第3話 -と-で増えるのは借金
また増えた借金をどう返済してらいいのかテテノが頭を抱えていると、護衛の少女が商会長に話しかけていた。
「Cクラスの平均的な月の収入はどんなもんなんじゃ?」
「そうですね~。少しは前後しますが白硬貨五枚辺りですね……Cクラスだと人も多いですが作っていい物がそこまで多いわけでは無いので……」
護衛の少女が白硬貨一枚が十万くらいじゃからと、独り言をいいながら計算し錬金組合で話した事も伝えたので次はBクラスの事を尋ねていた。
「フェリテスさんの話じゃとBクラスが当面の目標じゃが、Bまでいったら全額返済出来たりするのか?」
「Bではまだまだキツいですね。頑張りしだいですが……作れる物もかなり増えますが、Bクラスでようやく一人前と錬金術師は言われますので」
「冒険者も大変じゃが錬金術師も大変じゃな……」
「錬金術師は冒険者の様に強ければなれると言うものでもないですから。工房の管理、材料の仕入れ、目利き……どちらかと言えば商人に近いですね。国家資格でもあるので下手すれば宮廷魔道士並に難しい職業ですね」
「なるほどの~フェリテスさんはエリートという事じゃな」
エリートだったら借金地獄に落ちてませんと少し思ったが護衛の少女の表情が嫌味を言っているようには全く聞こえなかったのでテテノは素直に礼を言った。
「確かにエリートですね。錬金術師がいれば大抵の物は作れますので国には必須の職業ですから」
「中央都市の様な大きな街にも錬金術師の工房は無かったと思うんじゃが……そこまで大変な職業じゃったりするのか?」
護衛の少女がテテノに話を振って来てたのでテテノは少し考えてから答えた。
離れた他の国の事までは分からないが……大昔に実力と名声を持った錬金術師が王都から離れた所で悪さをし発見が遅れた為に国に甚大な被害が出た。
その事でローレット王国は王都にしか錬金術師の工房を作ってはいけないと言う事になったと伝えた。
「砂都サンファルテという国があるんですが、その国とローレットの国境辺りに村があったらしくそこにいた錬金術師が悪さをしたので、五十年たったいまでも生き物がいない死の沼と言う場所が出来たらしいですよ。私は戦えないので行った事はないですが……」
「物騒な話じゃな……詳しく聞きたい所じゃが付き添いじゃからやめておくかのう」
テテノは少し待ってくださいねと言って立ち上がり本がぎっしりと詰まった本棚から一冊の本を護衛の少女に手渡した。
「昔の事件ですが今でも錬金組合で語り継がれている話なので、その本に詳しく載っているので良ければどうぞ。私は逃げる気はないので護衛の貴女も退屈でしょうし……」
「物珍しい物が大量にあるから、見てるだけでも楽しいが厚意に甘えさえて貰って少し読ませて貰うかのう」と言って護衛の少女はテテノが渡した本を読み始めた。
それからしばらくテテノと商会長は話し合ったが、額が額だけにすぐに返済できる解決策は出なかった。
「本当にすみません……」
本を読みながら護衛の少女は商会長に話しかける。
「商会長殿よ。こういう時はどうするんじゃ?建物とか持ち物の差し押さえとかになるのか?奴隷は聞いた事がないから無いとは思うんじゃが……」
「そうですね……差し押さえれば、ぱっと計算した感じだと立地条件もいいので八割ぐらい戻ってきますが……それは止めて置きましょう」
差し押さえられてはこの工房で物が作れないのでそうなれば借金の返済所でなかったのでテテノは安堵のため息をついた。
「理由を聞いても?」
「はい。大丈夫ですよ。まずは個人的にな理由で一番重要な話ですが、テテノさんのお婆さんには父や私自身がとても助けられましたのでその恩返しですね。お婆さんがいなければイオード商会は無かったと言っても問題ありません」
「なるほどの~」
