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第20話 奇跡の石

推しを早く登場させたいがため、第37話までは1日2話投稿致します。


私情です。




ボス部屋のさらに奥。


そこには、壁や地面から突き出す色とりどりの鉱石と、見たこともない美しい花々が広がっていた。

鉱石は淡い光を放ち、花々はその光を受けて宝石のように輝いている。


「おい、これって……」


ギルドマスターが驚いたように声を漏らす。


「すごく珍しい鉱石や薬草ばかりです!」


ミリィも目を輝かせながら、周囲を見渡していた。


「どれも極めて魔力濃度の高い場所でしか取れないものばかりだ」


「そんなのいいから早く虹色の石!」


珍しい鉱石にも花々にも目をくれず、悠陽(はるひ)は辺りを見回した。


探しているのは、死者を蘇らせることのできる、虹色の石。




「うんうん、早くしないとね〜」


突然、悠陽のすぐ近くから声が聞こえた。


「びっくりした!誰だお前」


悠陽が勢いよく振り返ると、そこには小さな妖精が浮かんでいた。


「ひどいな〜、ここの管理人だよ。君、シャオウェイには気に入られてるみたいだね」


悠陽は首を傾げる。


「誰だ?シャオウェイって」


妖精はそんな悠陽の疑問などお構いなしに、話を続けた。


「君が探してるの命を戻す石でしょ?」


「ある場所おしえてくれるのか!!」


悠陽は身を乗り出した。


「いいよ〜!その代わりたまにこのダンジョンに来て魔力吸わせてね!!」


「はー?なんで?」


「最近の冒険者はふ抜けちゃってぇ〜。50階以降の魔力吸引ゾーンまで来る奴が少ないんだよぉ!

このダンジョンの危機なの!分かる!?分かるでしょ!?

