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私の魔術は使いにくい  作者: ロミ


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噛みつきモンチッチ

エピソードタイトルを大正解→噛みつきモンチッチに変更しました

 


「・・・・。」目が吊り上がり、口をへの字にした、母の無言の眼差し。


 私は、長旅の疲れと、食べ過ぎから復活した翌日、母の執務室にいます。


 母、怒ってる、怒ってるよ。今回は椅子にも座らせてもらえません。

 私の何が逆鱗に触れてしまったんだろう。

 寝る前に、こっそり爆食して体調不良になった事かな?


「すいませんでした」90度の角度で謝ります。


「何に対して、すいませんと言ってるの?私が怒っている理由がわかるの?」


「・・・・わかりません」体が縮こまった。


「キスグが仮の橋を設置するのに、貢献したことは誇らしいわ。その後、アイテムボックスに入っていた物を、ベンゼン子爵家の従者が届けてくれたの。その中には、ベンゼン子爵家で出された料理や、お菓子が大量に入っていたわ。それは窃盗よ。

 今回は、価値のある物がなかったから、ベンゼン子爵様は大目に見てくれたんだと思うわ。でもね、今後同じことが起こると考えてしまうの、信用を無くしたのよ。事の重大さがわかる?」


「・・・・窃盗」私にそんなつもりはなく、青ざめた。


「キスグのアイテムボックスは貴重だわ、これからも活躍するでしょう。でも逆に、キスグが隠したいと思った物は、お金でも、死体でも何でも隠せてしまうのよ。一度失った信頼はなかなか戻らないの。

 キスグが活躍すればするほど周囲は、アイテムボックス持ちのキスグとしてあなたを見るわ。

 だから、行動するときはよく考えて、誰からも信頼される、恥じない人生を送りなさい」


「はい!」










「ジン兄、相談したいことがあるの」

 長雨のせいで被害に遭った領内を、駆けずり回っているジン兄を玄関で捕まえた。


「なんだよ。母に呼ばれたんだって」ジン兄は汚れた靴を脱ぎながら、ニヤリ顔だ。


「私、窃盗しちゃった。そんなつもりはなかったんだよ。あまりにもおいしかったから、家でも食べたいなと思って・・・。ベンゼン子爵家にも、我が家にも申し訳なくて・・・。私どうすればいいのかわからなくて、でも、ベンゼン子爵様に謝りたくて・・・・。」私は、くしゃくしゃ顔で、今にも泣きだしそうになっていた。


 ジン兄は、汚れた手を私の頭に置いて、

「そうか。キスグが謝りたいと思うなら、謝りに行けばいい。明日、連れててやるよ」

 なんでもない事にように笑って言った。




 翌日、ジン兄と、橋の崩落場所に来た。

 濁流だったホルムズ川は、穏やかになっており、瓦礫がかたずけられ橋の建設に取り掛かっていた。

 橋は、ベンゼン子爵家と我が家で共同で作成するので、仮の橋を使用し土木関係者が行き来していた。


「お前がヒノキを持ってきてくれたから仮の橋を架けれたんだ。人も物資も行き来ができ、両子爵家の土木関係者が息を合わせて作業ができる。ありがとな」ジン兄は橋の作業を見ながら、誇らしげに言った。


 あの橋、私に架けるお手伝いができたんだ。

 実際に自分が行った事が形となり、人の役に立っている所を見て、すこし涙が出た。



 そこへ、ベンゼン子爵様が現れた。


「やあ、久しぶりだね。体調はもういいのかい」ベンゼン子爵様から声をかけられた。


 私は、緊張してこわばったが、ジン兄がやさしく、背中を押してくれた。

「はい、ご心配かけました。すいませんでした」私は勢いよく頭を下げた。

「ベンゼン子爵家でお世話になってた時、美味しくて、料理やお菓子を勝手にいっぱい取ってしまいました。窃盗するつもりはなかったんです。すいませんでした」


「はははは。いいよ。いいよ。そんなに美味しかったのかい。今度からは言ってくれれば、いくらでも持ってていいからね」ベンゼン子爵様のおじさまウインクを頂いた。


「せっかく、キスグがいるんです。罪滅ぼしの為にも何か手伝わせたやって下さい」


 うん、うん、私も大いに賛成。私にできる事は何でもやるよ。


「ん~。そうだな。誰か、土木の責任者を連れてきてくれ」

 ベンゼン子爵様は従者に指示を出し、すぐに、責任者がやって来た。


 話を聞くと、元の橋の場所に再度作ると地盤が緩んでるから危険。今、仮の橋が架かっている地盤が頑丈なため、そこに新たな土台を作り、橋を架ける案が出ている事。そうすると、仮の橋を一旦違う場所に移さないといけない為、頭を抱えていたそうだ。


「できます。私やります。アイテムボックスに入れる為に噛みついてる時と、指を口に突っ込んで出す時は、物の重さが0kgになります、ヒノキを誘導してくれれば移動できます」


「おおー。それは頼もしい。お願いできるかい」


「はい!」









 私は今、仮の橋5本のヒノキに跨って噛り付いている。


 私を乗せたヒノキの端を、土木関係者が両方からから持ち上げた。

 ヒノキの重さは0kgだ、私の重さだけかかってると思う。


「おおー。軽い」


 わ!軽いからって激しく動かすな。落ちる、落ちるよ。SASUKEじゃないんだよ。

 口が離れると、ヒノキの重さが戻ってしまうので、私は必至だ。


 土木関係者は軽々とヒノキを別の場所に移した。



 その後、連日ホルムズ川を訪れ、橋の土台の木材や、重機などに跨って噛みつき、私は橋の完成に大いに活躍した。




 いつの間にか、”噛みつきモンチッチ”の二つ名がついていた。






ジン兄は、事前に母への報告と、ベンゼン子爵家に事の顛末を伝え、ホルムズ川に来て欲しいと根回しをしていました。

できる男はさすがだね。

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