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私の魔術は使いにくい  作者: ロミ


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この石がほしい(モハメド王子視点)

少し早いですが、本日2話目の投稿です。

 



「お前は、なんてことをしたんだ」





 ここは、ハメネイ国の王城。

 高い天井を、何本もの整然と並ぶ石造りの柱が支え、柱の影が長く伸びている広い拝見の間。


 中央の玉座の椅子に、年老いた現王ハメネイと、その隣にその長男の皇太子、第1王女、第2王女が並ぶ。次男の王子は他国との外交の為、この場にはいない。


 民族衣装である深い茶色の衣を纏い、力なく座っている現王と対照的に、長男の皇太子、第1王女、第2王女は、3人とも異国の煌びやかな衣を纏い。一目で目を引く指輪、ネックレス、ブレスレットをこれでもかと付けている。


 他に、ハメネイ国、事なかれ主義の宰相、過激派の革命防衛軍幹部達がずらりと拝見の間に並び、王直属軍の金軍が王の後ろ、拝見の間の入口を警護していた。



 3男のモハメド王子は、そんな拝見の間で、頭を大理石の床に押し付けてらえれている。







 元砂漠のダンジョンで、大男と小柄な男から大荷物を騙し取り、魚石という珍しい石を奪って、帰還陣で1階層の入口まで転移したモハメド王子達。


 外で待っていた、革命防衛軍の幹部への説明そっちのけで、ラクダに跨り、元砂漠を爆走。


 ハメネイ国の王都へ向けて、ひたすら夜通し走り、村や、町を抜け、地方都市にたどり着いた。


「ここまでくれば、大丈夫だろう。この地方都市に入るためには検問が必要だ。大男と小柄な男の人相は門番に伝えた。似たような冒険者が門をくぐれば、こちらに連絡が入る」


 モハメド王子が、地方都市で一番いい宿で寛いでいると、

「失礼します。モハメド王子。地方都市領主が面会を申し込んでおります、いかがなさいましょう」

 腰ぎんちゃくが、赤ワインと、菓子箱(底に銀貨あり)をワゴンに乗せて、部屋に入って来た。


 菓子箱の底を見た、モハメド王子は、

「ふん、しけてるな。まあいい。通せ」

 ワインを一口飲みながら、ソファーにふんぞりかえり、地方領主を迎え入れた。


 頭を下げたまま、民族衣装の衣を纏って入室した地方領主

「モハメド王子には、ご機嫌麗しく。我が地方都市においで頂きありがたく存じます。

 部下の報告では、鑑定士を所望されたとか。この地方都市一番の鑑定士を連れてきました」

 話をしてから、顔を上げ微笑みを絶やさない地方領主。


「そうか、さっそく鑑定して欲しい物がある」

 モハメド王子は目配せし、腰ぎんちゃくは、魚石をテーブルの上に置いた。


 鑑定士は、薄青色の石に近づき、石に触って鑑定。

「私の鑑定では、ダンジョン産の魚石と言う宝。この魚を手に入れた者は、心が綺麗になり、長寿と幸運をもたらすと表示されます。大事になされはいかがでしょうか」



 モハメド王子は歓喜し、腰ぎんちゃくに命令し、荷物の中に魚石を隠した。




 それから少しして、ダンジョンの外で待っていた革命防衛軍の幹部は、モハメド王子を追って地方都市に到着した。

 革命防衛軍の幹部は、モハメド王子から説明がなかったと文句を言ったが、モハメド王子は、小柄な男から奪った、大量の魔石を見せて黙らせた。


 革命防衛軍の幹部は、大量の魔石を持っているモハメド王子にペコペコ頭を下げている。


「ふん。これだけの魔石と幸運の魚石があれば、兄上や姉達を押しのけ、私がハメネイ国王になるのも夢じゃない」とほくそ笑んだ。




 それから、王都へは、各地方都市を巡りながら、ゆっくりと進む。


 大量の魔石を換金し贅沢三昧。財力と攻略隊、革命防衛軍の軍事力をチラつかせ、地方領主を取り込んでいった。


 モハメド王子が王都に到着した頃には、元砂漠のダンジョンを攻略した覇者として噂が噂を呼び、国民に大歓迎を受けた。


「これからは、俺の時代がくる。横暴な兄上も、ヒステリックな姉達も関係ない。今まで使われていた分、俺があいつらを使ってやるんだ」

 モハメド王子は、ニヤニヤしながら、王城の拝見の間に臨んだ。




 拝見の間には年老いた王と、長男の皇太子、第一王女、第2王女がいる。兄弟達は、俺の手柄が面白くないのだろう。

 ふてくされた顔で俺を睨んでいる。


「モハメド王子、今回のダンジョン攻略ご苦労だった。その功績をたたえ、ダンジョン周辺の地方都市をお前の領土とする。

 大量の魔石と、他にも、貴重な魚石が手に入ったとか、魔石と、その魚石もハメネイ国へ献上せよ」

 年老いた王は、モハメド王子に命令した。


 何故、魚石の事を知っている。誰が情報を漏らした。モハメド王子が辺りを見回すと、腰ぎんちゃくが皇太子の後ろでニヤニヤしている。くそ、あいつか。どいつもこいつも俺の功績をすべて奪うつもりか、許せない。

