第4話 錬金術師のお仕事
イオード商会の商会長達が帰りまだ陽も高かったが、テテノは本日休業の看板を工房の扉のドアノブにかけて、しっかりと玄関の戸締まりをしてから自室に戻りベッドに倒れ込んだ。
眼鏡を外して少しぼやけた天井を見ながら一人呟く。
「はぁ……本当にこれからどうしよう。。Bクラスの錬金術師になって頑張れば死ぬまでには返済できるとおもうけど……」
今日一日で色々な事がありすぎてベッドに倒れ込んだテテノはすぐに意識を失った。
次にテテノが意識を取り戻したのは窓から入り込む朝日と朝早くから仕事をする商人達の馬車の音だった。
「もう朝か……昨日あのまま寝ちゃったのか」
いつも起きる時間より少し早く目覚めたので、昨日お風呂に入っていない事を思い出して軽くシャワーを浴びて朝食の準備を始めた。
「食費の節約もしないとなー」
元より少食だったテテノは食品を入れる設置型のアイテムボックスの中から少し硬いパンと卵を取り出した。
硬いパンは食べやすい様にナイフでスライスし卵を目玉焼きにしてスライスしたパンの上に載せて食べる。
お腹いっぱいと言う訳ではないがこれだけでも全然足りるので、コーヒーを入れて一息ついてから今日からの仕事を考える。
(昨日、錬金組合からもらって来た依頼を全部終わらせてからまた組合に依頼を貰いに行こう。急にお客さんがきたらそっちの仕事もするけどしばらくはそれがメインかな……材料はまだあるしね……朝起きて夢だったらよかったけど……頑張ろう)
玄関の鍵をあけ表のドアノブにかけてある本日休業の看板を工房の中に仕舞った。
アイテムバッグの中から錬金組合からの依頼の羊皮紙を取り出しもう一度内容を確認する。
「えっと……ハイポーションが20の、鍛冶師が使う凝固薬が20の妖精の目薬が5で薬剤関係は終わりで武具はっと……灯火の杖が1の魔道ランタンが1っと……灯火の杖とか魔道ランタンってお店でも買えるのに、割高になる錬金組合に頼んだんだろ?こちらとしてはありがたいんだけど……」
普段なら丁寧に一日かけて失敗の無いように作る量だったが、早く目が覚めたのもありお昼過ぎには納品出来る様にと早速準備に取りかかった。
「大釜でハイポーションを先に作りながら小さい釜で目薬作ってっと……」
人と話すのはあまり得意ではないテテノだったが錬金術で何かを作る時にはよく独り言を言いながら仕事をしていた。
自分の身長より遙かに高い防腐の魔法がかかった棚の引き出しから目的の物を順番に取り出していく。
アイテムボックスが開発される前はよくこの棚が色んな工房で使われていたのだが、最近はめっきりと見なくなったが使い慣れた物が一番使いやすしと思っているテテノは好んでこの棚を使っていた。
(用量は明らかにアイテムボックスの方が大きいんだけど……劇薬と薬草とかを一緒に入れるのは何か抵抗があるんだよね……数年に一回ぐらい間違って毒ポーションで亡くなった人とかいるし)
借金もある自分がそんな物を作っては話にならないので作り慣れた物だが、二度三度材料を確認する。
「ハイポーションが薬草に強化の丸薬と蒸留水で、妖精の目薬が妖精蝶の羽と四色たんぽぽと蒸留水」
強化の丸薬は素材の効能を上げる薬でハイポーションの他にも色々な物に使えるのでテテノは時間があれば大量に作って保存してあるので今の所は材料に困ると言う事もなかった。
