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第5話 お祭り



美稀(みずき)と別れて屋台を見る事になった悠陽(はるひ)と凪(なぎさ)は、広場で街を眺めていた。


「悠陽(はる)、僕達はどうしよっか?何か見たい物ある?」


「魔道具屋行こうぜ」


「良いね、僕も見てみたい。行ってみようか」


魔道具の屋台が並ぶ通りに行くと、少し怪しい雰囲気のある魔道具屋もあった。


「凪!ポーションあるぜ。美稀に毎回治してもらうのもあれだし、多少買っとくか??」


「そうだね、買っておこうか」


凪がポーションを鑑定して、怪しい物で無い事を確かめてから数本買った。

左右に並ぶ屋台を見ながら歩く。


「おい!凪、見ろ!スッゲー古そうな本!!」


「本当だ、魔法書かな」


「そうだよ、これは魔法の歴史や基礎的な使い方が載っている本だよ。だけどね、この魔法書の後半にはどんな学者にも読めない文字が書かれていてね」


「この世界の文字じゃないという事ですか?」


「多分そうなんだろうね。見た事も無い文字だよ」


「少し中を見せてもらっても良いですか?」


「あぁ、もちろんだよ」


凪は魔法書を手に取って、パラパラと目を通す。


「これ買います。あの!この本に書かれている文字が載っている書物はこれだけですか??」


「そこに並んでる、8冊の本にも同じ文字が書かれているよ。後は国の蔵書室にも何冊かあると聞いた事がある」


「そうなのですか」


8冊の本を並べると、5冊は属性毎の魔法書で、後の3冊は魔術具や錬金術などが書かれた本だった。


「……これ全部買います」


「なんて書いてあるか分かるのかい?」


「あ、いえ。少し気になったので調べてみようかと思いまして」


「そうかい、お偉い方達が調べても分からなくて平民まで流れてきたんだ。大変だろうけど、頑張れよ!分かったら教えてくれ!!」


「はい!ありがとうございます!!」




合計9冊の本を店主から受け取り屋台を離れた。


「凪、なんて書いてあるのか分かったのか??」


「うん、多分あれは僕達の居た世界の言葉だよ。後で調べてみよう。もしかしたら帰る手掛かりがあるかもしれないし」


「そうだな」


「でも、英語と日本語以外も書いて居たから、優佑兄(ゆうにい)とは合流しないと全部は読めないかもなぁ。会長と逢えればすぐ翻訳出来るだろうけど」


「そういや、三貴(みき)君って留学してたよな」


「うん!会長、本当に凄いんだよ!!ほとんどの言語分かるんだ!!」




そんな話をしながら歩いていると、雑貨・魔具通りに来ていた。

アクセサリーなども置いている、魔道具屋の前で悠陽が足を止めた。


「なぁ、これ欲しい」


悠陽が手に取ったのは、兎柄の懐中時計。

開くと時計がカチカチと音を鳴らして時間を刻み、もう片面には写真を入れておけるようだった。


「なんかそれ、うさぎがお月見してるみたいだね」


「俺もそう思った。兄ちゃんうさぎ好きだっただろ?それに、こっち来て何日経ったか忘れたけど、もうすぐ兄ちゃんの誕生日だし」


「うん!喜んでくれると良いね!!はぁ、優佑兄(ゆうにい)何処に居るんだろう〜」


「兄ちゃんなら大丈夫!頭良いし!!俺より運動神経良いし!どっかで元気にしてる!!」


「それもそうだね」




悠陽と凪が和やかな会話をしていると、隣の屋台の店主から声をかけられた。


「おーい、ボウズ達!これどうだい!」


「なんですか??」


「これはなぁ、魔法の威力が上がるペンダントに、こっちは致命傷を受けた時、身代わりになってくれるペンダントだ!冒険者だろ、持ってて損はないぜ」


「へぇ、良いですね。ですが威力が上がるって、どれくらい上がるのですか?」


「そうだなぁ、倍ぐらいにはなるんじゃねーか?今まで試した奴らは倍にはなったぞ。元々しょぼい奴はそれなりにしかならねぇがなぁ!」


「カッケェ!!欲しい!!おっちゃんいくらだ!?」


「悠陽(はる)は要らないでしょ。ただでさえ化け物なのに……」


「金貨20枚だ」


「高い……致命傷を防ぐ方はいくらですか?」


「金貨50枚だ」


「おっちゃん!威力上げるの3つと、致命傷避けるの2つ買うからまけてくれ!!」


「ちょっと悠陽(はる)!?た、高いよ!」


「おう!!気前良いな、ボウズ!!じゃぁ、値段は変えねぇ代わりに、サービスで何でも一個持ってけ。ペンダントじゃなくても良いぞ、好きなの選びな」


「良いのか!!うーん、そうだなぁ」


「ちょっと悠陽(はる)、そんなにお金持ってるの??金貨160枚だよ!?」


「大丈夫大丈夫ー!」


屋台の隅にポツンと置かれた1つの魔道具が、悠陽の目に留まった。


「おっちゃん、これなんだ??」


悠陽は球体の豪華な飾りが施された魔道具を指差した。


「それかい、お目が高いねぇ!これは探し物が見つかる魔道具だよ。物でも人でも何でも見つけられると言われている。けどよ、これを使うには膨大な魔力を魔道具に込めないと使えなくてなぁ。使える者はそうそう居ないんだ。だからまぁ、観賞用だな!」