「錬金組合がテテノさんに期待している様なので差し押さえて敵対したくないというのもありますね。魔道具や生活に役立ちそうなものが出来る時はだいたい錬金組合が発表しますので仲良くしておくと風の噂で流れて来たりしますので」
「冒険者ギルドに錬金組合、敵対しても良い事はなさそうじゃしな」
「はい。付け足すなら魔術協会、神官、貴族もですね……まぁ額が額だけに大きな目で見れば返済されないのはローレット王国の損失になりますからね」
「何というか流石はローレット三大商会の商会長じゃな!奴隷化して薄い本の様な事をするのかと心配になったが大丈夫そうじゃな」
護衛の少女が変な事を言ったので意味の分からない二人は頭を傾げた。
「当面はテテノさんの借金に関しては口うるさくは言わない様にしますので、錬金組合が言っているようにまずはBクラスの錬金術師になってください」
商会長の優しい言葉にテテノは泣きながらお礼を言い何度も頭をさげた。
テテノが少し落ち着いた後で護衛の少女も返済に関しての案を出した。
「先の話にはなるじゃろうが……Aランクと言うよりかはいけるならZは無いとしてXランクを目指して行く方がよいぞ」
「いや……流石にそれは……無理です!」
「頂上をめざして頑張れば途中まではいけるもんじゃからのう。そういう気概で頑張れという事じゃな。と、Aまでいくと魔界の鉱山の仕事があるから超危険じゃが錬金術師なら稼げるとおもうぞ」
「え?魔界の鉱山ですか?その話は初耳ですが……」
「うむ。冒険者でいう所のAランク以上にしかいかない話じゃからな。出来れば内緒じゃぞ」
護衛の少女は片目を瞑りながら人差し指を唇にあてるポーズを楽しそうに取っていたので冗談かな? とも思ったがイオード商会の商会長がそれを話して大丈夫ですかと慌てたので、本当の事なのだろう思いまた少し返済への道が開かれた気分だった。
「その話を知っていると言う事は高名な魔法使い様でしょうか?」
興味本位にテテノが尋ねると商会長は少し困った顔をしながら話した。
「複雑な事にほぼ無名ですね……冒険者をやっているいる訳ではないので、何かあれば傭兵としてお仕事をしてもらっています」
「うむ。一部の連中と村のガキンチョーズには魔王と呼ばれておるリベット村の便利屋さんじゃな」
最近開発が進み商会長の本店も移転したと噂話程度によく聞く王都から少し離れた場所にある村の事だった。
身につけている物の事や商会長と気さくに話している事も考えると、テテノの同級生で駆け上がっていく魔法使いと同格かそれ以上の人物なのだろうと心に刻んだ。
そして借金の話も終わりこれからの返済についての計画も決まったので、商会長はそろそろ帰りますねと立ち上がった。
返済を待ってくれた事にテテノは何度もお礼を言い同じ様に立ち上がった。
そして見送りにいく為に玄関まで向かおうとすると護衛の少女が工房の中が気になるのかキョロキョロとしていた。
「汚い工房ですみません……」
「お主な……借金があるのは分かるが卑屈になりすぎじゃぞ。年期があって立派な建物じゃな~と思って見ておった所じゃな」
曽祖母の時代から続いてきたので建物はきしみ隙間風もおおく、他の錬金術師の建物に比べてもかなり傷んでいたが、テテノは自分が生まれ育ったこの家が好きだったの、そう言ってもらえたので少し涙を流し礼を言った。
「それで少し聞きたいんじゃ……錬金術師はどんな物が作れるんじゃ?錬金術師といえば胸の前あたりで手を叩くのと何でも作れるぐらいしか知らぬのじゃが」
手を叩く意味は分からなかったが、もしかしたら今後仕事をもらえるかも知れないのでテテノはそうですねーと少し考えてかわ説明を始めた。
「材料さえあればほぼ何でも作れますが……気を付けて欲しいのは薬が欲しい時は薬師に頼む方が効きますし、武器や防具を作るのは鍛冶屋に頼んだ方が良い物が出来ますね」
「ん?と言う事は器用貧乏に聞こえるが……薬師や鍛冶屋で作れない物をつくっておる感じじゃな?」
