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私の魔術は使いにくい  作者: ロミ


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人間バイキング

本日も2話投稿予定。

 

 バレンシア侯爵令嬢の火魔法、手榴弾は大きな音をたて、そこら中に火災を発生させている。


 私はガムを噛んでいるから影響がないが、旅団員は、周りで燃えている木々の熱さと、煙の中をひたすら走った。


「シュンッ」

 バレンシア侯爵令嬢の持っている手榴弾に、燃えている木々の隙間を縫って、大きな糸の塊が真っ直ぐ飛んできた。


 魔術弓術の騎士団員が素早く反応、糸の塊が飛んできた方向に向けて矢を放つ。

 矢は燃えている木々の向こう側へ吸い込まれていった。


 旅団員は、その場で臨戦態勢にはいった。


 燃え盛る木々の真ん中で臨戦態勢のまま待つこと10分。


 なにも起こらない。


 旅団員は緊張と熱さで、汗だらだら、煙で呼吸がしずらく、目が痛い。


「あ!」私は、私を噛んでみた。

 ”キスグ(魔力抽出中)”通信が復活している。


「バレンシア様、糸の塊焼いて!」バレンシア侯爵令嬢は火魔法で糸を焼こうとするが焼けない。


「ストーム副騎士団長、糸の塊遠くに飛ばして!」ストーム副騎士団長は風魔法で、糸の塊を遠くへ飛ばした。


 すると、糸の塊が次から次へと、うち込まれる。


「糸の塊は、魔力吸収の通信機です。通信機がある限り、魔力が抽出され続ける」

 私が叫ぶと同時に、魔力量が少ない紅団団員が膝をついて崩れ落ちた。

 他の旅団員も立っているのがやっとだ。


「遠くに逃げて!糸の塊の分だけ、倍々で魔力吸引しているのよ」エリナ姉が叫んだ。

 エリナ姉は素早く水魔法を展開し、周りの燃えている木々を消火した。


 すると、火が消え灰の匂いが辺りに充満した。火が消える際に発生した蒸気が薄れてきたころ、8つ目の3mはある真っ黒な毛もくじゃらな蜘蛛の魔物が、燃え残った木の向こう側から、こちらをじっと見ていた。


 殺気はなく、動かず、だだじっと見ている。


 魔力がなくて旅団員は動けない。まるで、蜘蛛の巣に捕らわれたかのように。





「攻撃だ!」バレンシア侯爵令嬢が叫んだ。

 火魔法で作った手榴弾を、8つ目の蜘蛛の魔物に次々と投げていく。8つ目の魔物はすべての手榴弾を糸の塊で包み込み、地面に落とした。


「バレンシア無理よ、逃げましょう」エリナ姉の悲痛な叫びがこだまする。


「魔力の多いエリナとキスグは助かる、逃げろ、ここは引き受ける」バレンシア侯爵令嬢は、すがるエレナ姉を引きはがし、剣を構え8つ目の蜘蛛の魔物に対峙した。顔が青白く、魔力枯渇状態だと一目でわかる。


「エリナ様、私たちが引き受けます。魔力の高い二人だけでもお逃げ下さい」ストーム副騎士団長が

 風魔法の竜巻を展開、蜘蛛の魔物に叩きつけたが、蜘蛛の魔物は近くの木々に無数の糸を絡め、体を固定して飛ばされない。


「置いて行けるわけないじゃない」泣き崩れるエリナ姉に、大きな糸の塊が迫り、エリナ姉をあっという間に包み込んだ。


「エリナ姉!」エリナ姉の所に走り出した私の方にも大きな糸の塊が迫まった。

 大きな糸の塊に包み込まれる瞬間、ヨハンが私の手を引いたが、魔力枯渇しているヨハンに引き寄せる力はなく、ヨハンと一緒に包みこまれた。








「ヒュー、ヒュー」

 ここは何処、どうなったんだっけ。


 何だか頭がぼーとする。目の前が、目を開けているのに真っ白で、息がしずらい。手も、足も動かない。

 そうだ、私、蜘蛛に捕らわれたんだ。


 ヨハンが近くにいる?!

 もうろうとする中、意識を集中すると、右手を誰かが握っている。

「ヨハンだ」。ヨハンの手は温かい。

 まだ生きてる!


 何とかして、ヨハンを起こせないかな、糸の塊からぬけだせないかな。

 両手両足は、糸が絡まって動かせない。目は動かせる。口は・・・・動く!


 私は力いっぱい顎を引き、大口を開けて、白い糸を舌で手繰り寄せ、噛みついた。

 ”蜘蛛の糸(状態保存)”と表示された。

 ギリギリまで魔力を吸引して生かしてるんだ。


 私を包んでる糸を、アイテムボックスに入れる脱出方法しかないけど、糸に包まれてるヨハンはどうなるの。

 糸だけアイテムボックスに入れる事はできる。でも魔力枯渇寸前のヨハン。

 魔力ポーションは全部渡してしまったから持ってない。


 蜘蛛の糸(状態保存)がなくなったら、助けられない。

 どうしよう。どうしよう。どうしよう。

 考えても仕方ない。ごめんヨハン。アイテムボックスにヨハンごと入れるね。

 私のアイテムボックス内がどんな状況かわからないけど、時間停止機能が付いているから死なないはず。

 私は、再度蜘蛛の糸に噛みつき、アイテムボックスにヨハンごと入れた。



「べちゃ」私は蜘蛛の糸から解放されたが、高いところから落ちた。


「何、このべちょってした地面、気持ち悪」私はゆっくり立ち上がった。少しふらつくが、魔力枯渇状態ではない。


 周りは薄暗くてよく見えないが、洞窟の中のようだ。

 8つ目の蜘蛛の気配はない。


 暗さに目が慣れ、周りを見渡すと「まるでエイリアンじゃん」。

 白い大きな糸の塊が天井から、いくつもぶら下がっている。

「あの中に、旅団員がいるのかな、その可能性が高いよね。どうする」


 エリナ姉に相談したい。ヨハンに頼りたい。

 でも駄目だ。自分で考えて選択しなくちゃ。

 もう答えは決まってる。私のアイテムボックスに全員入れる事。

 私が迷っているのは、全員の命の重み。絶対アイテムボックスに入れて助かる保証がない。

 責任が重い。大切な人達を私が殺す事になるかもしれない恐怖が、一歩を踏み出せない。


 少しの間、白い大きな糸の塊を見上げて立ちすくんでいたら、遠くの方から音が聞こえた。


「やばい、蜘蛛かも、迷っていられない。みんなごめん。アイテムボックスに入れるね」

 私は天井からぶら下がっている白い大きな糸の塊に飛びつき、つぎつぎと噛みついた。




 洞窟から私一人出てきた。外は暗く夜のようだ。


 このまま吸魔の森の中を一人で歩いて帰れない。方向がわからない。また蜘蛛の巣に掛かって、魔力抽出中にはできない、居場所を教えているようなものだ。




 どうする私。
















次は、15時頃の投稿です。

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