ばけものじゃないですか
本日2話投稿予定です
「なんじゃ魔物か?薄汚れたおじさんにしか見えん」
早朝の、魔物の襲撃から、簡易キャンプ場へ戻って来た。
バレンシア侯爵令嬢が炎の矢で討伐してくれた、猿みたいな魔物を1匹運んできた。
魔物は、150cmほどの身長で、両手足が人間よりは長く、あばらが浮き出ていて細い。
両手足はこげ茶色の体毛で覆われているが、体と顔は肌色の肌がむき出しになっている。一見毛の薄い猿のように見えるが、薄い髪が側頭部から生えていて、顔は全体的に丸く、首が若干長い、眉間に皺が刻まれており、鋭い歯に、長い舌をだして、白目向いている姿は、苦悶表情の禿げた落ち武者にしか見えない。
禿げた落ち武者魔物が、数えきれないほどいて、甲高い声で襲ってきたのだ。言葉を発するが人間ではないだろう。
禿げた落ち武者魔物は、人まね魔物と呼ぶことになった。
人まね魔物の罠にまんまとはまり、襲撃された私とヨハンは、注意勧告を受けた。
かってに動かない。怪しいと思ったら報告する事。善意が仇となって降りかかってくることがある事。
魔の森の中腹では、どんな時もガムを噛み続ける事を約束させられた。
今回の襲撃で、私は側頭部に野球ボール大の石をもろにくらったが、ヨハンの忠告でガムを噛んでいたため無敵状態。身体に損傷はなかった。噛んでいなかったら死んでいたか、瀕死の重体だっただろう。
今回の襲撃の時、炎の矢で、何匹か討伐したが、まだまだ複数いる。
戦うとしても2mの岩の間では、人間側は不利と判断。早目にこの2mの岩を抜ける事になり、今日も岩を砕き、道を作る作業をおこなうことになった。
ホーションを飲み全快したヨハン。土魔法の騎士団員、私で道を切り開いていく。昨日は1m幅の道を作っていたが、人が一人通れればいい。最低限の人が通れる道幅だ。
作業中の護衛に、紅団団員の魔術弓遣いと、騎士団員の魔術跳躍の2人が陣取り、2mの岩の上から護衛についてくれている。
作業中ずーと、遠くから甲高い音色で「おーい、おーい」「だいじょうぶ、だいじょうぶ」の声がする。姿は見えないが、時折石が飛んでくる。
旅団はみんな無言だが、イライラしているのが伝わってくる。
2mの岩の間で視界が遮られている中、くだけた石がゴロゴロした足場の悪い坂道をひたすら歩いている。遠くらか甲高い耳障りな同じフレーズの声がずーと聞こえている。致命傷ではないが、時折石が体に当たる。
「やかましいー!」堪忍袋の尾が切れた、バレンシア侯爵令嬢が叫んだ。
バレンシア侯爵令嬢は2mの岩を登り、声のする方に向けて、無数の炎の矢を放った。
無数の炎の矢は、人まね魔物に刺さった気配はなく、魔の森に吸い込まれていった。
「チッ」バレンシア侯爵令嬢は舌打ちしながら岩を降りて、また歩き出した。
一旦声は止んだが。少しすると「おーい、おーい」がまた始まった。
今日一日、魔物の声と石に、精神的に疲労困憊の旅団は、岩を砕き広い場所を確保し簡易キャンプ場とした。
夕食を食べ、交代で見張りを置き、早々に就寝したが、「おーい、おーい」「だいようぶ、だいじょうぶ」の声が増えている。皆ほとんど寝ることできず、朝を迎えた。
そんな日が3日続き、みんな疲労困憊、イライラも限界に近い。
今日も「おーい、おーい」「だいじょうぶ、だいじょうぶ」が繰り返されている。
私は閃いた。これ、違うフレーズ言わせたら面白いんじゃない。
「爆裂愛している!」と、思いっきり叫んでみた。
そうすると、遠くから、甲高い声で「バクレツアイシテル、バクレツアイシテル」「バクレツアイシテル、バクレツアイシテル」「バクレツアイシテル、バクレツアイシテル」が繰り返される。
エリナ姉が、ぼそっと「気持ち悪いストーカーみたい」と言うと、周囲がクスクス笑い出した。
「愛、宇宙をてらすよ!」と、バレンシア侯爵令嬢が叫んだ。
そうすると、遠くから、甲高い声で「アイウチュウテラス、アイウチュウテラス」「アイウチュウテラス、アイウチュウテラス」「アイウチュウテラス、アイウチュウテラス」が繰り返される。
エリナ姉が、ぼそっと「愛宇宙ていう名前のテラスになってる」と言うと、周囲がクスクス笑ってる。
「盛れてっていいじゃん」と私がまた叫んでみた。
そうすると、遠くから、甲高い声で「モレテイイジャン、モレテイイジャン」「モレテイイジャン、モレテイイジャン」「モレテイイジャン、モレテイイジャン」が繰り返されている。
エリナ姉が、ぼそっと「何を漏らしているのかしら、はしたない」と言うと、周囲が爆笑した。
少し気晴らししつつもイライラ4日目の朝を迎えた。
2mの岩の道はまだまだ続きそうだ。
このままやられっぱなしでは名が廃る。反撃だ。
イライラ度マックス!次は反撃回です。




