第五話「門前の騒動」
「……なんだ、これ?」
古竜と別れた俺たちの前に、一台の荷車が置いてあった。
「古竜が用意してくれたのでしょうか?」
「ありがたいな。よし、卵を載せよう」
ずしり。
「お、重い……」
「茶神様、私が引きます」
「頼む」
「……本当に私が引くのですね」
「他に誰がいる?」
エルフは黙って荷車を引き始めた。
しばらく歩くと、大きな城壁が見えてきた。
「あれが人間の街です」
「よし、飯にしよう!」
街の門に近づくと、門番が立ちはだかった。
「止まれ! 身分証を見せろ!」
「持ってません」
「何? どこから来た?」
「草原の向こうからです」
「怪しいな……。そちらの女は?」
「エルフです」
「見れば分かる!」
門番は荷車に目を向けた。
「その荷物は何だ?」
「卵です」
「卵?」
「はい」
「……開けてみろ」
「嫌です」
門番の顔が険しくなった。
「貴様、何者だ?」
「ただの旅人です」
「ならば荷物を見せろ!」
そのとき、もう一人の門番がエルフを見て言った。
「おい、そっちの女。そいつはお前の兄か?」
「違います!!」
エルフが即答した。
「兄妹ではありません!」
「そうか。なら夫婦か?」
「もっと違います!!」
……そんなに否定しなくても。
その瞬間だった。
「伝令! 魔物の群れが接近しています!!」
門の上から兵士の声が響いた。
門番たちが一斉に振り返る。
「数は!?」
「十……いや、二十以上!」
城壁の向こうから、地響きが近づいてくる。
エルフが剣を抜いた。
「茶神様、下がってください」
「え? 何が来るんだ?」
「魔物です!」
「おいおい、街に入る前からかよ……」
門番が叫んだ。
「全員、戦闘態勢!!」
エルフは荷車の前に立った。
「卵には指一本触れさせません」
……いや、俺のことも守ってくれよ。