「探し物……その膨大な魔力ってどれくらいの魔力が必要なんだ?」


「そうだな、最近じゃ使えた奴は居ねぇから詳しい事は分からんが。魔導士5人分以上の魔力は必要なはずだ」


「5人分……」


「おう、これは相当古い魔道具だからよ。噂程度にしか分からんのだ。すまんな」


「いや、これもらって良いか!?」


「おぉ、良いぞ!じゃぁその魔道具と、魔法の威力が上がるペンダント3つに、致命傷を肩代わりするペンダント2つだな」


「おう!!」


「じゃぁ、金貨150枚だ。10枚はまけとくぜ」


「やった!ありがと、おっちゃん!!」


「あ、あぁ、ちょっと待ってくれボウズ」


「なんだ??」


「これ持って行きな。こんな気持ちの良いお客は初めてだ。ガラの悪い冒険者ばかりだったからな!」


店主は手のひらに収まる程に小さな巾着を悠陽に渡した。


「いいのか!?ありがとう!!」


「ありがとうございます。すみません、うるさくて」


「いいんだ、困った時に使いな」


悠陽は店主に手を振って、その屋台から離れた。




「良いおじさんだったね、悠陽(はる)」


「あぁ!物くれる人は良い人だ!!」


「その考え方本当やめなね。悪い人に騙されるよ」


「大丈夫だって!凪は心配性だなぁ!!てか、これなんだろうな」


悠陽が店主から貰った巾着を開けて中身を取り出すと、キラキラとオーロラに光る石が入っていた。


「わぁ、凄い綺麗だね。困った時に使いなって言ってたし、何かの役に立つ物ではあると思うんだけど」


「まっ、今は良いか!別の通りも行ってみようぜ!!」


「うん!そうだね!」


「なんか、昔行った花火大会思い出すよなー」


「そうだね、悠陽(はる)と優佑兄(ゆうにい)と紫苑(しおん)君の4人で行って、毎回逸れるからいっつも怒られてた記憶がある」


「そうだっけ?」


「そうだよ!?悠陽(はる)が優佑兄(ゆうにい)にあれ食べたいって買わせに行って、その事忘れてすぐに違う物に目移りして移動するんだもん。そりゃ逸れるよ!!」


「ははー!そんな事もあったっけなぁー!!」


「その言い方、絶対覚えてるじゃん!」




その後も、何軒も出店を回り沢山お買い物をした。


「ちょっと、買いすぎたね……」


「そうだなー、荷物は空間魔法で仕舞えるからって調子に乗ったなー」


「本当にねー。てか、悠陽(はる)。よくあんなにお金持ってたね?買ってもらっちゃったし」


「お前らが調べ物してる時とか、俺、暇だからずっと依頼受けてたからな」


「そうだったの??」


「うん。早く、魔法使いこなせるようになりたかったし。それに金はあった方が良いと思ってさ」


「そうだったんだ、ありがとう」


「なんで、凪がお礼言うんだよ」


「だってぇ、それって僕達の為ってのも入ってるでしょ〜??」


「……まぁ、それも無くは無いけど」


悠陽は少し顔を赤くして目を逸らした。


「はははっ!照れた!!そうだ、僕達も衣類の方行ってみようか。着替えはあった方が良いしね」


「あぁ、そうだな」




衣類の出店が立ち並ぶ通りを歩いていると、紙袋を両手いっぱいに持ち、箱を積み上げ前も見えていないであろう美稀と合流出来た。


