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私の魔術は使いにくい  作者: ロミ


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あ~れ~。

本日の2目です、珍しく長いです。

 




 清々しい風が吹き抜ける4階層の草原。

 3階層で、湿気とナメクジの粘液でびちょびちょ、ベタベタの攻略隊と私達。


 みんな草原に座り込んでいる。顔色が悪い。脱水気味なのだろう。自分のありさまを気にしている隊員はいない。


「ヨハン、水と塩を配ろう」

 私とヨハンは、重たい腰を上げ、顔色の悪い攻略隊に水と塩を配った。


 水と塩を飲んだ攻略隊は、顔色が戻り回復したが、みな眠そうだ。


 私も眠いよ。1階層でも、2階層の螺旋階段でも3階層でも寝てないからね。


 モハメド王子は、指示を出す前に、草原の上で、大の字で眠っている。

 隊長が「まだ、日は高いが今日は、ここで野宿だ準備しろ」隊員達に指示を出した。

 隊員達はのろのろと準備をしている。


 私も、水と塩を配った後、草原に座ったら、いつの間にか寝ていた。体が限界だったみたいだ。






「おい、起きろ。食べ物を出せ」

 誰かの大声で、起こされた。


 誰だうるさい。耳元で叫ぶな。


 私がうっすら目を開けると、腰ぎんちゃくの顔アップ。

「わっ、ぶっくりした」私は、お尻で後ずさった。


「何度も言わせるな。愚図だな。起きろ、モハメド王子が待ってらっしゃる、食べ物を出せ」

 起き立てそうそう、不愉快だ。


 私は無言で起き上がり、食べ物を吐き出した。

 後ろなんか向かないよ。目の前で吐き出してやった。


 腰ぎんちゃくは、目を丸くしてびっくりしていたが、何も言わず、出された料理を持って、モハメド王子の元に向かって行った。


 ベーだ。二度と来るな。


 今日は、大釜に入ったポトフ。ソーセージ、大きくカットされたニンジン、ジャガイモ、キャベツ、玉ねぎなど、栄養満点な食材がアツアツの状態で提供される。

 主食は、大きな白パン。そのままかぶりついてもいいし、ポトフに浸してもおいしい。


「今日は、大鍋なので、皆さんの元に配れません。取に来てください」

 私が、大声で呼びかけると。

 攻略隊は、ぶつぶつ言いながらも、給仕の列に並び、もらってすぐに食事にむさぼりついていた。


 私達はゆっくり食事を食べ、一休み。




 一休みした後、みんなの前で、モハメド王子が話し出した。

「4階層は、まだクリアされていない未開の地だ。我が攻略隊が、どこよりも早くダンジョンの攻略を行い、手柄を持ち帰ろう」

 攻略隊は気合が入ったようだ。


「ねえ、ピーター。なんでそんなに攻略に執着してるのか知ってる?」

 私は小声で、隣に座っていたピーターに聞いてみると


「今回のモハメド王子率いる攻略隊は、本当はキスグの国へ攻め入る役目を担ってたんだ。略奪戦争の功績で、のし上るつもりだった貴族の次男、三男の集まりさ。だが、エリナ姉のおかげで、ハメネイ国の大地が潤い、戦争がなくなった。功績をたててくても機会がないから焦っているのさ。あいつらにとっては、このダンジョン攻略結果で貴族間の自分の立場が決まるといっていい。だから必死なのさ」

 ピーターがこっそり教えてくれた。


「ふーん。貴族って大変なんだね」

 私が他人事ようのように話すと


「おまえも、貴族だろ」

 ピーターはクスクス笑った。




 4階層は、朝焼けの太陽がまぶしい、心地より風が頬をかすめる初夏の気候。

 目の前には膝下までの高さの草原が広がり、奥の方に林が見える。よく見ると林の向こうに、木々に隠れているが、赤い扉らしき物が見える。たぶんあれが5階層への扉なのだろう。


