第17話 きみの名前は!?
名前、名前、なまえ……。
リスの名前を決めること。それがその日のあたしの宿題になった。
「名づけたら教えてよ」
そう殿下がおっしゃったからだ。
「面白いのを期待しているぞ」
「ボクは、かわいいのがいいな」
アウリウスさま、ルッカさまもヘンな期待をかけてくる。
それってイジワル? 下手な名前を付けにくくなったじゃないですかっ!
たかがリスの名前なのに、妙に気のはる仕事になってしまった。
夜、自分用の寝台で、リスを見ながら考える。寝台の上におろしても、リスはおとなしい。
キキッと鳴いて、軽く顔をこする。
う~ん。
リス……リス……、リス。
カッコイイのがいい? それともカワイイ?
ひねったほうがいい? それとも単純に?
栗色の毛並みだから、クリ? それとも背中の縞模様から、こげ?
鳴き声から、キキ?
リスの好物から、ドングリ? クルミ?
チビ? チョロ?
落っこちてきたから、ポトリ?
う~ん、う~ん。
ダメだ。コレと言った名前が思い浮かばない。
どれもこれも、違う気がする。
「ふあっ……」
眠い。
日中、街を楽しんだせいかな。瞼がトロンと重いや。
「おやすみ……」
眠ったら、いい案が出るかもしれない。
リスの背中を軽く一撫でしてから、潰れるように眠りに落ちた。
(……おい)
なんか声が聞こえる。
(呼んでいるのだ、返事をせぬか)
誰よ。上からな言葉だなあ。
ボヤンとした頭で、身体を起こす。
「あ、れ……? ここどこ?」
あたりは一面の乳白色の霧に覆われている。
……夢のなか!? なのかな。
眠い目をこする。声はいったい、どこからしてるんだろう。
(ここだ)
ここだって……。えっ? ええっ?
「うわあああっ!」
めっ、目の前に、おっきな白い獣っ!
犬とかじゃない。獅子に近い風貌。ふさふさとしたたてがみは、時折光を弾いて煌めいている。鋭い眼光は、ルビーのように真紅だ。
まるで、あたしがミサキさまの守護獣で想像した姿ソックリ。
まさか……、ね。
実際の守護獣が目の前に現れるなんて……。
(その、まさか、だ)
「うえええええっ!」
考えたことを読み取られたことより、その答えに驚いた。
「しゅっ、守護獣っ?」
うそうそうそうそ。そんなの、ありえないっ!
だって、あれはミサキさまのもとに現れる聖獣だしっ! あたしなんかの夢に出てくるわけないしっ!
(夢とはいえ、お主の声はうるさい。少し抑えろ)
あ、はい。すみません。
夢のなかで、守護獣に叱られた。
(お主が想像したのが、この容姿だったのでな。こうして現れたが、本来はもっと違う姿だ)
はあ。そうなのですか。
確かに、今の守護獣さまは、あたしの想像と寸分の違いもなかった。
というか、どうして、あたしの夢に?
(お前が悩んでいるのが聞こえたからな)
うえっ? リスの名前程度の悩みで?
もっと高尚な、大変なことにこそ、お力を使われた方がいいのでは?
(いや。名を決めるのも、大事なことだ)
……はあ。そうですか。
守護獣さまがおっしゃるのなら、そうなのかもしれない。
(お主に、この名を授けよう)
ノソリと、守護獣が動く。そして、その大きな脚をあたしの顔の前にかざす。
「うわっ!」
一瞬、その脚が光る。
「……セルヴェスティ? セルヴェ?」
頭に言葉が浮かんだ。
「私の名だ。これをもってお主の悩みを解決するがよいぞ」
ちょっ、ちょっと待ってくださいっ! リスの名前に、守護獣さまの名前をいただくんですかっ?
恐れ多いというか、大胆というか。
(構わぬ)
フッと守護獣が微笑んだ気がした。
(ではな。リュリ)
乳白色の霧に溶けるように、守護獣の姿が消えていく。
それと同時に、あたしに再び睡魔が訪れる。
「んっ……」
まぶたのむこうに明るさを感じて目を覚ます。
寝台の上には、尻尾を丸めて眠るリス。その背中を少し撫でようと手を動かす。
ボンヤリした頭に、その名前が浮かぶ。
「……セルヴェ?」
ピクリと、リスが身じろぎをする。
かすかに、その毛並みが金色に光ったように見えたのは、きっと差しこんだ朝日のしわざだろう。
(うにゃあ……)
名前が決まったことに軽く満足を覚えながら、再び目を閉じる。
あとちょっとだけしたら起きる。
この名前、アウリウスさまやルッカさまは、どんな反応をみせるかな。
笑う? 感心する? それとも。
想像するだけで楽しい。おかげで、ちょっとだけ寝坊をしてしまった。
第十七話です。
ペットのお名前。
だんごの実家では犬を飼っていたのですが、ずうっと名前は「コロ」でした。
犬=柴犬=コロという図式があったようで。
今の家では飼ってませんが、もし飼うとするなら「コロ」なんだろな。そして柴犬(笑)
これからもよろしくお願いします。




