中から、だらーと水が流れ出てきた。腕がびしょ濡れである。
「ガハハハ。何やってるのキスグ、びしょ濡れじゃん。お前考えてから取り出せよ。毎回びしょ濡れになるわけにはいかないから、他に取り出し方ないか後で検証だな。今度は、湖の中のおたまじゃくしだけ吸い込め、液体の中に入っている物だけ吸い込めるかの検証だ」
「・・・・。」
私は不満だが、仕方ない。もう一度おたまじゃくしがいる場所に顔を突っ込んだ。おたまじゃくしだけ吸い込むことを意識して吸い込んだ。顔はびしょ濡れである。
マジックボックスにおたまじゃくし(約10000匹)と表示された。
「10000匹!」
おたまじゃくしだけ吸い込めたが、湖のおたまじゃくし全部吸い込んだようだ。
「おー。凄いじゃん。液体の中にある物は厳選して吸い込めるんだな。でもさ、キスグ。固形物は手で掴んで取り出すしかないんだろ、おたまじゃくしどうするの?」
「・・・・。」
「あー。何でこうなったー。」私は絶叫した。
その日私は湖の片隅で、口の中からおたまじゃくしを10000匹、一1匹ずつ摘みだしたのだった。
ジン兄は、先を予想して行動させてます。主人公がんばれ。
次回もジン兄との検証です。




