第3話 旅の幸先、良し悪し
悠陽達は、地図を手に入れて街を出る。
一日程移動した所で、野営の準備をしていた。
テントを張って、火を起こしていると、冒険者と商人らしき人達が逃げて来た。
「おい!ボウズ!!早く逃げろ!!あぶねーぞ!!」
冒険者達の背後には、象のように大きな猪の魔獣が追い掛けて来ていた。
「倒せないのか?」
「バカ言うな!!Aランクの奴らが倒すような魔獣だ!!」
「へぇ、ちょっと試してみよっかなぁー」
「悠陽?」
悠陽は、創造で作っていた銃を構えて猪に向かって撃った。
銃弾は猪の脳天を突き破り、コテンッと倒れた。
「おぉ〜!」
「凄いです!悠陽君!!」
凪と美稀は、悠陽を褒め称える。
そんな3人を、開いた口が塞がらないまま眺める冒険者達。
「ぼ、ボウズ。今何した、ボウズが倒したよな!?」
「坊やありがとう。助かったよ、巻き込んでしまって悪かったねぇ。ちゃんとお礼はするからね」
「ボウズ、冒険者ランクはいくつだ!!」
冒険者と商人は悠陽に代わる代わる話しかける。
「ランクはCだけど」
「は?Cだと!?あれはAランクの冒険者が3人以上のパーティで倒す魔獣だ!!」
「まぁまぁ、良いじゃないすかリーダー。それよりこの魔獣どうするんで??」
「どうするって、猪っぽいし。食べる?」
「おぉ良いね、悠陽!バーベキュー!」
「良いですね!お久しぶりのお肉!!恋しいです〜」
「いやいやいや!!お前ら金はあるのか??こいつを売れば結構な金が貰えるぞ!?」
「そうなんですか!?」
凪が食い付くと、商人が説明を始めた。
「そうですね。解体が出来ない方であれば冒険者ギルドにそのまま売ってしまう。もしくは解体を依頼して、解体した後に商業ギルドに持って行くのが1番良いかと。
冒険者ギルドに売るのが手っ取り早いですが、解体費用を引かれた価格での買取になるので、少々値が下がってしまいます」
「そうなのですね。知りませんでした」
「そんな事も知らねぇのか。じゃぁこれも知らないんじゃないか?魔獣はな、倒して冒険者ギルドに持って行けば、依頼でなくても報酬が貰える。
逆に倒したら罰金になる魔獣も居るから気を付けろ」
「あとはそうだな、ランクが低く冒険者ギルドでは報酬が貰えない魔獣でも、商業ギルドなら買い取ってもらえる事もあるぞ。素材や肉になるからな」
「そうなのですね。はる、美稀さんどうする?」
「悠陽君が倒したのですから、私は悠陽君の意見に賛同します!」
「それもそうだね!どうする?悠陽」
「取り敢えず、今回は冒険者ギルドに持って行こうぜ」
悠陽達は商人や冒険者達と一夜明かして、街へと戻った。
街へ戻ると、商人は悠陽達を連れて自身の店へ行く。
商人は店の裏へ行くと、小さな袋を持って悠陽達の元へ戻ってきた。
「少しだけどお礼と魔具だよ。よかったら受け取っておくれ」
小さな袋には金貨が沢山入っていて、魔具だと渡された指輪は3人分あった。
「こ、これ結構なお値段する物じゃありませんか??こんなの頂けません」
「坊や達がそんな事気にするもんじゃ無いよ!私は命を助けて貰った。凄く感謝しているんだよ。本当にありがとう。私にはこれくらいしかお返し出来ないんだ。貰っておくれ」
「あ、ありがとうございます」
凪は申し訳なさそうに袋と指輪を受け取った。
指輪は魔力を貯めておける魔具だそうだ。指輪は各々受け取り、悠陽は明るくお礼を言って店を飛び出した。
美稀と凪は商人へ丁寧にお礼をして、悠陽の後を追う。
―冒険者ギルド
悠陽達が冒険者ギルドに戻ると、一緒に戻って来た冒険者達がギルドの受付嬢に説明をしてくれていた。
しばらくして、悠陽達は別室に呼ばれた。
別室に移るや否や、悠陽は空間魔法で仕舞っておいた猪の魔獣を取り出した。
