↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/44

第21話 ドレスは乙女の戦闘服。

 「舞踏会……ですか」

 殿下から告げられた言葉を反芻する。

 「そうだ。明後日の夜。突然で申し訳ないが、参加してほしい」

 ですよね。だって、お嬢さまは、ローゼリィさまは殿下の婚約者ですもんね。参加しないなんて言えませんよね。

 「わかりました。参加させていただきます」

 こうなったら、腹をくくってがんばるしかない。

 自分なんかが参加していいのかって思わないでもないけど、それもこれも、お嬢さまや皆さまのためだ。精一杯、お嬢さまのフリをしなくっちゃ。

 「お前、ダンスは出来るのか?」

 横から口を挟んだのはアウリウスさま。

 その心配はごもっともだ。

 だって。

 「村の祭りでしか踊ったことがありません」

 「それ、威張って言うことかよ」

 エヘンッと、軽く胸を反らしたあたしに、ルッカさまがツッコんだ。

 「……特訓だ」

 へ?

 「舞踏会で、殿下に恥をかかせないためにも、今すぐ特訓だ」

 「うえええっ!」

 アウリウスさま、怖いですっ!

 そして始まる、さっそくのような猛特訓。

 殿下は、授業に参加されるために部屋を出ていかれたけど、あたしは仮病でズル休みさせられた。

 もちろん、ダンスの練習をするためである。

 「ルッカ、音楽を頼む」

 一緒に残ってくださったルッカさまが、ヴァイオリンを構える。

 ううう。逃げ場ナシ。

 「最初の一曲、ワルツだけでも踊れるようにならなければな」

 アウリウスさまに、グイッと腰を抱えられた。

 「最初は足を踏んでもかまわない。こちらのリードに合わせて、ステップを覚えろ」

 そう言われて、ルッカさまの奏でる音楽に乗るように動き出す。

 1、2、3。1、2、3……。

 前に引っ張られ、後ろに下がって、右へ、左へ。

 次にどう動けばいいのかわからない。おまけに、スカートをふんわりしてみせるために着けてるクリノリン。これのせいで足元がまったく見えない。

 で、どうなるかというと。

 1、2、ゴツッ! 1、ギュムッ! ドスッ!

 蹴る、踏む、そしてぶつかる。

 あわわわわ。

 やってしまったことに、焦れば焦るほど、次の攻撃をしかけてしまう。

 アウリウスさまのお顔を見るのが怖くて、見えない足元にずっと視線を落とす。

 「うつむくな。顔を上げろ、こっちを見ろ。笑え。お前に踏まれたぐらいでどうにかなる足ではない」

 そうは言っても、顔っ! 顔、怖いですっ! 絶対、怒ってるっ!

 

 ギュムッ……!


 ああっ、またやっちゃい……。

 「うわあああっ!」

 ナニコレ、ナニコレッ!

 しっ、視界がっ! 身体が回るぅっ!

 ストンと下ろされて気づく。あたし、アウリウスさまの足の甲に乗ったまま、グルンと一回転させられてた。

 「少しは気がほぐれたか?」

 え、いや。ほぐれるより、驚きでグラングランします。目まいしそう。

 「足りなかったら、もう一度だ」

 うえっ?

 今度は、腕と腰を引っ掴まれただけで、グルンッと回った。

 ひぃええええっ!

 右へ、左へ。

 踏めば踏んだだけ、グルングルン回される。

 ダンス酔いしそう。

 「あーあ。アレ、完全にオモチャにされてるね」

 ヴァイオリンを弾く手を止めた、ルッカさまの呟きが聞こえた。


 あたしがダンスの練習でグルングルン目を回している間にも、舞踏会の準備は着々と進められていく。

 殿下からは、「愛する君へ」なんていうメッセージ付きでドレスが贈られてきた。

 「殿下には、リュリのダンスは壊滅的だと報告しておく」

 散々、あたしをふり回したアウリウスさまは、ため息混じりにそう言っていた。

 まあ、彼の脛に散々青あざを作っただろうから、仕方ないっちゃあ仕方ないけど。

 舞踏会当日は、学園に登校しても、みんなソワソワと落ち着かなかった。

 だって。

 「この舞踏会で、ステキな殿方とお知り合いになれるかもしれないんですもの」

 「ローゼリィさまのように、ご婚約者さまがいらっしゃれば別ですけど」

 「学園卒業までに、出来ればそういう殿方と出会いたいものですわ」

 なるほど。

 学園を卒業となれば、ご領地に戻られる令嬢もいらっしゃる。王都に出てきて社交界に参加すれば、男女の出会う機会は増えるけど、それまでに親密な関係になっておいたほうが、何かと便利だろう。

 もしかすると、学園卒業と同時に、婚約、いや、結婚なんてこともありうるし。

 15の自分には、いまいちピンとこないけど、皆さま、それぞれの未来にむけて、いろいろと大変なのだろうと勝手に解釈する。

 その日の授業は午前で終了し、夕方から始まる舞踏会のために、家路につく。

 あたしも、お屋敷に帰ると、メイドさんたちに手伝ってもらいながら、殿下にいただいたドレスを身につける。

 ドレスは、お嬢さまの容姿に似合うような、サテン生地の目の覚めるような、鮮やかな青色だった。その上からかけられた繊細な白いレース生地がそのハッキリしすぎる印象を、いくぶんか柔らかく見せている。お嬢さまの白くほっそりしたデコルテを見せつけるように、襟ぐりは大きくゆったりと開いている。そこに、レースと同じ色合い、真珠のついたチョーカーを身に着ければ、豪華なドレスと相まって、お嬢さまの魅力を最大限に引き出してくれる。

 腕には肘まで隠れるような長い手袋。

 豊かなハニーブロンドの髪を青いリボンと真珠のついた髪飾りで結い上げる。ただのまとめ髪では素っ気なさ過ぎるから、その毛先は軽くカールをつけて、背中にむけて垂らしておく。

 いい香りのする扇子も持って鏡に映せば、完璧すぎるお嬢さまのお姿がそこにある。

 「まあ、これがあたし?」

 なんて、どこかのおとぎ話の主人公みたいに驚くヒマはない。

 今だって、胸を触れば、ベコンと音を立ててドレスはへっこむし、金の髪だって、魔法が解ければさえない砂色に戻ってしまう。

 この姿は見せかけ。 

 あたしは、お嬢さまの身代わり。

 「うぉっしゃあぁっ!」

 およそ舞踏会に出かけるにはふさわしくないかけ声をかけて、気合いを入れる。

 お嬢さまのために、手伝ってくださってる皆さまのために。

 あたしは、最高のお嬢さまを演じなくてはいけない。

 第二十一話です。

 お嬢さま、王子、乙女ゲームときたら、「舞踏会」でしょうっ!! ってことで、舞踏会。

 盆踊りしか知りませんが。

 攻略対象者それぞれと踊らせたら面白いかな~。話数作れるな~って下心は置いといて。それぞれの相手の特徴が出そうで、考えるだけで楽しいです。ライネルあたり、村の収穫祭的なダンスなんだろうな~とか、殿下はそれこそロイヤルって感じの優雅なダンスをしそうだし。アウリウスは、リュリをふり回して楽しんでますが。

 しばらく舞踏会回が続きますので、そのあたりも楽しんでいただければ。

 これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。