蒸留水も同じでほとんどの錬金術師がよく使うので大量に作り保存が利くアイテムボックスに瓶等にいれて保存してあった。
すり鉢に乾燥した薬草を入れ丁寧にだが少し粗く潰し錬金釜に入れる。
次に強化の丸薬を入れ蒸留水を流し込み、どこから仕入れて来たのか本物かどうかも分からないが世界樹できた釜の蓋で釜にふたをする。そしてそのまま錬金釜に魔力を流しても良いのだがテテノの経験上、少し寝かせた方が効果が良い様な気がするのでその間にほかの準備をする。
石臼の中に妖精蝶の羽と四色たんぽぽを入れゆっくりと回しその二つの材料を粉末にしながら混ぜていく。
その二つの材料を石臼で潰して混ぜた頃に、寝かせていた大釜の所にいき魔力を流す。
錬金の大釜と言う物は錬金術師が魔力を流す事で冷たくも熱くもでき、金属なども分解し結合もできる大釜である。
だがその扱いは精密で非常に難しく魔力を持っているからといって誰にでも扱える代物では無かった。
その扱いが難しい錬金の大釜に入れた材料の温度が人肌より少し高い温度になる様に魔力を流すとうっすらと発光し始めた。
テテノの表情から上手くいったのか、ふぅっと一息ついてから妖精の目薬を作る為に石臼の所に先ほどの材料をふるいにかけまだ荒い物を何度か挽いた。
きめの細かい粉末にして人の頭ぐらいの小型の錬金釜をテーブルの上に載せ、粉末にした材料を丁寧に入れ蒸留水を流し込み蓋をする。
そして先ほどより小さくなった分、細かい魔力制御を必要とする魔力釜に丁寧に魔力を流し完成するまでに次の準備を始める。
「はぁ……物語のように、錬金しました!何故か瓶に入ってます!とかならないかな……」
などと最近読んだ物語を思い出して一人で苦笑しながら倉庫にいきハイポーションを入れる瓶と目薬を入れる瓶などを持って戻って来た。
それからお昼ご飯を食べるのを忘れたまま作業に没頭し凝固薬を作りつつ灯火の杖とか魔道ランタンを完成させた。
灯火の杖は魔力を流すと辺りを明るくするので魔法使いの冒険者が洞窟等でよく使うもので、魔道ランタンもそうだが洞窟の中に溜まっているかもしれないガスなどに引火する恐れがないので重宝されていた。
その二つに魔力を流し正常に使える事を確認してから依頼された物を全てアイテムバッグに詰めてから工房に鍵をかけ、錬金組合に行っていますと看板をいつもの様にドアノブにかけてから錬金組合に向かった。
錬金組合までの道のりを歩いているとちょうど魔法学園の生徒達の下校時刻だったようだった。
「もうすぐ二年生になるけど……AクラスからBクラスに下がったらどうしよう……」
「みんなそう思ってるから大丈夫だよ……私も下がったら姉様になんて言えばいいか……」
「お互いに先生が凄いと大変だね……」
「うん……」
仲の良さそうな女学生の会話の聞きつつ、私もお母さんが凄かったらその気持ちよく分かるよ!などと思いながら学生時代は学生時代で大変だったな~と苦笑していると見慣れた錬金組合の建物が見えてきた。
重厚な扉を開けて中に入ると他の錬金術師達もいていつもの様に組合の人達は忙しそうだった。
錬金組合の建物は錬金術師だけでなく薬師などの他の製造職もくるのだが、最近は目に見えて人が多くなっていた。
納品する受付には人が並んでいたのでテテノも静かに他の錬金術師達と同じ様に並んだ。
(う~ん……普段より人が多いから冒険者やってる錬金術師も来てるのかな?薬師の人達も錬金組合に来るから多いとは思うけど?多くない?)
