紫陽花のしらべ
本日も2話投稿予定です
「・・・・。魅惑のあじさいの本体」
今、私はヨハンと一緒に迷子だ。
ことは、昨日の昼間、幻覚のあじさいの中を迷っている旅団5人と遭遇した。
旅団は、魔の森の湿地帯を歩いていたが魔獣に追われ、幻影のあじさいの群生地に入り、1週間方向がわからず、迷っていたそうだ。
ストーム副騎士団長の広範囲の風魔法を見て、近くに人がいると、急いで近づいてきたそうだ。
食糧が尽き、3日間、飲まず食わずだったため、私がアイテムボックスから出した、おにぎりとお茶を食べて、泣いて喜んでいた。
事件が起きたのは、その夜。
みんなが寝静まった頃、迷子の旅団女団員が私の元に訪れた。
何でも、頭痛、めまい、悪心、おう吐が強く、何か薬かポーションを持っていないか聞きに来たのだ。
確かに、私は薬もポーションもアイテムボックスに入っている。でもそれは、私の物ではない。一緒に旅している旅団の物だ。使うならストーム副騎士団長にお伺いを立てなければならない。
「もってるけど、私の一存では渡せないよ。一緒にストーム副騎士団長の所に行って聞いてみよう」
私は、女団員と一緒に、テントを出て歩き出した。
その時、背後から、口をふさがれ気絶したのだ。
気が付いたら、ヨハンに抱えられ、夜の幻影のあじさいの中を走っている。
後ろから、待てとか、戻ってこいとか声が聞こえる。
私はわけがわからず、走るヨハンにしがみつくしかない。
長い距離走って、ヨハンが幻影のあじさいの陰に隠れた時、
「何があったの?。何でここにいるの?」」
「・・・・。何も覚えてないのか」
「うん。テントを出てから、記憶がない」
「・・・・。迷っていた旅団は、商人を装っていたが、全員冒険者だ。悪質なトレジャーハンターだ。
おそらく、この幻影のあじさいに入ったのは、魅惑のあじさい本体を確保するためだ。魅惑の花で強い幻覚作用の薬が作れるらしい。俺は、ストーム副騎士団長の指示で、旅団を張っていた。
旅団の女と、男が麻袋を抱えて、幻影のあじさいに入っていくところを見かけて後をつけたんだ。
そしたら、仲間が10人ほどいて、麻袋からキスグが出てきた。とっさにキスグを抱えて逃げて、今にいたる」
「ヨハンて、長く話せたんだね」
「・・・・。」ヨハンは呆れ顔だ。
ヨハンと一緒に幻影のあじさいの中に隠れ、一晩を過ごした私達は、今、ストーム副騎士団長の放った広範囲の風魔法を遠くから見ている。
我が旅団の場所がわかったから、向かえば私たちは迷子解消なのだが、そうはいかない。
悪質な旅団の中に、強運の魔術を持つものがいるらしい。
何故知っているのかというと、「俺は強運の魔術を持っているんだ。あんたたちに出会えたのも、そのおかげだ」と夕食で旅団員が話していたそうだ。
魔力の多さにもよるが、強運の魔術はチートと言ってもいい。最終的にはそいつの思い通りに事が運ぶという事だ。
そいつが望むのは、大容量のアイテムボックスを持つ私を確保する事。魅惑の花を確保する事の2つだ。
今、私が我が旅団に戻ったら、2つとも叶う可能性が高い。
「・・・・。あっちより先に、魅惑の花の本体を見つけるぞ」
「でも、どうやって?」
「・・・・。魅惑の花の匂いとか、花粉とかわからないのか」
「?。匂い?。魅惑の花はどうやって、幻影を見せてるんだろ?呼吸から幻影成分を取り込ませてる?
空気の中に幻影を見せる成分があるとしたら。前に睡眠効果のある成分だけを、体の中から吸い取ったでしょ、それと一緒の事が空気でもできたら、魅惑の花の場所わかるかもしれない」
私は思いっきり、空気を吸い込んだ。
”魅惑の成分(薄い)”
「ヨハンできたよ。魅惑の成分(薄い)だって、(濃ゆい)方に向かったら、魅惑の花の本体があるんじゃない!」
私とヨハンは、ひたすら空気を吸い込み(濃ゆい)方へ突き進んだ。
「・・・・。魅惑のあじさいの本体」
「そう、これが魅惑のあじさい本体。噛みついたら”魅惑のあじさい(本体)”って表示されたから間違いないよ。どうするこれ」
「・・・・。魅惑のあじさいの幻覚成分だけ、少し吸い取れるか?」
「多分、できるけど何故?本体全部アイテムボックスに入れればよくない?」
「・・・・。今、本体をアイテムボックスに入れると、おそらく、このあじさいの幻影が消える。
我が旅団も、悪質な旅団も、道に迷わず進めるだろう。だが、我が旅団と、悪質な旅団が今どうなっているのかわからない。
我が旅団が悪質な旅団を取り押さえているなら問題ない。
かりそめだが良好な関係だったら、裏切られるだろう。
逆に悪質な旅団が、我が旅団が取り押さえられてる可能性もある。
そうすると魅惑のあじさいの幻影が晴れる事はことらにとっては、マイナスだ」
「ヨハンて、長く喋れたんだね」
「・・・・。」ヨハンは、額に手を当てて大きなため息をついた。
「ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
本日2回目の、ストーム副騎士団長の広範囲風魔法が炸裂している。
私たちは、竜巻を目印に我が旅団の方へ向かった。
そこには縄で縛られた、悪質な旅団員達がいた。
ヨハンは悪質な旅団員全員に、魅惑のあじさいから抽出した幻覚成分を飲ませた。
悪質な旅団員は、うつろな目になり視線が定まっていない。縄をほどいたが、誰も逃げ出さず、座ったまま独り言を話している。
「魅惑の花の幻覚作用は、自分の描いた理想の未来を見せるんだ。どれだけ効果が続くかわからないが、自業自得だこのまま捨て置こう。強運の奴も願いが叶ってんだ、抜け出せないだろうよ」
紅団リーダーのジャンが複雑な表情で告げた。
我が旅団は、魅惑のあじさいの中を、10日かけて横断したのだった。
強欲はいけません。身を滅ぼします。
魅惑のあじさい本体は、採取しませんでした。




