第七話「魔物たちの敬意」
「……お茶、飲む?」
俺が尋ねると、魔物たちは一斉に尻尾を振った。
「茶神様……本当に大丈夫なのですか?」
エルフが警戒しながら尋ねる。
「たぶん」
「たぶん!?」
俺はカップを地面に置いた。
すると、先頭の魔物がゆっくり近づいてきた。
クンクン。
そして、お茶には目もくれず、荷車の方を向いた。
「ん?」
コツン。
卵が鳴った。
その瞬間、魔物たちが一斉に頭を下げた。
「……え?」
門番が声を漏らす。
「おい、あの魔物たち……荷車に向かって跪いているぞ」
エルフの顔色が変わった。
「まさか……この卵に?」
「卵?」
俺は荷車を振り返った。
コツン、コツン。
卵がまた鳴った。
魔物たちはさらに深く頭を下げる。
「おいおい。そんなにお茶が欲しいのか?」
「違います!!」
エルフが即座に否定した。
「どう考えても卵に反応しています!」
「そうなのか?」
そのとき、先頭の魔物が一歩前に出た。
そして、俺の前に何かを置いた。
黒い石のようなものだった。
「これは?」
エルフが息を呑む。
「魔石……しかも、かなり高純度のものです」
「へえ。くれるのか?」
魔物がうなずく。
「ありがとう」
俺は魔石を受け取った。
すると、魔物たちは満足したように立ち上がった。
「……帰るのか?」
魔物たちは一度だけ卵を振り返り、森の方へ歩き出した。
門番たちは誰も動けなかった。
やがて、一人がつぶやいた。
「魔物の群れが……人間に贈り物をして帰った……?」
エルフは卵を見つめていた。
「茶神様。この卵は一体……」
「さあ?」
俺はカップを持ち上げた。
「それより、お茶が冷めちゃったな」
コツン。
卵が鳴った。
「……お前も飲みたいのか?」
もちろん、返事はなかった。