等と考えながら長い時間まっているとようやくテテノの番がやって来て、対応してくれた職員は借金の相談にも乗ってくれた職員さんだった。
「こんにちは。依頼品の納品にきました」
「はい、テテノさんこんにちは。テテノさんの作業速度なら今朝ぐらいに持って来るかと思いましたが……大丈夫ですか?」
「昨日、イオード商会の商会長さんと話し終わってから寝てしまって……」
疲れている時はあまり無理をしないでくださいねと職員さんに気遣われたので、テテノは礼を言いながら依頼の品を提出した。
「ありがとうございます。確認しますので少しお待ちください」と言ってから灯火の杖と魔道ランタンに魔力を流し性能を確認し手元にある羊皮紙のチェック表に○を付けていった。
その光景を眺めていたテテノは作る時から気になっていた事を尋ねた。
「灯火の杖も魔道ランタンも道具屋に行けば置いてあるのにどうして錬金組合に頼んだんでしょうね?」
「そうですねー。少し前から王都が魔都と交流を始めたので向こうの方達が物珍しくて買っていくのもありますし、行った人の話では魔都は少し薄暗い場所も多いらしいので必需品になっているようですよ?私も只の職員なので詳しくは分かりませんが……」
「そうですか、ありがとうございます」
(昨日来た護衛の人も魔界の鉱山がどうのこうのとか言っていたから、もしかしたら鉱山で使ってるのかもしれない……アイテムバッグの中の物を盗む魔物もいるってどこかで聞いた事あるから無くなるのかな?)
そんな事を考えていると杖とランタンの検査が終わったので、次は机の中から水晶を取り出し呪文を唱えると水晶が光り出した。
その水晶の光をハイポーションと凝固薬と妖精の目薬にあててから杖とランタンと同じ様にチェック表に○を付けていった。
「いつもながら高品質な物をありがとうございます。料金はどうしますか?材料費などもいると思うので渡しましょうか?返済は月末で大丈夫ですので」
「いえ、材料ならまだまだ工房にありますし、必要な時は声をかけますので今回の分は全て返済にあててください」
「分かりました。それと次の依頼はどうしますか?よろしければ利益が良さそうな物を見繕ってきますが……」
あまり職員さんに迷惑をかけるのも気が引けたが依頼を張り出してある場所にには錬金術師や薬師が大量にいたので、その中に入って行くほどの元気はなかったので、すみませんがお願いしますと職員さんに頭を下げた。
職員さんも私もあの中にいくのは嫌ですねと苦笑しながらテテノが作った物を奥に運び、戻って来る時にいくつかの依頼を持って来た。
「ハイポーションと魔力回復薬の様な薬剤関係が五種類と冷蔵ボックスと冷風箱になりますが、大丈夫ですか?」
工房にある材料を考え言われた物は全部作れるのでテテノは礼を言ってから全ての依頼を受け取った。
少し借金の事について話そうと思ったが、並んでいるいる人達がまだまだいたのでまた時間がある時にしようと考え、テテノは錬金工房を後にした。
依頼の内容を見直し大まかな時間を計算し今からやれば日が変わる頃には終わるかな?などと考えているといつの間にか目の前に工房が見えていた。
そして工房の玄関に目を向けると大荷物を持った人物が座っている。
その人物に心当たりがあったのでテテノは声をかけた。
「……もしかして、お婆ちゃん?」
テテノが生まれてから数回しか会った事は無かったが、出会う度の衝撃が凄まじくテテノの脳裏にその姿が刻まれていた。
歳をとったいうよりは歳を重ねたという表現が良く似合う老婆の背筋はまっすぐに伸び、煙管を吹かせながら荷物の上に座っていた。
テテノの声に反応するとすっと立ち上がり近づき軽々とテテノを持ち上げた。
「テテノ!大きくなったね~」
テテノを高い高いをしながらその場でクルクルと回った。
流石にテテノも祖母に会えて嬉しかったがそれ以上に恥ずかしかったので祖母にどうしたのかを尋ねた。
今まで柔らかく優しい笑顔だった祖母が暗殺者も謝りそうな殺気を放ち言った。
「ん?テテノの母を殺しに来たけどいるかい?」
次回の更新は明日の八時か九時ごろです。
最近、フィットボクシング2をやっているんですが自分のリズム感の無さに絶望しています……




