顔合わせ
説明回です。
急遽決まった隣国への留学、もとい国外追放の御供。
バレンシア侯爵令嬢と共にエリナ姉と私が行くことになった。
翌日、両親、エリナ姉、私。侯爵様、侯爵夫人と顔合わせが行われた。
侯爵令嬢は貴族房にいるのでここにはいない。
詳しく話を聞くと、バレンシア侯爵令嬢は一方的に婚約破棄した皇太子を殴った事により、その行為が王族傷害致死罪にあたり、貴族房へ入れられた。侯爵令嬢がいちゃもんつけられた側でも、対外的に罪を問わないと、王家の面目が立たない。
そうなると、娘を溺愛する侯爵が黙っていない。処刑の可能性もあったが、猛抗議の末、国外追放処分となったのだ。
この国外追放処分。実質侯爵令嬢一人で、魔の森の向こう側の隣国へ国外追放という名目なため、大々的に護衛や、従者は付けれない。
そこで白羽の矢がたったのが、魔の森に隣接している子爵家の我が家だ。
エリナ姉が侯爵令嬢とマブ友だったこともある。
筋書きは、子爵家が領地に帰省中、たまたま行先が一緒だった娘(侯爵令嬢とは知らない提)と同行した。たまたま年の近い子爵家の娘と親しくなり、意気投合し隣国へ行くことになった。とゆうことにしたいらしい。事前に父に、侯爵家より打診があったそうだ。
そうだよね、じゃないと隣国へ行きたいと突然言った娘に、両親もOkは出さないよね。
侯爵家の護衛や従者は、子爵家に紛れて移動。もちろん、移動にかかる費用は子爵家分も侯爵家負担。
しかも、お礼金がたんまり子爵家に入り恩も売れる。
エリナ姉は侯爵令嬢と一緒に隣国に行けて、子爵家はお礼金が入り、侯爵家は安心して侯爵令嬢を送り出せる。winwinだ。
だが、私にはwinがないのだが何故?。何か月もの馬車での移動、魔物や盗賊から襲われる危険性、アイテムボックスを酷使される未来しかみえないのだが何故?
「行きたくない、行きたくない、行きたくないよー」私は自室で駄々をこねている。
「キスグお嬢様、隣国には、おいしい物がいっぱいあると聞きます。まだ見ぬ食材、おいしい料理、キスグお嬢様がいつも少ないと嘆いてらっしゃる甘味も。この国では、手に入らない物がたくさんあります。子爵様も、お小遣いたんまりあげると、おっしゃってたじゃありませんか」専属メイドのマリーが、やさしい顔で私を励ましてくれる。
そうだよね、マリーも私が行くことになったから、一緒に行くもんね。マリーもとばっちりだね。
駄々をこねても仕方ない。腹をくくって、準備をしよう。
翌日、子爵へ王都別宅前は、大勢の人だかりができていた。
子爵家一家が、急遽帰省する事になったため、通常の子爵家の護衛、従者に加え、侯爵家の護衛や従者も紛れている。その分荷物や、馬車が連なり、大名行列のようだ。
それに加え、一般の旅人を装った護衛、旅に必要なものを売る一般の行商。見物の野次馬など、人であふれかえっていた。
「すごい人だね、何人ぐらいいるんだろう。一緒に帰省する人は50人ぐらいかな?。半数は侯爵家の人でしょ。こんなに腕利きの護衛がいっぱいなら、移動中、魔物や盗賊の心配は少ないだろうね。でも、宿には泊まれないね」私は、旅装束のパンツスタイル。一見男の子にしか見えない格好で、さっき一般の行商から買ったオレンジジュースを飲みながら、荷台の上から人々を眺めている。
「危ないので降りてきて下さいキスグお嬢様。いいえ、キスグ」専属メイドのマリーが注意する。
そう、キスグ。私は今回、平民の従者。子爵家令嬢として旅をしない。
原因は一番にアイテムボックス持ち。私のアイテムボックスは物品の出し入れ方が特殊だから目立つ。
しかも大容量。だいたい庭師の2階建て倉庫2件分はある。
子爵令嬢として、大容量のアイテムボックスは歓迎だが、出し入れの時の表情よ。
貴族としてはダメらしい。自分の顔をディスられて、地味に傷ついている。
専属メイドのマリーは私の姉として、私の護衛騎士ヨハンはアイテムボックス持ち者の保護の為に付いてくれる。
アイテムボックス持ちを拉致られたら大変だからね。
子爵家門前がなにやら騒がしくなった。
バレンシア侯爵令嬢が到着したようだ。
腰に剣を刺し、パンツスタイルの旅装束に、赤髪のポニーテール、ツンとした感じのスタイル抜群の女騎士がそこにいた。
「おおー。かっこいいね。みんなに笑顔で囲まれているね。人気だねー。人望があるんだね。
あっ!エリナ姉もいる。私も挨拶した方が良いのかな」荷台の上からつぶやくと、
「行かない方がいい。子爵令嬢とバレたら厄介だ」荷台の横に立っていた、護衛騎士のヨハンが無表情で別宅前を見ながらつぶやいた。
さあ出発。私は、荷物の荷台にマリーと一緒に乗っている。
この荷台、荷物も載っているが、荷物に隠れて、椅子にクッション。疲れたら軽く横になれるスペースが確保されており、子爵令嬢の私に考慮されている作りだ。
「うふふふ。うれしい。いただきまーす」私はニヤニヤしながらガトーショコラをほおばった。
11年生きてきて初めて食べるチョコレート。コダラン国では栽培されてないカカオを使用。
口の中に入れる瞬間、チョコレートのビターな香りが鼻に抜け、噛んだら、しっとりとした柔らかい生地。濃厚なチョコレートが舌の上で溶けだし、噛むほどに口の中に広がる、甘ったるい中に渋みがある大人の甘味。たまらない幸せな時間を運んでくる。ほっぺたを押さえながらニマニマ堪能している私と一緒に、マリーにもおっそわけ。二人で至福の時間をすごした。
このガトーショコラは、出発前に侯爵家の従者が持ってきた、侯爵家からの賄賂。
侯爵家が一緒について行ってくれる私に対してのお礼らしい。
魔の森の向こう側の隣国から取り寄せた、なかなか手に入らない高級なカカオを使用したガトーショコラ。
昨日の顔合わせから、私の嗜好を調べ、カカオを入手し賄賂を渡す、侯爵家あなどれぬ。
隣国への旅が始まります。