「そういう事です。かなり簡単にいえば薬師が作るポーションの防腐剤をつくったり鍛冶屋が使う凝固剤を作ったりですね。私のクラスでは出来ませんが鍛冶屋の魔鉱炉とかも作ったりもしますね」
「何か作って貰いたい物がある時はこの工房に来ればいいのか?」
「はい。それでも大丈夫ですが、錬金術師はクラスによって制作出来る物と使っていい材料が決まっているので、少し面倒ですが錬金組合の方にいってもらってからこっちに来て貰った方がいいですね。私では作れない物もあるので」
「ふむふむ。なにか変わった物を作って貰いたいと時とかはどうするんじゃ?例えばこの世界に無い様な物とか」
「変わった事を聞きますね?そうですねー……危険物の類いなら錬金術師と一緒に届け出る事になっていますし……生活の役に立ちそうなものならお客さん次第で特許登録といった所ですね」
テテノと護衛の少女の会話を聞いて商会長の目つきが変わり話に加わった。
「何か面白そうな事をお考えですか!?またこの工房に来られる時は是非!私にも声をかけてくださいね!」
「お主な……村のガキンチョーズ用になにか玩具でも作ってもらおうと考えておるだけじゃぞ」
「貴族でも手元に届くのが一年かかるボードゲームの考案者がよく言いますね!ほんと来る時は私も誘ってくださいよ!」
「あれはわらわじゃがわらわでないんじゃが……何というか商会長殿じゃの~……」
「私の趣味はお金を増やす事で息抜きはお金を数える事ですからね」
「それで優良商会じゃから大したものじゃな」
「悪い事をすればすぐにお金は貯まりますが……恨まれて刺されたら意味はないですからね。錬金術師は特にそうですよ。テテノさんぐらい知識がある錬金術師が違法な事をすれば数年かからず返済出来ますよ」
「そうなのか?」
急に話を振られたので少しあたふたしたが、そうですねと頷き説明した。
「金とかなら簡単に出来ますし本物と見分けのつきにくい宝石等も割と簡単にできますから足が付かないように流せば錬金術師は儲かりますね……捕まると無職決定ですが」
「まぁテテノさんは根が真面目なのでその程度の悪事しか言いませんでしたが……健康な人間をさらって悪くなった内臓を入れ替える人体精練とか洗脳薬とか作ったり魔物を呼ぶ薬とかも出来たりしますよ。今出した話は実際にあった話ですね」
「それで国がしっかり管理できる国家資格と言う訳なんじゃな」
「そういう事です」
護衛の少女が教えてくれた事に礼をいい、長くなった話に謝ってから古くなった工房の扉をくぐり外に出た。
テテノは何度も商会長と護衛の少女に頭を礼を言い頭を下げて二人を見送ってから工房へと戻った。
「お金は無くなったけど人に恵まれてよかった……何十年かかるか分からないけど返済頑張ろう」
工房から少し離れた町筋を商会長と護衛の少女は歩いていた。
「すみませんがもう少しお付き合い願えますか?」
「うむ。かまわぬが……錬金組合にでもいくのか?」
「よく分かりましたね。テテノさんの借金の事を錬金組合と話を詰めておこうと思いましてね。足並みを揃えておけば少し楽になるでしょう」
「自信はなさげで内気そうじゃが人柄は良さそうな感じじゃな。商会長や組合が肩入れするんじゃから何かあるんじゃろ?」
「目立たないCクラスの錬金術師ですが……現状は難しい錬金術師の試験を全て一発合格してCまで来ている錬金術師ですので、あの人の未来にかけている感じですね。あまり悪く言いたくはありませんがあの方のお母様が今まで足かせになっていた可能性はありますね」
「なるほどのー。それはあの娘の前で言っては駄目じゃぞ。かなりの借金は背負わされたがあまり母親の事は悪く思っていない感じじゃからな」
「ええ、分かっています」
「わらわも出来る範囲で協力してやるかのう」
などと話しながら二人は錬金組合に入って行く
次回の更新は夜の六時か七時あたりの予定。




