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第2話 捨てる神もいれば追加する神もいる

 こんな大きな声が出るんだと叫んだ自分に驚き、少し現実逃避をした後にもう一度現実から逃げた。


 錬金組合の応接室から空を見ると速やかに晴れ渡っており、鳥達が気持ち良さそうに空を飛んでいた。


「今日も良い天気ですね~」


「フェリテスさん……現実から逃げるお話ならお付き合いはしますが……借金は減らないので向き合いませんか?」


「はい……すみません。職員さんもお忙しいと思いますが詳しく説明して貰っていいでしょうか……」


「分かりました。心を強く持ってお聞きください」と言ってから職員さんは書類を手に取りテテノに丁寧に説明を始める。


 一枚目の書類からテテノクラスの錬金術士が生涯に稼げる額を遙かに超えており、初手の一撃でテテノのHPは0になったが詳しく説明してくれているので意識を飛ばす訳もいかずに話を聞いた。


 職員さんは持って来た羊皮紙とテーブルに置いてあった羽ペンにインクをつけ、出来るだけテテノにわかりやすい様にお金の流れやテテノがサインした書類を詳しく説明した。


 わかりやすい説明を聞きテテノも分からない事があればその場にすぐに聞いたので、納得はできなかったがようやく借金の全貌が見えてきた。


 簡単に言えばテテノが母親から借金があるという話を聞いていたの氷山の一角でテテノに分からないようにあちこちからお金を借りていたのだった。


「お母さん……」


「他国からも借りていましたからね……それでこの書類は他国の借金を錬金組合が肩代わりしてテテノさんのお母さんが返す事になっていたのですが……」


 そう言って別の書類をだし、この書類で全ての財産をテテノに相続させると言う契約書だと教えてくれた。


 その事実に目の前が真っ暗になり頭を抱えたが……抱えた所でどうしようも無いので職員さんに尋ねた。


「すみません……返せないというのは無しでどうすれば良いと思いますか?」


「そうですね……今のテテノさんの錬金術師のクラスはCなので……どう頑張っても無理です。Sクラスの錬金術士になれば数年で返せると思いますので、それを目指すのも一つの手ですね」


 自分の母親でさえAクラスの錬金術師だったのでその上のSクラスの錬金術師になると国の中でも数える程しかいないのでテテノは他の選択肢を尋ねた。


「テテノさんのお母様がちゃんと働いて信用を得ていればSクラスの錬金術士だったんですけどね……他には……この国にはいませんがXクラスの錬金術師も一つの手ですね」


「Sが無理なのにXとか無理ですよ……」


「その上のZクラスが出来たので目指しますか?」


「そんなクラスが出来たんですか?」


「はい。冒険者ギルドや大公爵様や他国の女王様等と話あわれた結果出来ましたよ。錬金術師でも戦う事も出来る人もいるので錬金組合も新しく導入しました。


「Xクラスの条件でも恐ろしいのに……」


「魔神五体を国王陛下の御前で倒せば晴れてZクラスになれますよ」


 戦う事があまり得意ではない錬金術師が魔神五体と戦うとかどんな夢物語だろうと考えていると、職員さんが他の返済方法を幾つも教えてくれたが早期返済はとても無理そうだった。


「私の人生……もう詰みなのでは?私が稼げる分が利息で飛びますが?」


「……テテノさんがこう新たな力に目覚めてあっという間にSランク冒険者が受注するような魔物を倒してくれる事を期待していますが……目覚めませんか?」


「目覚めませんよ!」


「ですよね……でしたらまずは返済しながらBクラスの錬金術師を目指しましょう。テテノさんは学校を卒業されてから錬金術師一筋ですから実力的には問題ありませんし、人柄も問題ありませんので」


「そう言ってもらえるとありがたいのですが……私で大丈夫でしょうか……」


「それが一番健全ですね。Bクラスまでいけば魔法学校の錬金術師の非常勤講師としての仕事が受けられるようになるのでまずはそこを目指しましょう。命の危機がなく賃金がかなり良いので……」


「分かりました……まずは言ってくれている様にBクラスの錬金術師を目指します。確か試験は半年後でしたよね?」


「はい。冒険者のランクとも連動しているのでBランクの昇級試験を受けて通れば錬金術師のBクラスにもなれますが、命の危険があるので錬金術師の試験をオススメします」


「錬金術師の試験は冒険者の様に討伐の試験ってないですもんね……というか借金まみれの私にそこまで丁寧に教えてくださってありがとうございます」


「テテノさんとは付き合いも長いですし、真面目で優秀な錬金術師は少ないので錬金組合としても応援はさせてもらいます。後、重要な事ですがテテノさんのお母様を捕まえてくれば強制的に契約書を書き換える事も出来るので一つの選択肢と考えておいてください」


「見つけたら縛って連れてきます……」


 それからしばらく職員さんと話をし利息などを少しまけてもらい、まずは半年後のBクラスの試験を目標と言う事に決まった。


「試験まではそこまで強くは取り立てない様にしますので頑張ってくださいね……もし払えないと錬金組合が判断した場合は……」


「奴隷は無かったと思うんですが……どうなるんでしょうか?」


「大きな声では言えませんが……犯罪者扱いになるのでろくな未来はありません。新魔法の実験体にされたり……テテノさんは錬金術師なので禁術の人体精練とかやらされると思いますよ」


