長崎の魚石(童話)
遅くなりました。本日も2話投稿予定。珍しく長いです。
「おい、どこまで行くんだ」
モハメド王子は、道案内の剣を持った大男と、大きな荷物を背負った小柄な男に問いかけた。
5階層の洞窟に入って、いくつもの分かれ道や罠があると思っていたのに。
洞窟の中で迷ってしまう可能性が高いと考えて、大男と小柄な男に道案内を頼んだのに、洞窟は一本道。罠もない。前世のトンネルのようなイメージの洞窟だった。
暗いがランタンを持って歩けば、問題なく歩ける平坦な道。
大男なニカと笑い
「もうすぐそこだぞ」
「さっきも同じことを言っていた。あれから1時間も歩いている。まだか」
モハメド王子がイライラした口調で問いただすと、
「もうすぐそこだぞ」
大男はまたニカと笑った。
不審に思いながら一本道の為、そのまま後をついて洞窟を歩いていると、床が薄青色に光る空間にたどり着いた。
空間は30畳ほどの広さがあり、行き止まり。6階層への扉はない。
部屋の床には、魔法陣が書いてあり、それが薄青色の光を出しているようだ。
「この魔法陣は帰還の魔法陣だ」
スタークが小声で言うと、それを聞いた腰ぎんちゃくが、
「なんだって、帰還の魔法陣だと!これで、このダンジョンは終わりということか、魔物もダンジョンコアもお宝もないじゃないか!どうなってる」
腰ぎんちゃくが大男に怒鳴ると、大男は
「俺は、俺たちが検索した道を案内すると言ったぞ。嘘はついていないぞ」
大男はニカっと笑っているが、目が笑っていない。雰囲気が不気味な物に変わった。
「・・・むむむ」
腰ぎんちゃくは、大男の不気味な雰囲気に何も言えなくなり、モハメド王子に助けを求めた。
「・・・ここまでの道は一本道だった。側道がないか確認しながら通ってきたんだ。引き返しても何もない可能性が高い。まずはこの薄青色の空間をすみずみまで探すぞ」
モハメド王子の指示の元、攻略隊は空間の石垣の壁を、なでてみたり。押してみたりするが、何も変わらない。
攻略隊が石垣の壁を探索している時、大男と小柄な男は私の所にやって来た。
「さっき食べた物が食べたいぞ。食べさせ欲しいぞ」
大男は、私の前に皿を出した。
「んー。私の判断では出せないよ。だってこの食べ物は攻略する為の物だし。モハメド王子に聞かないとね」私が、困り顔で、モハメド王子を指さす。
大男は、モハメド王子をちらりと見た後、小柄な男が持っていた大荷物から、大きな魔石を取り出し、
「秘密にすればわからないぞ、魔石と交換してほしいぞ」
ぐいぐい私に大きな魔石を押し付けようとする。
「そんなこと言われても、ダメなものは、ダメだよ。モハメド王子と交渉して」
私は、後々面倒になりそうだったので、大男の要求を断った。
「そうか、わかったぞ」
大男はニカっと笑って、大きな魔石を小柄な男に返した。
「お腹減ってるの?私のチューインガムならあげるよ、いる?」
私はポケットに入っていた、チューインガムを2つ渡した。
チューインガムをもらった大男と、小柄な男は、首をかしげ、まじまじと手のひらに乗っているチューインガムを見ている。
「チューインガム知らないの。紙を剥がして、口に入れて噛むんだ。味を楽しむ食べ物だよ。飲み込んじゃだめだよ。味がなくなったら終了。紙に包んで捨ててね」
私が実際にやって見せると、2人は私の言った通りチューインガムを噛みだした。
「おおー。甘いぞ」
2人は大きく目を見開き、感激している。
「くちゃ、くちゃ、くちゃ、くちゃ」
ずーと噛んでいる2人。よほど甘味に飢えてたんだね。
私は、ほほえましく2人を見ていた。
石垣の壁に、何かないかと探していた攻略隊は、石垣の岩が、1つだけ薄青色なのに気付いた。
攻略隊は、その薄青色の岩を掘り出し、モハメド王子の元へ。
モハメド王子はあまり興味を示さず、成果がないことに焦りを憶えていた。