魔力濃度低くなっちゃうと、鉱石とか花維持できなくなっちゃうわけ!このダンジョンの存在意味!!なくなっちゃう!」


妖精は両手を大きく広げ、必死に訴えた。


どうやら、このダンジョンに存在する希少な鉱石や植物は、膨大な魔力によって維持されているらしい。

その魔力を補うために、五十階以降では侵入者の魔力を吸収しているのだという。


しかし、そこまで到達する冒険者が減ったことで、ダンジョンの維持が難しくなっているようだった。


「あっちの妖精みたいに鍵くれるならたまに来てもいいよ。1からダンジョン潜れって言うならヤダ。」


「いいよ〜んっ!はいっ!あっでも君すぐ無くしそうだし。お兄ちゃんに渡しとくね!」


妖精はどこからともなく鍵を取り出すと、悠陽ではなく優佑(ゆうすけ)へと差し出した。


「なくさねぇって!!」


「はいは〜い、みんな呼んできて〜」


悠陽を軽く受け流し、妖精は奥へと飛んでいく。

すると、何もなかった壁の一部が音を立てて動き始めた。


隠されていた扉が開き、その向こうに地下へと続く階段があった。

妖精に案内され、階段を下りていった。


そして、その先に広がっていた光景に、誰もが息を呑んだ。

そこは、まるで南極のような氷の大地だった。


見渡す限り白く凍りついた地面。


頭上には夜空のような暗い空が広がり、色鮮やかなオーロラがゆっくりと揺らめいている。

その光を受けて、辺り一面に散らばる鉱石が虹色に輝いていた。

さらに、氷の隙間からは虹色の花々が咲き誇っている。


地下深くにあるとは思えない、幻想的な空間だった。


「ここに入れるのは僕に気に入られた者だけ。

だからこの部屋にある物は、僕が気に入った人間しか持ってない物なんだ。

だから君に虹色の石をあげた爺さんは一度僕がここに入れた人間なのかもね。覚えてないけど!」


「でも妖精は何%の確率で鉱石出来るって」


悠陽は以前、別の妖精から聞いた話を思い出していた。


「だからその確率が、ダンジョンを何千回何万回潜っても見つけれないくらいの確率でしか生成されないの!それで見つけれるってどんだけの強運だよ!」


「ははは」


悠陽は乾いた笑いを漏らした。

それほど途方もなく貴重なものを、以前出会った出店の店主は悠陽に譲ってくれていたのだ。


「ねぇ!虹色の石あげるんだからさ!今日も魔力置いてってよぉ!」


「はぁー!?」


妖精は悠陽の返事も待たず、丸い玉を持ってきた。

両手で抱えられるほどの大きさの、透き通った不思議な玉だ。


妖精に促されるまま、悠陽はその玉に手を添えて魔力を流し込む。

すると、玉は悠陽の魔力を次々と吸収し始めた。

どうやら、この玉に魔力を蓄えておき、後からダンジョンへ供給する仕組みらしい。


悠陽が魔力を流し続ける間、妖精は玉の様子をじっと見つめていた。

やがて、十分な魔力が蓄えられたのか、妖精が満足そうに頷いた。


「もぅ手離していいよ〜!君ほんとすごいね底なし魔力だ!!」


悠陽は玉から手を離し、大きく息を吐いた。


「いや、流石に疲れた」


「そりゃそうだよ。魔法騎士十万人分の魔力吸ったんだよ!」


「それってすげーのか」


「この世界の人間全員敵に回したいの?すげぇとか言う話じゃないよ」


「バケモンだな」


ギルドマスターが呆れたように呟いた。


「うんうん」


妖精も当然のように頷いている。

悠陽はそんな二人の反応を見ながら、疲れた身体を軽く伸ばした。


その後、目的の虹色の石をはじめ、珍しい鉱石や薬草、花々を採取した。

十分な量を確保したところで、帰り支度を始める。


しかし、その時。妖精が悠陽の肩に座って、静かに話し始めた。


「ねぇ君、死者蘇生のリスクはちゃんと理解してるの?」


妖精が不意に悠陽へ問いかけた。


「リスク?」


悠陽が聞き返すと、妖精は困ったように表情を曇らせた。


「やっぱ聞いてないんだ〜。死者蘇生は禁忌だったんだよ。君一度お兄さん蘇生してるよね、その時はお兄さんへの強い思いと膨大な魔力で代償なしに蘇生できた。

でもね今回は違うよ。幼馴染くんと彼女ちゃんは代償なしで蘇生できるかもしれない。お兄さんの時みたいに君の二人への強い思いでね。でもね、他人もいるよね今回」


「あぁ」


「その人に対する思いが少ないと、魔力と蘇生する人間の生命力を代償に蘇生する。君は赤の他人の為に、自分の命を削ろうとしてるんだよ。だからシャオウェイも止めたんでしょう?」


「‥‥」


悠陽は黙り込んだ。

死者蘇生に必要なのは、魔力と虹色の石だけではなかった。

相手への想いが足りなければ、自分自身の命を削ることになる。


悠陽は黙り込んだまま俯く。


「代償なしに救う方法はもう一つある」


「それって!?」


悠陽が顔を上げる。


「死んだ人間を、心の底から想っている奴に蘇生させる。でも多分魔力が足りずに失敗するだろう。

だけどね、君が命を削ってまで他人を助けるのは僕も反対だよ。この話をして他人を生き返らそうなんて奴は、1人もいなかったから、蘇生してどれくらいの生命力を奪われるかもわからない。危険すぎる。」


