第六話「戦場の一服」
「全員、戦闘態勢!!」
門番たちが武器を構える。
魔物の群れが迫ってくる。
エルフは剣を握りしめた。
「茶神様! 本当に下がってください!」
「いや、ちょっと待って」
「何ですか!?」
俺は自分のステータスを開いた。
「攻撃スキル……なし」
「防御スキル……なし」
「茶葉鑑定、湯温調整、抽出時間操作……」
「茶神様!?」
「お茶を淹れるしかできないのか」
「今はそんなことを確認している場合ではありません!」
俺は荷車から茶道具を取り出した。
「まあ、とりあえず淹れてみるか」
「ええっ!?」
エルフが叫ぶ。
門番も叫ぶ。
魔物はもう目の前だ。
俺は湯を沸かし、茶葉を入れた。
「茶葉鑑定……」
香りを確かめる。
「湯温調整……」
湯を注ぐ。
「抽出時間操作……」
そして、一杯のお茶ができた。
「ふう……」
その瞬間。
魔物の群れが止まった。
「……ん?」
先頭の魔物が鼻をひくつかせる。
一匹、また一匹。
魔物たちは俺の方を向いた。
エルフが叫ぶ。
「茶神様! 危険です!!」
魔物たちはゆっくりと近づいてくる。
そして。
俺の前で、一斉に伏せた。
「…………」
門番たちが固まる。
エルフも剣を構えたまま動かない。
俺はカップを見つめた。
「……そんなにいい香りか?」
そのとき、先頭の魔物が口を開いた。
「グルル……」
「え?」
エルフが青ざめた。
「まさか……魔物が言葉を……?」
魔物は俺に向かって、もう一度頭を下げた。
「グルルル……」
俺には、何を言っているのか分からなかった。
ただ一つ。
どうやら、こいつらは戦いに来たわけではないらしい。
「……お茶、飲む?」
魔物たちは一斉に尻尾を振った。
門番がぽつりと言った。
「……何者なんだ、あいつは」
いや、俺が聞きたい。