「なんだその石は魔石でも宝石でもないだろ、くだらん。もっと他にないのか」
イライラしている王子の元へ、大男と小柄な男が近づいて来て、
「それは魚石!すばらしいぞ。いらないのなら是非ゆずって欲しいぞ」と申し出た。
モハメド王子は、石の価値はわからないが、2人があまりにも懇願するから、石が惜しくなり
「価値のあるものと、引き換えなら考えてやっても構わない」と、交換条件を申し出た。
大男は小柄な男の持つ大荷物の中から、魔石を10個取り出して交換を申し出たが、モハメド王子は小柄な男の持つ大荷物の中には、まだまだお宝が眠っていると確信。
魔石10個では交換しないと要求を突っぱね、さらなる交渉を要求した。
大柄な男は、小柄な男の持つ大荷物の中なら、さらに魔石を10個取り出し、合計20個で交渉。それでも首を縦に振らないモハメド王子。
「そんなもんじゃ交換はできない。その大荷物の中身すべてと、この石との交換なら、快く受けよう」
モハメド王子は、上から目線で大男と小柄な男を見下ろした。
「ん-。これは考えものだぞ。今までの成果が無になってしまうぞ。だけど薄青色の魚石はそれ以上の価値がある」
少し悩んだ大男は、小柄な男から大荷物を受け取り、モハメド王子に袋ごと渡した。
「さあ、すべて渡したぞ。魚石を頂くぞ」
大男が魚石に手を伸ばそうとしたその時、モハメド王子は、帰還の魔法陣に魔力を注いだ。薄青白かった帰還の魔法陣が激しく青く光り、モハメド王子と攻略隊は5階層から消えていた。
取り残され、呆気にとられている、私とヨハンとスターク、ピーター。
大男と小柄な男は、始めから知っていたかのように動じていない。
「大荷物の中の魔石も、魚石も全部取られちゃったけど、いいの」
私が大男に、おそるおそる聞くと、
「いいぞ、そうなると思ってたぞ」
大男は、未練なくあっけらかんと答える。
「それより、モハメド王子は帰ってしまったぞ、今はキスグが一番偉いんだぞ。さっき食べた食べ物を食べさせて欲しいぞ」
大男と小柄な男は、どこからか皿を取り出し私に突き出している。
「そうだね、いいよ。カレーでモハメド王子がしたことチャラにはできないけど、罪滅ぼしだよ。
モハメド王子が大量の魔石と、魚石奪っちゃってすいません」
私達4人は深々と頭を下げ謝った。
大男と小柄な男は気にした様子もなく、カレーを何度もおかわりし、トッピングに出した、ゆで卵や、納豆。ソーセージなども喜んで食べてくれた。
カレーの大鍋が空になると、おもむろに小柄な男が懐からゴルフボールくらいの石を取り出した。
「おいしかったー。これは、お礼だぞ、キスグの前世で言う”転写機(なんにでも転写可)”だぞ。外の世界の映像を転写して欲しいぞ。転写した映像は俺たちに送られてくるから、ダンジョン拡張のヒントにするぞ」
大男は私の手に、転写機の石を握らせた。
呆気にとられている、私とヨハンと、スターク、ピーター。
なに、なに、なに、今の話の内容なに?
まるでこの2人がこのダンジョンを作っているみたいな言い方。
「ごめんね、よくわからないんだけど・・・。一回2人を噛ませてもらっていいかな」
私は2人の了承を得て噛みついた。
”最終ボス(魔物)”と、”ダンジョン核(成長中)”と表示された。
ヒェ~。
怖い怖い怖い。2人とも人間じゃない。このダンジョンそのものだよ。
引きつった顔で、固まっていると、
「そうだな、まずは帰還の魔法陣を転写して欲しいぞ。そうしたらこのダンジョンでも、他のダンジョンでも帰還の魔法陣が使えるぞ。ここから帰還の魔法陣を使って1階層の入口に戻ったら、対になる到着の魔法陣も転写すれば、どのダンジョンでも使いたい放題だぞ」
大男と小柄な男は、ニカっと笑って、石垣の壁の中へ消えていった。
次は、モハメド王子。




