第7話 囚われの街
ギルドマスターを美稀に預けた悠陽と凪、そして騎士達は正門のすぐそばまで来ていた。
街のすぐ目の前まで魔獣達が迫っていた。
「おいおい、なんでこんなに魔獣が居るんだ!」
「おぉ〜、大量〜!!」
「感心してる場合じゃ無いよ、悠陽」
凪が悠陽や騎士全員に身体強化の魔法をかける。
「す、すごい。力が溢れてくるみたいだ!」
騎士達が感心している間に、悠陽は魔獣の大群に飛び込んだ。
「これでしばらく、肉食べ放題だぁー!!」
「こらー!悠陽!!森の木あんまり切り倒しちゃだめだよ!!」
「そ、そんな事気にしてる場合か??」
騎士達も2人の言動に戸惑いながら、魔獣の群れに飛び込んだ。
魔獣の9割方は、悠陽と凪が倒した。
「き、君達本当に凄いね」
「Aランク冒険者ですから」
「そうか、そうだね」
悠陽達が街周辺の魔獣を倒している内に、騎士団長が屋敷に侵入していた不審者を捕まえ、騒動はひとまず収束した。
ギルドと領主様から、お礼にと大金を貰った。
魔獣の討伐報酬と、素材を売ったお金は別で貰えた。
お財布は潤って、悠陽のアイテムボックスの中には、何日かければ食べ終わるか分からない程のお肉が収納された。
凪は領主様の前で「いくらなんでも貰いすぎです!」と、遠慮していたが大人達に「子供が遠慮するもんじゃ無い」と丸め込まれていた。
「せめて、この街で売上貢献して出ようか」
「そうしましょう!凪君!!」
街でもう一泊して、早々に再開されたお祭りで存分にお買い物をしまくった後、街を出た。
街を出てしばらく歩いていると、小さな女の子が1人、うずくまって泣いていた。
「どうしたのですか?お母さんかお父さんは??」
見つけてすぐに美稀が、女の子に声を掛けた。
「みんなどっか行っちゃった」
美稀は困ったように凪を見た。
「何処の街から来たかわかる?」
「あのね、あの、ノルデ、ノルディスって所」
「ノルディスの街なら、丁度僕達が向かっている途中にある街だから、一緒に行こうか」
「いいの……?」
「勿論ですよ!一緒に行きましょう!お母さん達心配してますよ!!」
「うん!ありがとう、お姉ちゃん!お兄ちゃん達!」
リアナと言う女の子は、ここ数日、まともに食事を取れておらず、相当お腹が空いていたみたいだった。
1日目は、まだ日も高いが野営の準備をして4人でバーベキューをした。
案外塩だけでも、料理は出来るものだ。
3日程かけてノルディスの街に着いた。
街の門で、門番の兵士と女性が言い争いをしている。
「ママだ!ママぁー!!」
リアナは笑顔で手を振りながら、母親の胸の中に飛び込んだ。
「リアナ!よかった、無事で。心配したのよ!?」
「ごめんなさい、ママ。でもね、このお兄ちゃん達が一緒に街まで来てくれたの!楽しかった!!」
「そう、よかったわね。皆さんありがとうございました」
母親は悠陽達に、深々と頭を下げた。
「いえいえ!そんなお礼を言われる程の事はしてませんよ!!」
「そうですよ!通り道でしたし、お顔上げてください!!」
「いえ!ここ最近この街周辺は、治安が悪くなっていますので、娘1人だと多分無事には戻れなかったと思います。本当にありがとう、お礼をしたいのだけれど……」
凪と美稀は断ったが、半強制的に家へお邪魔する事になった。
ご飯をご馳走になって、部屋まで用意してくれていた。
「お気遣い頂いてすみません」
「いいえ、本当に感謝しているのです。ありがとう」
夜、寝静まった頃。
悠陽と凪が眠る部屋で、ガサガサと音が聞こえて悠陽は重い瞼を少し動かした。
リアナの母親が、ボロボロと涙を流しながら悠陽達の荷物を漁っていた。
悠陽は眠気に負けて、そのまま眠った。