「買い過ぎだろ」


悠陽が空間魔法の練習で作ったマジックバッグに、入りきらなくなる程買い込んだようだ。

合流して早々、悠陽は美稀の荷物を空間魔法で仕舞う。


「ありがとうございます!悠陽君!!おふたりとも、お買い物は終わったのですか?」


「うん、大体はね。美稀さんは?」


「私も大満足です!!久しぶりに可愛い物が沢山見れて、すっごく楽しかったです!王都にはもっともっとキラキラした物があるそうですよ!!行ってみたいです〜」


「へぇ、そうなんだ。王都か、行ってみようか王都」


「悠陽君!良いのですか!?行きたいです!!」


「ふふ、楽しめたみたいで良かったよ」


「はっ!す、すみません!はしゃいじゃって。そろそろご飯食べに行きますか??」


「そうだね。食べ物通りへ行こうか」


「おぉー!お腹すいた!!」




食べ物通りに着くと、3人は色んな食べ物を食べて食べて食べまくって、お祭りを存分に楽しんだ。

夜には、宿で二部屋取っていた一部屋に集まって、買った物の整理をしていた。

空間魔法で仕舞っていた物を出すと、あっという間に2人部屋は足の踏み場が無い程に埋め尽くされた。


「本当に買いすぎだな」


「ご、ごめんなさいー!!どれも素敵で欲しくなってしまって!!」


「美稀さんは、お洋服とかアクセサリーが沢山だね」


「はい!あ、そうだ。お二人の分も買いました。良かったら着て下さい!」


「おう、ありがとー」


「ありがとう。僕達じゃ服なんて適当に着るだろうから、有り難いよ」


「良かったです!!」




美稀から大きな紙袋を渡されて、悠陽はペンダントを渡した。


魔法の威力が上がるペンダントと、致命傷を肩代わりしてくれるペンダントを一つずつ2人に渡した。


「多分一回しか防げないと思うけど、気休めでも持ってたら安心だろ」


「あ、ありがとうございます!悠陽(はるひ)君!」


「ありがとう、悠陽(はる)」


悠陽はもう一つ、アクセサリーを取り出した。

アクセサリー通りで買った、魔石で作られた髪飾り。


悠陽が美稀に渡すと、美稀は耳まで赤くして俯いてしまった。


「これ、少しだけど魔力溜めておけるらしい。美稀に似合うかと思ったんだけど……ごめん、センス悪かったか?」


「い、いえ。ありがとうございます……嬉しいです!凄く、嬉しいです!!私、ずっとおふたりの足手纏いで、邪魔なんじゃないかと思っていたんです。

おふたりは、幼馴染同士で仲も良いし、足りないものを補い合ってるって感じで、それにおふたりは自分達で戦えるのに、私はサポートしか出来なくて。

助けてもらってばかりで、迷惑かけていると自覚はあったのに、この世界でひとりぼっちは怖くて、不安で心細くて……1人、置いて行かれるのが怖くて……おふたりに置いて行かれないように此処まで付いてきました……私……」


「邪魔だなんて、そんなこと僕達思ってないよ!」


「そうだよ、足手纏いなんて思わないよ。俺たちに出来ないことを、美稀はいつもやってくれるだろ?助かってる」


「そうですよね、ごめんなさい。勝手に思い込んで……悪い癖ですね。でも!だからこそ、こんなに素敵な物頂いて凄く嬉しいです!ありがとうございます!大切にしますね!!」