妖精は真剣な眼差しで悠陽を見つめた。

命を削るという行為が、どれほど危険なことなのか。


ましてや、どれほどの生命力を失うのかすら分かっていない。


「でもそれってさ、結局俺じゃないと魔力たんなくてみんな助からなんだろ?大丈夫!俺悪運も生命力も強いから!!心配すんなよ!!」


悠陽は、いつものように笑ってみせた。

妖精はしばらくその顔を見つめていたが、やがて小さく息を吐いた。


「そう、わかった。じゃぁ、もぉ止めないよ」


そして、もう一つ大切なことを告げる。


「あと、その石の量じゃ全員は助けられないから。ちゃんと選んで使うんだよ。」


「は!?待って、どうゆう事だよ、」


「そのくらい高価でレアな石って事」


悠陽は手に入れた虹色の石へと視線を落とした。

ようやく見つけた、死者を蘇らせるための石。


しかし、その数には限りがある。

誰を救い、誰を救えないのか。

その選択まで迫られることになるとは、考えてもいなかった。


帰り際、妖精は悠陽達に声をかけた。


「僕はミラム。ペルセウス(英雄座)の迷宮の管理者、ミラム。ちゃんと、また来てね」


「ミラム。たまには顔出すよ」


ミラムに見送られ、その場を後にした。

悠陽の転移魔法によって、湖の上へと移動する。


転移した悠陽達は、ようやく地上の空気を吸うことができた。




「あと何日くらい??」


優佑が悠陽へ問いかけた。


「もう、あと3日しかないよ」


遺体を保存できる期限は、残りわずかだった。


「だがまだ3日ある。一度街に戻って被害状況を見にいかなければ」


「そうだな」


ギルドマスターの言葉に悠陽は頷いた。

一行は街の状況を確認するため、転移魔法でギルドへ戻ることにした。





ギルドへ戻った一行を待ち受けていたのは、想像を絶する光景だった。

床には負傷した冒険者たちが横たわり、職員や治療師が慌ただしく行き交っている。


血の匂いが漂い、あちらこちらから苦しげな呻き声が聞こえていた。


「何があったんだ!?」


ギルドマスターが受付へ駆け寄った。


「ギルマス。昨日から魔物と共闘した、ヴェルゼ教の信者達が……この街を襲ってきてるんです。」


受付職員は切羽詰まった様子で答えた。

一行がダンジョンへ向かっている間にも、街の状況は悪化していたのだ。


「ギルマス戻ったか。来てくれるか」


声のする方へ振り返ると、そこには公爵様の姿があった。


「わかった。すまない、俺は行ってくる。少しでも多くの者を救ってくれ。あとは頼む」


ギルドマスターは悠陽達にそう告げると、公爵様の元へ向かった。


「ええ、任せてください。ミリィさん助かりましたありがとう。僕らは行きますね」


優佑はミリィへ向き直り、礼を述べた。


「え、まだ手伝う事……」


ミリィは何か言いかけたが、紫苑(しおん)が優しく声をかけた。


「大丈夫、任せてゆっくり休んでくれ」


ミリィは少し悔しそうに頷いた。

悠陽達はミリィと別れ、遺体を預けているダンジョンへと急いだ。




扉を開け、ダンジョンの中へ足を踏み入れる。


「戻ったか。予想より早かったな」


一行を迎えたのは、遺体の保存を引き受けていた妖精だった。


「石、こんだけあれば足りるか?」


悠陽は持ち帰った虹色の石を見せた。


「ここに居る者達の分くらいは足りるんじゃないか?」


妖精は石の量を確かめながら答えた。

どうやら、ここに預けられた者たちを蘇生するだけの数は確保できたようだった。


「悠陽(はる)、美稀(みずき)ちゃんを1番先にしてくれる?外の事は、兄さん達に任せて」


優佑が悠陽に声をかける。


「なんで美稀ちゃん?」


紫苑は不思議そうに首を傾げた。


「今こうしているうちにも負傷している者は出ている、ヒーラーは多くいた方が死傷者も減ると思うんだ」


「そうか。流石、優佑(ゆう)」


紫苑は納得したように頷いた。

街では今も戦闘が続いている。

美稀を蘇生できれば、治癒魔法でさらに多くの負傷者を救えるはずだった。


「じゃぁ、美稀だな」


悠陽は虹色の石を手に取り、美稀だと思われている遺体の前へ進んだ。

遺体は原形を留めないほど損傷しており、顔はもちろん、元の姿すら判別できない状態だった。


悠陽は静かに息を整え、蘇生を始めた。


虹色の石が光を放ち、遺体を包み込んでいく。

損傷していた身体が少しずつ修復され、失われていた人の形を取り戻していった。


そして、光が収まったとき。


悠陽は目の前の人物を見て、息を呑んだ。


「っ!美稀じゃない!違う奴だ」


そこにいたのは、美稀ではなく……

金髪長髪の中性的な青年だった。


「え、じゃぁ美稀ちゃんは!?」




蘇生は成功した。


しかし、悠陽達が救おうとした二人の姿は、運び込まれた者達の中には何処にも無かった。

ダンジョン内をどれだけ探しても……

原形を留めていない遺体を蘇生して確認しても……


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