セミゲドン
本日も2話投稿予定。虫が出てきます。嫌いな人は注意。
少しの間、寝ていた私は、大きな音に起こされた。
「ミーン、ミーン、ミーン、ミーン、ミーン・・・・・
「じりりり、じりりり、じりりりり、じりりりり・・・・・
セミが鳴いている?
起き立ての、意識がもうろうとする中、私はヨハンにおんぶされて、4階層の林の中を歩いていた。
「ミーン、ミーン、ミーン・・・・・
林の中は、セミの声が木霊している。
「じりりりり、じりりりり、じりりりり・・・・
「ヨハン「じりりりり、じりりり」ここ何処「ミーン、ミーン」」ヨハンの肩を叩きながら聞くが、
「・・・・。」ヨハンは、ちらりと私を見ただけで、無表情でまた前を向いた。
「じりじり、じりりり。じりりり・・・・
私は大声で叫んでいるが、セミの声が大きすぎて、自分の声さえもかき消されている。
「ミーン、ミーン、ミーン・・・・
いったい、どれほどのセミが、この林の中に潜んでいるのか、
木の幹をよく見ると、赤い目に茶色い羽のセミが、びっしりとくっついていた。
「じりりり、じりりり、じりりり・・・・
セミの声は、いったいどれだけの威力なのか、
例えば、前世のパチンコ店の店内と同じくらいの騒がしさを10倍にしたような音量。
救急車のサイレンを耳元で流されている音量。
「ミーン、ミーン、ミーン・・・・
本当にうるさい。耳が壊れそうだ。
「じりりり、じりりり、じりりり・・・・・
耳を押さえたまま、周りを見渡すと、そんなに大きくない林。
前には、さっき通って来た朝顔の草原が見えるし、後ろの方には赤い5階層への扉が木々に隠れているが見える。
「ミーン、ミーン、マーン・・・・
スタークもピーターもどこに行ったのか、周りにはいない。
「じりりり、じるるるる、じるるるる・・・・
攻略隊が、四方八方を歩き回っている。
「ミーン、マーン、マーン・・・・
赤い5階層の扉に向かっているのではなく、みんなバラバラの方向に向かっている。
「じりりり、じるるるる、じるるるる・・・・
「なんで「ミーン、ミーン」5階層への扉に「じりりりり、じりりりり」行かないの」
ヨハンの肩を叩きながら大声で叫ぶが、聞こえてないし、振り向いたヨハンの目は何だかうつろだった。
私も、セミの声が、違う音に聞こえる、私の耳もおかしくなってきた。
私は自分に噛みつき、うつろに、なりそうになったが立て直した。
「ヨハン、ヨハン「ミーン、マーン」しっかりして「じりりりり、じるるるる」!」
私は、正気に戻ってと祈りを込めて、ヨハンの肩に思いっきり噛みついた。
ヨハンは、弾かれたように、私の方を振り向き、驚いた顔をしている。
「ミーン、ミーン、ミーン、ミーン、ミーン・・・・
「大丈夫ヨハン「じりりり、じりりり」私の事わかる「ミーン、ミーン」」
「・・・・」
ヨハンは、私の顔をじっと見つめ、うなずいた。
ほっとした私は、ヨハンにセミに噛みつくことをジェスチャーで伝えた。
ヨハンは、わかってくれたのか、近くの木の幹に近づいた。
そうすると、木の幹にいたセミが一斉に飛び立つ。
「ザー、ザー、ザー」
セミのおしっこが一斉に放たれ、私とヨハンの顔や、腕、洋服を濡らした。
「汚い、これおしっこだよね、最悪」
私が、かかったおしっこを、ハンカチで吹いていると、ヨハンが1匹セミを私の掌に押し付けた。
セミが飛び立つときに、すばやく一匹捕まえたようだ。
「ミーン、ミーン、ミーン、ミーン・・・・
あー。セミが手の中で動いている。もぞもぞする。気持ち悪い。
嫌だけどこれに、噛みつかなきゃいけないよね。
周囲を見渡したら、うつろな目の攻略隊員が林の中をさまよってるし。遠くにスタークとピーターもさまよってるのが見えるし。私の耳も痛くなってきた。
よし、噛みつこう。
「じりりりり、じりりりり、じりりりり・・・・
私が意を決して噛みつくと
”大音量セミ(平衡感覚を狂わす)”と表示された。
そうか、それで、みんなうつろな目で、ふらふら歩いているのか。
「ミーン、ミーン、ミーン・・・・
ヨハンにこの事を話そうとするが、セミの大音量で言葉がかき消される。
「じりりりり、じりりりり、じりりりり・・・
どうしよかな、セミを追い払いたいけど、追い払ってもまた戻ってくるよね。
今、頼りになるのは、ヨハンのみ。
ヨハンをじっと見た。ゴリラ顔の、魔術がゴリラのヨハンは、筋力もパワーもある。腰にハンマーを下げている。
ヨハンの後ろに、朝顔が見えた。
朝顔の蔓は、何で林の中まで入ってこないんだろう。日が当たりにくいからかな。だったら!
私は閃いた。
「ヨハン、ハンマーで朝顔の草原から、赤い5階層への扉まで、木を倒して広くて長い道を作ろう」
「ミーン、ミーン、ミーン、ミーン・・・・
「バン、バン、ドサ、バン、バン、ドサ・・・・
「じりりりり、じりりりり、じりりりり・・・・
あの後、私とヨハンは、遠くの方で、林の中をさまよっていた、スタークとピーターに思いっきり噛みつき正気に戻した。
ヨハンは、朝顔の草原から、約10m幅(3車線の道幅)で、ハンマーを振り上げ木を倒していく。
セミは、木を倒した音と、衝撃を避けるように、林の隅の方へ逃げて行った。
「ミーン、ミーン、ミーン、ミーン・・・・
少しは音量がましになったが、それでもうるさい。
倒した木を、スタークが端に寄せ、ピーターが朝顔の蔓を、林の道に誘導する。
私は、近くの林の中をさまよっていた副隊長と攻略隊員4人に噛みつき、林の道に誘導した。
朝顔の蔓は、日当たりのよくなった林の道の両脇の木に、巻き付いて行く。
「ミーン、ミーン、ミーン・・・・
「じりりり、じりりり、じりりり・・・
復活した副隊長も4人の攻略隊員も道の作成に加わり、半日ほどで林の道が出来上がった。
林の道の両脇の木には、みっちり朝顔の蔓が巻き付いて、綺麗な朝顔を咲かせている。
大量のセミの声は、蔓の密集の為、音が小さくなった。
「なんとか、できたね」大声で、私が叫ぶと
「・・・・」ヨハンは、うなずいた。
「さあ、他の隊員達を、この道に誘導しよう」副隊長が大声で号令を出すと、攻略隊員達は林の中に入り、他の隊員の手を引いて林の道に連れて来た。
それから、うつろなままの攻略隊員達と、モハメド王子、隊長、腰ぎんちゃくを5階層への扉の前まで誘導し、みんなで、5階層の中へ入って行った。
夏をテーマの階層でした。
次は、未開の5階層。