「うん」


「それにしても、悠陽君は凪君や私に居なくなって欲しくないっていうことは伝わりました!」


「は?何でだよ……」


「だって……ねぇ?凪君」


「ねー!悠陽(はる)は本当、素直じゃないんだから」


「じゃぁ明日、もうひとつ買いに行きましょう!!」


「そうだね、もうひとつ買いに行こうー!」


「何言ってんだお前ら」


悠陽はキョトンとして、凪と美稀が嬉しそうに笑っているのを眺める。




和やかな雰囲気の中、購入品の紹介が終わって、魔法書は旅の道中で少しずつ読んで調べていくということになった。


そして、悠陽は探し物が見つかる魔道具を出した。


「俺……兄ちゃんに、会いたい」


「うん、そうだね」


「お兄さん?」


「うん、おっちゃんも噂程度にしか知らないって言ってたし、本当に使えるのか、使えたとして2回目、3回目使えるのか分かんない。けど、俺」


「良いんじゃない?」


「私も良いと思います!!」


「でも、お前らも何か」


「悠陽(はる)がもらった物なんだから、悠陽が探したいものを探すのに使えば良い」


「そうですよ!!私も悠陽君のお兄さんとお会いしたいです!!」


「2人とも、ありがとう」


「相当魔力いるみたいに言ってたけど、悠陽(はる)なら大丈夫だろうけど、念の為に魔力増幅ポーション飲んでおきなよ」


「うん」


「そんなに魔力が必要なのですか?であれば、3人で魔力を込めた方が良いでしょうか?」


「いや、それだと魔力を込めている人の中で、誰の考えている探し物が見つかるのか分からないから、1人の方が良いと思う。言葉で言っていても、心で違う物を思っていたらダメかもしれないし」


「それもそうですね!」




悠陽は魔道具を両手に持ち、魔力を込めた。


「兄ちゃん、兄ちゃんは何処に居る。兄ちゃんに……会いたい」


悠陽がそう呟き目を閉じると、キラキラとオーロラの様な光が、ブワッと部屋中に広がった。

悠陽が目を開けると、魔道具は3人の知らない風景を映し出した。



ザザッ――


草原を歩く、学生服を着た男子高校生2人。


「もう少しでアゼルの街だね」


「そうだなぁ、結構時間かかっちまった」


「あぁー!悠陽(はる)に会いたいよぉ!何日会ってない?俺、弟居ないと生きて行けない。無理、やる気出ないおんぶ」


「優佑(ゆう)……お前がそんな調子だからこんなに時間かかってんだろ!分かってんのか!!」


ベシッ―と紫苑(しおん)が優佑(ゆうすけ)の頭を叩いた。

優佑は頭を押さえながら、紫苑の肩に手を掛ける。


「だってぇ!学校で悠陽(はる)探してたのに、無理やり連れ出したのはだぁれ!!」


「じゃぁ、お前はあそこで死んどきゃ良かったのか?俺が無理やり連れ出してやったから生きてんだろ、少しは感謝しろ」


「はるぅ。悠陽(はる)が反対方面行ってたらどうしよう!てか、もうこのまま一生会えなかったらどうしよう!!わーー俺もう無理ー!やだぁーー!!」


「うるせぇ」


紫苑が優佑の頬を摘み、引っ張っている所で映像が切れた。

魔道具から聞こえた声は間違いなく、悠陽の兄、優佑の声だった。




「兄ちゃん……」


「優佑兄(ゆうにい)!アゼルの街に向かってるって!!」


「アゼルの街……そうだ!地図貰ったのがあります!!」


美稀は、バッグから地図を出して広げた。


「王都へ向かう通りにある、この街から二つ先の街だね」


「結構近いですよ!!」


「悠陽(はる)、早速明日出よっか」


「でも、この街もっと見たいんじゃないか?」


「今日結構見て回りましたし、この先の街にももっと色んな物があると思うので、気にしなくて大丈夫ですよ!!」


「それに最悪、優佑兄と会ってまた戻って来れば良いし」


「そうですね!!」


「2人とも……ありがとう」




夜も更けて、美稀は部屋に戻り、悠陽と凪も寝ようと布団に入った時、外からドカンッと大きな爆発音と共に人々の悲鳴が聞こえて、飛び起きた。


2人は顔を見合わせ、すぐに窓の外を見た。


「行ってみよう、悠陽(はる)」


「おう」


2人は窓から外へ出た。


宿の外へ出ると、人々は悲鳴を上げながら逃げ惑い、建物からは激しく火の手が上がっていた。





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