受付嬢は、目を丸くしていた。
「ちょ、ちょっと待ってください!!これを本当に貴方1人で倒されたのですか!?これはAランクの方々が倒すような魔物ですよ!?剣が折れるほど皮が硬く、全く攻撃が効かないんです!!って、それより今何処から出したんですか!!」
「だからそう言ってるでしょう。このボウズが一発でこいつを仕留めたって」
「ちょっとお待ち下さい!!ギルマス呼んできますから!!」
「なんか、大事になっちゃったね。悠陽」
「腹減ったぁ。なぁ、終わったら飯食いに行こうぜ」
「行きましょう!悠陽君!!何が食べたいですか?」
「カレー、ハンバーグ、オムライス、ラーメン……」
「もう、悠陽……無いものばっかり言わないでよ」
お腹を鳴らしながら待っていると、受付嬢がギルドマスターを連れて戻って来た。
「君かい?倒したと言うのは」
「うん」
「君達のステータスを確認させて貰って良いかな?」
「どぞー」
悠陽達はギルドマスターの用意した魔具に手を翳した。
――
ハルヒ 全属性・創造・空間・日属性
ナギサ 基本属性・鑑定・完全記憶・解読・強化
ミズキ 回復(治癒)・蘇生・水属性・強化・聖
――
「な、なななんだい、このステータスは!!説明が無さすぎるのに長々と書かれなくても分かる。異常だ。使い方によっては、世界を滅亡させる事も出来る」
「へぇー」
「基本的に、人間は一属性の魔法しか使えない。稀に二属性持ちは居るが、二属性以上を持っているのは魔族やエルフ族に多いな。それに、ステータスには属性魔法しか普通は書かれていないんだ。……君達は何者なんだい」
悠陽達は、自分達がそこまでこの世界で異常なのだという事に驚き、息を呑んだ。
悠陽と美稀が固まる中、凪だけが笑顔を崩さなかった。
「そうなのですか。僕達は遠い所から来て、途中で逸れたこいつの兄を捜しながら、旅をしていました。けれど資金がつきてしまって、この町で冒険者登録をしたのです」
「そ、そうか。そういう事にしておこう」
ギルドマスターは、ため息を吐きながら頭を掻く。
「そうだ、君たちギルドカードを出してくれ。ハルヒはAランク、あとの2人はBランクに上げておく。お前達は魔獣討伐の依頼を何か一つ受けて、終わったらまた来てくれ。2人はまだ魔獣討伐依頼を受けた事が無いだろう」
「分かりました。では早速今日行ってきても良いでしょうか」
「あぁ、頼む。そうだ、ハルヒには少し頼みがある。いいか?」
「いいよ。2人が行ってる間、暇だし!!」
「ありがとう」
「ハルヒ、お前はAランクに上げると言ったが、Aランクになるには、特別な依頼を受ける、もしくはギルドマスター直々の依頼を受けるという決まりがあってすぐには上がらない」
「へぇ」
「という事で、俺の依頼を受けろ」
どんな大変な依頼かと思っていると、商人の店へ大量の荷物を届けるだけだった。
悠陽は空間魔法で荷物を仕舞い、手ぶらで店へ向かった。
商人の所へ着くと、ギルドマスターからの荷物を渡した。
「そうだ、坊や。さっき渡すの忘れていたのだけど、君に渡しておくよ。困った時はここに書いてある店へ行って、この紹介状を見せたら良い。きっと手助けしてくれる」
悠陽がギルドへ戻ると、凪と美稀は帰って来ていた。
2人は無事Bランクへ上がり、悠陽もギルドマスターの承認でAランクに上がった。
そして、悠陽達はギルドマスターからも紹介状を貰った。
ギルドマスターからの紹介状が有れば、検問も楽になるらしく、絶対無くすなよと釘を刺された悠陽は、商人から貰った紹介状も合わせて凪に押し付けた。
「何で??」
「無くしたらダメだからな!」
「凪君なら安心ですね!!」
「はぁ……」
3人でじゃんけんしたけど、結局凪が負けて持つ事になったよ!




