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私の魔術は使いにくい  作者: ロミ


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102/105

2階層の螺旋階段。

本日2話目の投稿です。珍しく長いです。

 




「よし、2階層へ挑む前に一旦休憩だ。キスグ、水と軽食を出せ」

 大声で、モハメド王子が指示を出す。


 もう、うるさいなー。大声で叫ばなくても聞こえてるよ。

 私が後ろを向いて、水瓶とクッキーの入った籠を吐き出した。

 攻略隊員達が取りに来るのを待っているが、誰も取りに来ない。


 みんな、ばらばらにその場に腰を下ろし休憩している。


「なにしてるんだ。配れ。俺たちは休憩しているんだ」

 モハメド王子の腰ぎんちゃくが、偉そうに命令してくる。


 なんでだよ。欲しかったら自分で取に来いよ。って言いたかったけど、大勢の攻略隊員達に睨まれ、やもなく私とヨハン、スターク、ピーターは水とクッキーを配り出した。


「何してんだ、始めはモハメド王子からだろ、その次は、隊長だ、その次が副隊長だ。順番考えろ、常識しらないのか」

 腰ぎんちゃくが喚いている。


 ムカつく、ムカつく。知らないよ。モハメド王子以外紹介されてないし、順番なんてどうでもいいじゃないか、食物は同じだよ。


「・・・はい、わかりました」

 無表情で淡々と答え、モハメド王子に水とクッキーを渡したら、


「何やってるんだ、モハメド王子に隊員と同じ物を食べさせるつもりか」

 また、腰ぎんちゃくが喚く。


 耳元で喚くな、うるさい。私は無表情のまま腰ぎんちゃくを見据えて、大声で

「え!ダンジョン内で隊員とは違う、贅沢な物を一人だけ、毎回食べるんですかー。私、ダンジョンに入ったら、生死を共にする仲間。仲間が今あるもので我慢しているのに、自分だけ贅沢するなんて信じられない。仲間を軽んじてますよねー」