翌朝、凪と悠陽は用意してもらった朝食を食べていた。
「昨日、俺たちの部屋来てたか?」
「あら、何のことかしら?」
「何言ってんの、悠陽。寝ぼけてたんじゃない?」
「そうかなぁ?てか、美稀とリアナはどこ行ったんだ?」
「おつかいに行ってくれているわ」
「そうですか。昨日も思ったんですけど、お母さんのご飯凄く美味しいですね。お店してもやっていけそうです」
「あら!うれしい、ありがとう。実はね、お店やってたのよ。少し前までは、でも……」
「でも?」
「ううん、なんでもないわ!さっ、ご飯食べて!いっぱい作ってあるから!」
「ありがとー!うめぇ!!」
外からバタバタと足音が聞こえて、勢い良くドアが開いた。
涙を流して、息を切らしているリアナが立っていた。
「お姉ちゃんが!!お姉ちゃんがっ!!」
「なんだー?どうした??」
「お姉ちゃんっ、リアナの事庇って、お姉ちゃん逃がしてくれて。ごめんなさい、ごめんなさいっ」
「大丈夫、大丈夫だから落ち着いて。何があったの?」
「知らない人がリアナが少し1人になった時に、連れて行こうとして、その時お姉ちゃん助けてくれて、でもそしたら、周りからいっぱい人が出てきて、それでお姉ちゃんが逃がしてくれて……うわーん」
リアナは声を上げて泣き始めた。
そんなリアナの頭を凪が優しく撫でて励ました。
「そっか、分かった。よく頑張ったね、教えてくれてありがとう」
「俺達は美稀の所に行ってくるから、お前は母さんと家に居ろよ」
「うん……」
「貴方達、助けに行く気!?多分そいつらは……」
「関係ねぇよ。俺には」
「全部、取り戻しに行こうか」
「あぁ」
「お母さん、この街の領主様が賊に捕えられているんですよね。それから賊達が、街で暴れるようになった」
「貴方、何でそれを……」
「少し調べさせてもらいました。それと、お母さんも脅されているんでしょう、賊に。だから僕達を無理にこの街に留まらせた」
悠陽と凪が家を出ると、母親はリアナを抱きしめながら泣き崩れた。
「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい……」
「ママ……」
悠陽と凪は家を出て街を歩いていた。
「何処行く?」
「まずは領主の救出が先かな。領主と一緒に、この街で腕の立つ兵士も捕まってるはず。戦力増えるよ」
「おけー、じゃっまず領主な。ついでに街、多少壊してもいいか了承取らないとだしなぁー」
「いや、少しは壊さないように戦おうよ。この前怒られたばかりじゃん」
「クソ怒られたなぁ、でもあれは俺のせいじゃ無いぞ。魔獣が倒れて壊れただけなのに」
大きな屋敷に着くと、庭に数十人の賊が見張りをしていた。
「あいつらどうする?無視して行くか?」
「いや、倒して行った方が良い。後から挟み撃ちされたら戦いづらいし」
「おっけー!じゃっ」
悠陽は火球を落とそうと構えると、領主邸の上空には大量の火球で埋め尽くされた。
「悠陽!?さっき話したばかりだよ!!ちょっとは壊さず戦うやり方考えてって!!」
「はぁい」
悠陽が拗ねて砂をイジイジしている間に、凪がすぐに賊を倒して縛り上げた。
全員の顔に水魔法で水を纏わせて、気を失わせた。
「よし、行くよ。悠陽」
「はぁい」
2人が屋敷の中に入ると、人はおらず異様に静かだった。
「中には人居ないね」
「だなぁ」
少し歩くと大広間に出て、領主と使用人、兵士16人が捕まっていた。
「大丈夫か?」
悠陽と凪は、次々に縄を外していく。
「君達ありがとう。だが、賊がすぐ戻って来る。早く逃げなさい」
「一応外の奴らは片付けてるぞ」
「そ、そうか。ありがとう」
「領主のおっさん、俺許可貰いに来たんだ!」