 誰にも奪わさせない。

 そうだ、鑑定士は、魚石の魚を手に入れた者は、長寿と幸運を手に入れると話していた。この石を割って魚を取り出し幸運を手に入れよう。


「父上、この魚石の魚を手に入れたら、長寿と幸運を手にできるそうです。さっそく取り出してみましょう」


「やめろ・・・」王が玉座から立ち上がり、止めにかかるが、


 モハメド王子は、腰に差していた派手な剣で、薄青色の魚石を、勢いよく叩き割った。


 ひびが入り、粉々になった魚石から、水が漏れ、赤い大きな金魚が躍り出た。


 大理石の床を、ぴちゃぴちゃ跳ねていた大きな金魚は、そのうち力がなくなり死んでしまった。


 唖然とする、モハメド王子。


 玉座の下で、床に両膝を着き絶望顔の王。

「お前は、なんてことをしたんだ。お前はこの国の建国史を知らないのか。

 魚石は、我が国が砂漠で人の住める環境ではなかった時に、人々の祈りを聞き入れ、長い生涯を国の発展に努めた初代王の宝だ。

 魚石は石の表面を金魚が見えるまで薄く削り、中の金魚を朝晩拝むことで、心穏やかになり、長寿と幸運をもたらすとされる石だ。

 初代王は魚石があったから、苦難を乗り越えられた、みんなの助力を得られた幸運の魚石とし大切にしたのだ。」


「ハメネイ国の国民なら、誰でも知っている」


 王は、ふらふらと干からびた金魚に歩み寄り、両手で持ち上げた。

 金魚はさらさらと砂になり、風に舞って消えてなくなった。


 拝見の間で、固まっている皆の背中に、突然ぞくぞくした寒気がはしる。


 王直属の金軍に、取り押さえられたいるモハメド王子の横に置いてある大荷物が、もぞもぞ動き出したのだ。


 魔石が何十個も入っていた大荷物の袋の一部が破れ、赤色の鱗を持つ、子供ほどの大きさの腕が生えた。


「ビリビリビリ」

 腕が生えたと思ったら、大荷物の袋は破れ、ワニのようなトカゲのような、舌の長い4足歩行の魔物が姿を現した。全長約20m。巨大な魔物が長い舌を出し、拝見の間の人間達を見据えた。


 赤い鱗を持つワニもどきは、隣にいたモハメド王子を舌で絡み取りパクリ。


 その瞬間、拝見の間はパニック。


 その場で動けない者。我先にと出口に殺到する者。

 赤い鱗のワニもどきは、出口に集まる革命防衛軍の幹部達をなぎ倒す。

 次に、叫び声をあげ、逃げ惑う、第一王女と第2王女をパクリ。


 そのころ王は、拝見の間の中央で、金軍に守られながら、割れてしまった魚石を抱え嘆いていた。

 金軍は王を逃がそうとするが、王は動かない。


 赤い鱗のワニもどきは王に見向きもせず、拝見の間から逃げて行った長男を追って、拝見の間を後にしていた。


 赤い鱗のワニもどきが去った拝見の間は、ワニもどきに噛まれ重症な者、薙ぎ払われ、足が違う方向に曲がっている者、まったく無傷で腰を抜かして座り込んでいる者。さまざまだ。


 王直属の金軍総大将は、素早く、王の安全確保と、負傷者の救済、ワニもどきの追跡指示をだした。



 赤い鱗のワニもどきは、王城の庭で長男をパクリした後、金軍によって討伐された。







 それからの、ハメネイ国は混乱の時代へ突入する。

 年老いた王は、長男の過激派な皇太子との折り合いが悪く、他国との外交に派遣していた第2王子を呼び戻し、皇太子とした。


 革命防衛軍の幹部達は、赤い鱗のワニもどきから受けた傷で再起不能の者が多く、解体。

 革命防衛隊だった者達は、王都の治安維持部隊に派遣された。


 国の守りは、王直属軍の金軍が担うが、人数が少なく手薄。

 ハメネイ国は、バクシューレツ国を仲裁役としキスグの故郷の国と和解した。


 第2王子が皇太子になってから1年後、年老いた王は亡くなり、第2王子が王となる。


 第2王子が王となってから、元砂漠のダンジョンが拡張されたとか、キスグが元砂漠のダンジョンに出入りしているとか、ピーターが第2王子にそっくりだとかは、別の話。







元砂漠のダンジョン、”迷う” をテーマに書いてみました。

元砂漠のダンジョン編、これで一旦終了です。


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