第22話 武闘会!? 舞踏会っ!!
(ふおぉぉぉ……)
心のなかで、ヘンな感嘆の声を上げる。
あたしを迎えに来たという、豪奢すぎる二頭立ての馬車と、胸に手を当てお辞儀をするアウリウスさま。
いつもより豪華な軍服。黒……なことは変わりないけど、その縁取りに銀がつかわれていて、胸にあるダブルのボタンまで銀色。襟元からのぞくアスコットタイと腰のベルトは、濃いめの青。おそろいの、黒のコートまでついて、なんというか、落ち着いた色なのに、キラキラしく感じる。
そんなアウリウスさまが、「お迎えに上がりました」なんておっしゃるものだから。
あ、ダメ。ムダに心拍数が上がる。クラクラしそう。
「……おい。大丈夫か?」
「え? あ、はい。大丈夫です。大丈夫になります」
落ち着け自分。アウリウスさまにドキドキしてどうするのよ。
馬車のなかで、何度も深呼吸をくり返して冷静さを取り戻す……ようにする。
でないと。
(うおおおおおっ……!)
到着したきらびやかな王宮に、圧倒されてしまう。
というか、アッサリと圧倒された。
夜の闇のなかに浮かび上がるように、まばゆく光る王宮。ズララッと真っすぐに居並ぶ、赤い服の衛兵さんたち。王宮へと上がる階段には、これまた花のように美しいドレスの皆さま。エスコートする男性とともに階段を登りきれば、そこに待ち構えていた執事さまが、高らかに到着された方の名を読み上げる。
まるでそこは、夢のような、物語から抜け出してきたような世界で。
馬車から降りて地面に足を着けても、まだ、雲のなかをあるいているような、フワフワした気分になる。
「あの、アウリウスさま」
あたしの手を取って、エスコートしてくれようとしてくれている彼に声をかける。
「あたし、おかしなところ、ないですよね」
その別世界のような華やかさに、急に不安になる。
「問題ない。どこからどう見てもローゼリィ嬢にしか見えない」
いや、まあ。姿かたちはそうなんですけど。
「気にするな。お前は堂々と、おおらかに構えていればいい。あとはオレや殿下、ルッカがなんとかする」
エスコートと言うには不自然なほど力を込めて手を握られた。
励ましてくれたのかな?
「……ありがとうございます」
返事はなかったけど、イヤな気分にはならなかった。
「カルティミラル公爵令嬢、ローゼリィ・カルティミラさま、ご到着ーっ!」
名前が読み上げられた。周囲の人の視線が一気に集まる。
(ひぃっ!)
思わず息を飲むけど、ここで怖気づいちゃいけない。
笑え、優雅に。歩け、あたし。
ドレスの裾を踏まないように慎重に。
「ローゼリィ」
人ごみのむこうから、声がする。
と同時に、人々がいっせいに道を開けた。
衆目を浴びながらこちらへやって来たのは、なんと、殿下。
真っ白なテイルコートに、これまた真っ赤なアスコットタイ。袖についているのは金のボタン。コートからのぞく懐中時計の鎖も、コートの縁取りも金という、なんというのか、派手。普通の人が着たら、絶対笑われそうな衣装だけど。
(す、ステキすぎる……!)
殿下だから着こなせる服装。殿下だからサマになる、その格好。
そんな殿下に、
「よく来てくれたね。今日は一段とキレイだよ」
なんて言われたら、もう…、もうっ!
ダメ。頭クラクラして、卒倒しそう。
実際、クラクラしてる。本当に、ここは現実の世界なの? 夢じゃなくって。
軽く挨拶を交わすと、殿下は他の来客を迎えるために離れていく。
と、そのすれ違いざまに、そっと髪に花を挿された。
「今夜のきみを、僕のこの花で彩らせてくれないか」
ほんの一瞬。でも耳元で甘く囁かれれば、顔どころか身体中が沸点を越えたように熱くなる。
(殿下、スゴすぎですっ!)
まるで、自分がお姫さまかなにかになったかのような錯覚を覚える。この舞踏会に訪れた、特別な女の子。
それはあくまで、お嬢さまのもので、あたしのものではないのに、勘違いをしてしまいそうになる。
舞踏会の会場となった広間は、すでにたくさんの人であふれかえっていたけど、それでも、狭さを感じさせないだけの大きさを持っていた。広間の突き当りには、大階段がゆるくカーブを描いて上の階へと続いてる。広間だけじゃない。そこからつながる部屋の扉はすべて開け放たれていて、そこにもたくさんの紳士淑女が集まっている。(でも空間には余裕がある)
王宮って、ホント、桁違いに大きくて広い。
広間の天井から吊り下げられたシャンデリアも、あたしが今まで見てきたなかでも、一番豪華で、一番大きい。それがいくつもあるのだから、驚くしかない。
(何人がかりで磨いたんだろう、あれ)
つい、そんなことに目がいってしまう。
広間の壁に沿って並べられ、飾られた花。あれもスゴくセンスがいい。あそこまで豪華に作ることは難しいけど、ちょっとぐらい真似て活けてみたいな。お嬢さま、喜んでくれそう。
それに、あっ、あそこのご令嬢の髪型っ! あれ、お嬢さまの髪でやってみたいっ! ああ、どうやって結ってるんだろう。もう少し近づいて観察したい。
ああ、あのご令嬢のドレスもいいわね。今度、お嬢さまに提案してみようかな。
「おいっ!」
フラフラッと歩き出しかけたあたしを腕を、アウリウスさまがグッと掴んだ。
「何してるんだ、お前は」
「え、ちょっとあの方のセンスを真似したくって。観察しに行きたいんですが、ダメですか?」
「バカか。お前は今、ローゼリィさまなんだぞ」
もっとドッシリと構えてろ。主に恥をかかせるつもりか。
やっぱり叱られた。
小間使い、侍女としてはせっかくの機会だから、よぉく観察して、最新のファッションを学んでおきたいんだけどなあ。
ちょっともったいない気分になる。
第二十二話です。
すんません。舞踏会のドレスコード、無視しました。
本来なら、殿下は黒のテイルコートに、白のタイ、白のウェストコートとまあ、ミッキーマウス状態にならなければいけないのですが。そこは、ゲーム世界ということで、派手に白にしてみました。白薔薇王子だしね(笑) アウリウスも派手ですよ。普通、こんな装いで舞踏会に来る軍人はいないと思う。
こういう時、「ゲーム世界」だからっていうのは、最高の免罪符だな。
これからもよろしくお願いします。