「ちょっと、悠陽!!」
「なんだい、言ってみなさい。助けられた身だ、応じられものなら応じよう」
「今から仲間助けに行くんだけどさ、ついでにこの街にいる悪い奴らとっ捕まえてあげるから、建物壊れても良い?」
悠陽があっけらかんと物騒な事を言うので、領主様は少し驚いていた。
「住民に被害が出ないのであれば良いだろう。だが、なるべく壊れんようにはしてくれないかな……この通り賊にほとんどの財を奪われてしまって、財政難なんだ」
「あー、それはなんとかなるはずだから安心めされよ!ワーーハッハー!よし!じゃぁ、行ってきます!!」
窓から悠陽が飛び出して行った。
「あー!悠陽!!……1人で行っちゃったよ」
「君は良いのかい??」
「まぁ、悠陽が1人で負ける事も無いと思うので大丈夫なのですが、被害は増えると思います。考え無しなので……」
「そ、そうか」
「あの、少しお話が」
「なんだい?」
「兵士の皆さんは街の住民を避難させてくれませんか?その際、不審な動きをする人がいないか確認してほしいんです」
「わ、分かった。今すぐ頼む」
兵士達の大半は領主の指示を受け、慌ただしく部屋を出て行った。
「だが、住民に紛れ込んでいる確証はあるのかい?」
「いえ、確証はありません。ただ、少し気になることがあるんです」
「気になること?」
「ここに捕まっていた兵士の方々は、かなり腕の立つ方ばかりですよね?」
「あぁ、そうだよ。騎士に推薦されるほどの者達だ」
「それほどの実力者が何人も揃っているのに、領主様や使用人の方々まで捕らえられている……少し不自然だとは思いませんか?」
「……確かに」
「もちろん、盗賊達がそれ以上に強かった可能性もあります。でも、屋敷の警備や兵士の配置を知っている人間が、盗賊達に情報を流していた可能性もあります」
「……内通者が居るということか?」
「はい。もしそうなら、盗賊達が街を支配した後も、住民の動きを監視するために仲間を紛れ込ませているかもしれませんよね」
「なるほどな……」
「ですから避難誘導と並行して、不審な動きをする人がいないか確認してほしいんです。盗賊達の隠れ家に繋がる手掛かりが見つかるかもしれません」
「分かった。兵士達にもそのように伝えよう」
領主は近くに控えていた兵士に指示を出した。
「ありがとう、ナギサ殿。君達のおかげで、この街に巣食う闇を暴けるかもしれん」
「いえ……僕は、この街に来た時から何かおかしいとは思っていたんです。それなのに、仲間に被害が出るまで見て見ぬふりをしようとしていました。お礼を言われるような人間じゃありません」
「いや、そんなことはない」
領主は静かに首を横に振った。
「君がどういう理由で動いたのかは関係ない。私らがこうして助けられた事が紛れもない事実。君達が来てくれなければ、今もここに囚われたままだっただろう」
「……」
「私らにとって、君達は助けに来てくれた恩人だよ。それだけは変わらんよ。本当にありがとう」
領主が深々と頭を下げると、周囲の使用人達もそれに倣った。
「ぼ、僕は下の様子を見て来――」
バゴーーンッ――
外から爆発音が轟いた。
「な、なななんだ!?」
領主様は驚きで腰を抜かしてしまった。
その場にいた皆が様子を見るため、窓に近づく。
凪は一人、頭を抱えていた。
「な、なんだあれは!?一面吹き飛んでる!!」
領主様は使用人に両脇支えられながら窓の外を見て、目が飛び出る程驚いていた。
「ほんっとに申し訳ありません!多分さっきの悠陽の仕業です!!」
「あ、あれ程までとは思わず……許可してしまった……」
領主様はへなへなと、座り込んでしまった。
「本当にごめんなさい!!」