 大声で叫ぶように話す私の声が、1階層の広間に響き渡った。


「な、な、な。そんなこと言ってるんじゃない。俺は高貴な方には、贅沢な品をと言ってるんだ」

 腰ぎんちゃくが、大声で慌てて言いつくろっている。

 その声は、静まりかえった広間に響き渡たった。


「むむむ・・・。」

 攻略隊員達の視線が、腰ぎんちゃくに刺さる。


 見かねた、モハメド王子が

「同じ物でかまわない、ダンジョン内では皆、仲間だ」

 そう言って、水とクッキーを食べ始めた。


「しかし・・・」

 腰ぎんちゃくは何か言おうとしたが辞め、私をすごい顔で睨んでいる。


 ふん、ざまー。と思いながら、私は無表情で、他の攻略隊員達に水とクッキーを配った。


 20人に配り終え、さ、私達も座って食べようとしたら、


「後5分で出発だ、準備しろ」

 モハメド王子の号令がかかった。


 まだ、食べてないよ、休憩してないし。くそー。嫌がらせだ。嫌がらせだ。

 私達は、急いで水とクッキーを胃に流し込み、出発の準備をおこなった。






 2階層への床のマンホールみたいな蓋は、大人が1人通れる大きさ。


 私達の順番になり、蓋の中を覗き込むと、薄暗い空間に、4畳ぐらいの足場があり、螺旋階段が下へ続いている。螺旋階段の先は見えない。


「めっちゃ、暗いくて長い階段だね」

 顔をしかめて、不安顔の私。


「・・・・」

 ヨハンは無言で、2階層のマンホールの中に入り、両手を広げて私を受け取る準備をしてくれた。


 恐がってても仕方ないね。気合を入れよう。私は2階層のマンホールの中へ、ヨハンの胸に飛び込んだ。


 降り立った2階層は、薄暗く少しひんやりする。音は何もしない。

 近くで見た螺旋階段は、石のブロックでできていて、学校の階段ぐらいの大きさだった。

 薄暗いが、壁に等間隔で松明が灯されており、それがより一層不気味な空間を演出している。

 階段に手すりはなく、踏み外すと下へ真っ逆さまだ。


 私達の後を、スタークとピーターが続いて降りて来た。


 前をピーター、私とヨハン、後ろにスタークの順列で階段を降り始めた。


 私達は攻略隊の列の真ん中あたりを歩いている。モハメド王子達は、攻略隊の列の後ろの方だ。


 前を歩く攻略隊から「不気味だな」「どこまで続くんだ」などの会話が聞こえるが、私達は無言だ。


 前を歩くピーターが、松明10個で壁に線を書いた。壁に書く線は、松明20個目で2つ線、松明30個目で3つ線と増えていってる。


「ピーターさん。何の為に書いてるの」ヨハンと手を繋いだまま歩いている私。

 前を歩くピーターに駆け寄り、聞いてみる。


「同じ空間が続く時のセオリーだ。薄暗い空間で、ずっと同じ事を続けていると感覚が麻痺する。時間も場所も目的さえも曖昧になるんだ。

 しかもここは先が見えない、ずーと続くらせん階段。終わりがわからない。

 人間は目標があって、そこを目指す生き物だ。目標がわからないのは不安になる。

 この線は、まあ、おまじないだな」

 ピーターは、ウインクしてニカっと笑った。


「ふーん。そうなんだー」私は、その話をなんとなく聞いていた。




 ピーターが付けた傷が8本になった頃


「くそ、いつまで降ればいいんだ」「本当に着くのか」

 前を歩く攻略隊員がイライラしだした。疲労と先が見えない螺旋階段が精神的に堪えてるようだ。


 ピーターが少しゆっくり歩き、前を歩く攻略隊員と距離をとった。



 ピーターが付けた傷が10本になった頃


「お前が押したんだろ」「お前だろ」

 前を歩く攻略隊員が喧嘩しだした。学校の階段ほどの大きさしかない螺旋階段で取っ組み合いが始まった。


 足を踏み外せは、らせん階段を滑り落ちるか、真ん中の吹き抜けへ落下するのに危ないよ。

 私達は足を止め、壁に張り付き様子を見ていた。


 後ろを歩いていた、副隊長が前に行き、喧嘩の仲裁をしている。

「ここで、休憩だ」副隊長が指示を出した。


 私達も階段に座ろうとすると、

「キスグ、お前たちは、水と軽食を配れ」

 後ろから腰ぎんちゃくが叫んでいる。


 ん~。なんとなく言われるかな~って思ったけど、言い方ひどくない。

 私は後ろを向いて、水とおにぎりを吐き出した。


「キスグ、俺たちが配る」

 スタークとピーターが、攻略隊員へ配っていると、難癖つけられている。

 ピーターは笑顔であしらい、スタークは睨んで黙らせていた。


 そうか、2人が配るって言ってくれたのは、休憩させてくれるためかと思ったけど、イライラした攻略隊員から守ってくれたんだ。ありがたい。後でなんかお礼しよう。





 小休憩を挟んで、また歩き出した。


 攻略隊員達は、みな無言で降りて行く。私達も無言で歩く。


 薄暗い中。同じ壁。同じ階段。無音の中、足音だけが響いている。


 なんだか、降りているのか、登っているのかわからなくなってきたよ。

 足がバグってきたのか、目がバグってきたのか、螺旋階段が動いているような気がする。


 んん?!違う、動いてるね、この螺旋階段。


 エスカレーターみたいに、ゆっくりだけど、螺旋階段自体が上に動いてる。

 いつから動いてるの?

 私達は登りエスカレーターを降ってたの?

 こんなの無理、いつ到着する、どんだけ階段降りればいいの?


「・・・・」

 階段を凝視して、歩みの遅くなった私を、ヨハンが手を引っ張る。



 私は、前と後ろをちらりと見て、ヨハンに小さい声で耳打ち、

「ヨハン、地面が動いてる。ゆっくり上に登ってるよ」


「・・・・」

 ギョッとしたヨハンは、足を止めて階段を凝視した。


 ヨハンが止まったことで、後ろのスタークも止まった。


「どうした」

 スタークが、怪訝な表情で聞いてきた。


「・・・・」

 スタークの顔をちらっと見た後、ヨハンは、前を向いて歩きだした。




 どうしよう、この階層、永遠に終わらないかもしれない。






いつの間にか100話過ぎてました。これも皆さんが読んでくれるのでが嬉しくて、毎日仕事後に書いてます。誤字多いですが、気づいたら訂正してますので、今後も読んで下さい。

次は、2階層の続きです。


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