 草原を歩き、林を抜ければ、5階層への扉に着くなら、今までより容易くないかな。

 すぐダンジョン攻略できそうな気がするけど、4階層はまだ攻略されていないんだよね。魔物は見えないし、何か罠があるのかな。慎重に進まなきゃ。


 攻略隊と私達は、草原の中に足を踏み入れた。

 始めは、みな慎重に歩いていたが、何も起こらない。草原の中を、集団で歩く、ピクニックのようだ。


 草原の中を進むと、花が咲いている。

「朝顔だ、綺麗」

 紫、青、ピンク色の朝顔が満開だ。


 歩いている私の足に、何かが絡まった。

 よく見ると、朝顔の蔓だ。


 1本だけ足に巻き付いていた朝顔の蔓は、2本目、3本目と私の足にまとわりついてくる。

 1本、1本の蔓は弱いが、増えてくると足を取られて厄介だ。


 足を上げて、蔦を回避したり、剣で蔓を切ったりしたが、蔓はどんどん絡みついてきて、きりがない。

 攻略隊も私達も蔓を外すことで精いっぱいで、前に進めない。


「なんだ、この蔓」「次から次と湧き出てきやがる」「切っても切ってもきりがないぞ」

 こんなの埒が開かないよ。足を捕らえれるから、戻ることも進むこともできない。

 始めは、余裕で蔓を切っていた、面々も蔓の絡まる勢いに押され気味で、焦りの表情が見え始めた。


 誰かが、火魔法を放った。火魔法は朝顔を焼き、一旦は蔓の勢いが収まったが、またすぐ湧き出て足に絡まる。



 私は今、ヨハンに肩車された。

 大人が膝下の高さの草原なら、私は腰下の高さまである草原だ。

 足にまとわりついていた蔓は、私の腰まで巻き付き、身動きできなくなっていたのだ。

 それに気づいたヨハンが、私の周りの蔓を切って、肩車したのが今。


 私はヨハンの肩の上で、攻略隊やスターク、ピーターが蔓と格闘している所を見ている。


 前世で、朝顔って小学校低学年の時に育てたな~。

 朝顔の種を植えて、双葉の目が出て、どんどん大きくなって、花が咲くんだよね。

 小学校でもらった鉢と丸い支柱で育てたな~。

 本当は支柱に蔓が巻き付くはずはずなんだけど、巻き付かなくて、私が手で何度も蔓が巻き付くように支柱に誘導してもダメで、隣の子の朝顔の支柱に巻き付いたりして、夏休み前に家に持って帰る時、大変だったな~。

 何で、あの時蔓は巻き付かなかったんだっけ・・・。

 多分、朝顔の蔓は、左巻だったような。私は支柱に右巻きに巻き付けてたから、巻き付かなかったんだよね。


 じゃあ、この朝顔の蔓もすべて左巻?。


 私は、ヨハンや、攻略隊員に巻き付こうとしている蔓の方向を確認したら、すべての蔓が、左巻で巻き付いている。


 これって、ヨハン(支柱)が右回転したら巻き付けない?


「ヨハン、ヨハン、右回りに回って」


「・・・・。」ヨハンは、私を肩車したまま、勢いよく右回転。


 すると、絡まっていた蔓が緩み剥がれた。


「・・・・。」ヨハンは、目を見開き、肩車している私を見上げる。


 緩み剥がれた蔓が、再度、ヨハンの足に絡まりついてきた。


「・・・・。」ヨハンは、また勢いよく右回転。


 蔓は緩み剥がれた。


 私を肩車したヨハンは、勢いよく右回転しながら、林の方へ進む。


 朝顔の蔓は、ヨハンに絡まろうとするが、回転が逆なので絡まれない。


「ヨハン、気持ち悪い。回転早すぎ、酔った。酔った。降ろして、降ろして。吐くよ。吐くよ~。」

 私はヨハンの頭に必死につかまりながら、ヨハンの右回転の遠心力でぐうらぐら。

 車酔いならぬ、ヨハン酔い。片手で口元を押さえて、吐かないように必死だ。


 私を肩車しているヨハンが、高速右回転で林の方へ進む姿を見た、スタークとピーターは、同じように右回転で林の方に進み始めた。


「右回転すれば蔓がからまない」

 ピーターが近くの、攻略隊に伝え、攻略隊も右回転で、林に進んで行く。


 朝顔の咲く高原を、大人がみんな、右回転しながら進む姿は、集団ダンスを踊っているようだった。


 高速右回転のヨハンが、林に着くと蔓は、林の木々に巻き付き、ヨハンには絡まりつかない。

 ヨハンの肩車から、やっと降ろしてもらった私は、林の奥で、ゲロ吐いた。


「ふー。今日のポトフ出ちゃったよ」

 まだ、少し気持ち悪い、頭のぐらぐらする私は、林の木陰で横になり、

「ひどいよ、ヨハン。そりゃ右回転しろとは言ったけどさ、あんなに高速右回転いらなくない。」

 隣で、周りを警戒しているヨハンに、文句を言えば、


「・・・・。」

 ヨハンは反省の色もなく、無表情。


「もう、いいよ」

 私は目を閉じ、横になって眠ってしまった。








熱くなってきましたね。熱中症に気を付けて下さい。

次は、まだ続く4階層。

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