 その内容を母親や祖母から少しだけ聞いたことのあるテテノは顔を青くした。


 私が何か悪い事をしたんだろか? と母親を呪ったが、呪った所で解決しないので頑張ろうと心に決めた。


 職員さんの話は大方終わり、これからご迷惑をおかけしますがよろしくお願いしますと職員さんに言うと励ましの言葉を貰い一緒に応接室を出た。


 そして錬金組合の受付に戻り、簡単にできて利益がでる依頼を受けてから工房へと戻った。


 そしてテーブルの上に借用書の写しを広げもう一度確認したが借金が減っている訳でも無かった。


 男と逃げた母親に恨み言をいってからしばらく澄み渡る青空を眺め意識を飛ばした……




 しばらく意識を飛ばしていたが……来客用のベルが鳴ったのでテテノは借金という物が存在しない世界から現実に引き戻された。


 錬金術師という職業は錬金組合から仕事を取る事も出来るが個人で仕事をしても良い事になっているので、個人で尋ねてくる人も割と多かったりもする。


 だが錬金術師には冒険者のランクと同じ様なクラスと言う物があるので、世間に出回っている薬や錬金術師が作る物にはE・F・D・C・B・A・S・Xのクラスが振り分けられており、自信の錬金術士のクラスを超える物は絶対に作ってはいけないとかなりキツい規則できまっている。


(お母さんが目的のお客さんだったらどうしよう……ここ半年はお母さんが何か作った記憶は無いから……違法なお酒は造って飲んでたけど)


 等と考えながら足早に玄関に向かい扉を開けた。


 するとそこにはこの王都にある三大商会と呼ばれるその内の一つのイオード商会の商会長と薄い金色の髪に山羊の様な角が生え緋色の目をしたテテノより小さい魔人の女の子がいた。


「商会長さん、お久しぶりです。今日はどういったご用件で?」


「テテノさん、こんにちは。お母様はいらっしゃいますか?こちらの方は私の友人で護衛の方なのでお気になさらずに」


「うむ、友人兼護衛じゃな」


「玄関で立ち話もあれですので中にどうぞ」


 テテノがそう言うと商会長は分かりましたといって護衛の少女と中へと入った。


 錬金術で色々な物を作れるテテノはその護衛の少女が身につける装備の凄さを一発で見抜いた。

 

(……この人、絶対に強い人だ……不実の指輪は身につけてるけど……他の装備の桁が違う……あんなの何処で手に入れるんだろ?)


 少しジロジロと見てしまったのでその少女はテテノの視線に気づき笑いながら、なかなかこの指輪が仕事をせんのでな困っておると言っていた。


 そしてテーブルの上の借用書などを片付け、来客用のお茶を商会長と護衛の人に出してからテテノも座った。


 そして嘘を言っても仕方がないし祖母の時代から付き合いがある商会の商会長だったので正直に話した。


「商会長さん……すみません。母は男と逃げました……」


「はい?」


 テテノの言葉に商会長は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になりもう一度テテノに尋ねたが、テテノは謝るだけだった。


 そして角の生えた金色の少女が商会長に話しかけた。


「商会長殿。この建物の中にはわらわ達以外の気配は無いのう。わらわの索敵を抜けたなら別じゃがな」


「そうですか……何度も逃げられているので貴女をお呼びしましたが……また逃げられましたか」


「母がご迷惑を……それで母にどういったご用件で?」


 テテノがそう尋ねると商会長はマジックバッグの中から少し前から良く見る紙を数枚取り出した。


 テーブルの上にその紙を並べた。


「貴女のお母様の借金を取り立てに来ましたが……逃げたんですよね?」


「はい……逃げました。おいくらでしょうか?」


「黒硬貨二百枚になりますね……テテノさん払えますか?」


 追加された額の多さにテテノの眼鏡に亀裂が入り意識が飛んだ。


 綺麗な川の向こうにお爺ちゃんとお父さんが手を振っていたので、喜んでその川を渡ろうとした所で護衛の少女に回復魔法をかけられ意識が戻ってきた。


「お主、大丈夫か?」


「正直……大丈夫ではないです」と弱音を吐き、錬金組合から持って来た借用書の写しなどを商会長に見せ、今日の事を商会長に説明した。


 時間をかけた説明が終わると商会長も護衛の少女も頭を抱えた。


「まさか自分の娘を餌にして逃げるとは……」


「どこの世界でもいえることじゃが……契約書は要確認じゃな……それで商会長殿よ、母親を探すのか?一応は魔法で王都の中をくまなく探しておるが……おらん感じじゃな」


「一度逃げられたら経験上捕まりませんからね。もう王都にはいないでしょう……飛空艇に乗って他国に行っているはずです」


「行き先が分かっておれば飛んで行って捕まえるんじゃがな」


 テテノは頭を下げる事しか出来ず、謝りながら事の成り行きを見守った。


「錬金組合の方の契約書に財産全てをフェリテスさんの所にって書いてある契約書があるから、イオード商会の借金もこの娘の所にいったりするのか?」


「はい。そういう契約書なので……ですが、組合の方も手を打ってくれた様で今日以降にされた母親の借金はテテノさんのものにはならないようにはなっていますね」


 護衛の少女がなるほどの~っと納得してから次は、イオード商会の借金についてテテノ達は話し合いを始めた。

次回の更新は明日の朝、九時ぐらいになると思います。

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