第十三話「お茶の作り方」
「なあ、エルフ。この茶葉って、どうやって作ってるんだ?」
「茶樹から葉を摘み、蒸して、揉んで、乾燥させます」
「蒸すのか」
「はい。こうして作ったものを、私たちはお茶と呼んでいます」
主人公は手元の茶葉を眺めた。
「なるほど。緑茶に近い製法だな」
「ミドリチャ?」
「いや、こっちの話だ。お茶にはいろいろな種類があるんだよ」
主人公は少し考えてから話し始めた。
「例えば、緑茶、烏龍茶、紅茶。これらは基本的に同じ種類の植物から作れるんだ」
「えっ? 同じ植物なのですか?」
「ああ。大きな違いは、茶葉をどの程度酸化させるかなんだ」
「酸化……?」
「茶葉にはカテキンというポリフェノールが含まれている。葉を摘むと、酵素の働きで成分が酸化していく。それによって色や香り、味が変わるんだ」
主人公は地面に枝で三つの線を描いた。
「緑茶は、摘んだ葉を早い段階で加熱して、酸化に関わる酵素の働きを止める。日本の緑茶なら、蒸す方法が一般的だ」
「では、紅茶は?」
「逆だ。茶葉を萎れさせたり揉んだりして、酸化を進めてから乾燥させる」
「揉むことにも意味が?」
「ある。葉の細胞を傷つけて、成分と酵素が反応しやすくするんだ」
「では、烏龍茶は?」
「緑茶と紅茶の中間くらい。酸化の程度を調整する」
エルフは驚いた顔で茶葉を見つめた。
「同じ葉から、そんなに違うお茶ができるのですか……」
「そういうことだ」
主人公は得意げに説明していたが、ふと我に返った。
「まあ、知識として知っているだけなんだけどな」
「実際に作ったことはないのですか?」
「ないよ。飲むのは好きでも嫌いでもないし、わざわざ作ろうと思ったこともなかった」
「それなのに、そんなに詳しいのですね」
「まあ、学校で習ったり、本で読んだりした知識だよ」
主人公は改めてエルフの茶葉を手に取った。
「それで、今の話を聞いて気になったんだけどさ」
「はい?」
「このお茶、蒸す時間はどうやって決めてる?」
「昔から伝わる時間です」
「揉む強さは?」
「職人によって多少違います」
「乾燥は?」
「天候を見ながら、頃合いを判断します」
主人公は少し黙った。
「……なるほど」
「何か問題でも?」
「いや、問題というか。もっと良くできるかもしれない」
「良く、ですか?」
「例えば、蒸す時間を変えたらどうなるか。揉む強さを変えたら? 乾燥の温度を一定にしたら?」
エルフは目を丸くした。
「そんなことを試したことはありません」
「じゃあ、試してみよう」
主人公は茶葉を見つめた。
知識として知っていたことが、目の前にある。
今なら実際に試せる。
「……面白くなってきたな」
そのとき、主人公の視界に文字が浮かんだ。
【茶葉鑑定 Lv.2】
【新たな知識を確認しました】
主人公は思わず目をこすった。
「ん? 今のは……」
「どうしました?」
「いや、何でもない」
どうやら、自分にはお茶について調べるだけでなく、実際に何かをする力もあるらしい。
「よし。まずは茶葉を加工する道具が必要だな」
「道具なら、街で探せるかもしれません」
「そうか。じゃあ街に行こう」
エルフは少しだけ笑った。
「ようやくですね」
「……何か言った?」
「いいえ。何も」
こうして一行は、今度こそ街へ向かうことになった。




