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第15話 初!ダンジョン攻略




「……ん……?」


目を覚ますと、目の前には見慣れない景色が広がっていた。

悠陽(はるひ)は椅子に座ったまま、大きく伸びをした。


「……俺、寝てた?」


辺りを見渡すと、そこは公爵様の屋敷の庭園だった。


「あれ……確か、美稀(みずき)と話してて……」


そう呟きながら、悠陽は先ほどまでの出来事を思い返した。

朝早くに目が覚め、散歩していると美稀が楽器を弾いていた。

それから少し話をして……


「……ん?」


悠陽は首を傾げた。


「……あれ?途中までしか覚えてない……」


美稀が何かを話してくれていたことは覚えている。

しかし、その後の記憶が曖昧だった。


「……え?まさか、話の途中で寝たの?」


悠陽は思わず頭を抱えた。


「うわぁぁ……俺、最低じゃん……!話の途中で寝るとか!」




「悠陽(はる)ーー!」


屋敷の方から、凪(なぎさ)の声が聞こえて振り向いた。


「ご飯だってーー!」


「おぅ!今行くーー!」


凪に返事をして、悠陽は屋敷へと戻った。





食堂へ向かうと、既にみんなが集まっていた。


「あっ!悠陽君、おはようございます!」


「……お、おはよ!」


美稀はいつもどおり、笑顔で話しかけてきた。

悠陽は席に着きながら、こっそり美稀の様子を窺った。


いつもどおり笑っているし、話しかけてもくれる。


もしかすると、ちゃんと最後まで話を聞いてから眠ってしまったのかもしれない。


けれど、どうしても思い出せなかった。


「……うーーん……」


「悠陽(はる)?ご飯冷めるよ?」


「……あっ!いただきまーす!」


悠陽は考えるのをやめ、目の前の朝食を食べ始めた。




朝食を終えると、優佑(ゆうすけ)と紫苑(しおん)は勇雄(いさお)との待ち合わせに向かう準備を始めた。


「それじゃあ、俺らはギルドに行ってくるな!」


「おぅ!頑張ってこいよー!」


「お前もな!」


紫苑が笑いながら悠陽の頭を軽く叩いた。


「悠陽(はる)、あまり無茶するなよ?」


「わかってるって!」


「……本当かなぁ」


優佑は少し心配そうに笑った。


「凪、よろしくね」


「うん。任せて!」


「……なんで凪に言うんだよ!」


「ははは!」


二人は笑いながら屋敷を出ていった。




「そういえば、美稀は今日は少し用事があるから、武器屋には行けないって」


「えっ!そうなの?」


「うん。一応、どんな杖が欲しいかは聞いておいたよ」


凪は一枚の紙を取り出した。

その紙には、美稀が希望する杖の形や装飾について書かれていた。


「じゃあ、今日は二人で行くか!」


「そうだね。優佑兄(ゆうすけにい)達も先生とギルドだし」


「よーし!出発ーー!」


「ちょっと待って、地図確認するから」




――武器屋


「すみませーーん!!」


店の扉を開けると、金属の匂いと熱気が漂ってきた。

壁には剣や斧、槍など、様々な武器が並べられている。


「おぉーー!すげぇ!」


「いらっしゃい!何かお探しかい?」


店の奥から、がっしりとした体格の男性が姿を現した。


「紹介で来たんですけどーー!」


「紹介?誰の紹介だい?」


「ドワーフの街にいる、グリオさんです」


凪が答えると、店主は驚いたように眉を上げた。


「ほぅ!兄ちゃんの知り合いかい!」


「はい!」


「そうかそうか!それで、どんな武器が欲しいんだい?」


「こいつの弓と銃、それから二人分の杖をお願いしたくて」


「ほぅ。弓に銃、それに杖か」


凪は持っていた紙を差し出した。


「一人分は、こんな感じがいいっていう要望を聞いてきています」


「……ふむふむ」


店主は紙を受け取り、じっくりと眺めた。


「その本人は来てないのかい?」


「はい。少し体調がよくないみたいで……」


「そうかい。そりゃ心配だな」


店主は頷くと、再び二人へ視線を向けた。


「それで、素材は何でもいいのかい?」


「欲しいもんがあるなら取ってくるぜ!」


悠陽が胸を張って答えると、店主は豪快に笑った。


「ははは!威勢のいい坊主だな!」


「一応、何種類か素材は持っているんですが……」


「ほぅ?見せてみな」


悠陽は亜空間収納から、これまでの冒険で手に入れた素材を取り出した。




「……おぉ!?」


店主が目を丸くする。


「こりゃすごいな!よくこんなもん集めたな!」


「えっへん!」


悠陽は自慢げに笑った。

店主は素材を一つずつ確認していたが、ふと顔を上げた。


「……じゃが、鉱石はないのか?」


「鉱石ですか?」


凪が首を傾げる。


「はい。持ってないです」


「そうか……」


店主は顎に手を当て、少し考え込んだ。


「こういう武器を作るなら、良質な鉱石が必要なんじゃ。それに、属性を付与した魔道具を作るなら魔石もいる」


「なるほど……」


「王都から見える山があるじゃろ?」


「はい!」


「その麓に、ダンジョンがあるんじゃ。そこの最下層付近では、良い鉱石が採れるらしい」


「……ダンジョン!?」


悠陽は思わず身を乗り出した。


「ダンジョンって、あのダンジョン!?」


「……他にどんなダンジョンがあるんだい?」


「悠陽(はる)、落ち着いて」


「これほどの素材を集められる実力があるなら、あのダンジョンも余裕じゃろう。どうじゃ?取ってきてくれんか?」


「おぅ!!行ってくる!!」


「返事早いなぁ……」


凪が呆れたように笑った。


「あっ!おっちゃん!俺の武器さ、かっこいい感じにしてくれる!?」


「ははは!わかったわかった!できる限りのことはしてやる!」


「やったーー!」


「それじゃあ、僕たちも鉱石を探してきますね。ついでに何かいいものがあれば持ってきます」


「おぉ!ありがとよ!頼んだぜ!」


二人は店主に手を振り、武器屋を後にした。




「じゃあ、早速ダンジョン行こうぜ!」


「その前に、準備しないと」


「……準備?」


「今日は僕たち二人だけなんだから、回復ポーションを多めに買っておこうよ」


「あー!そっか!!」


二人は道具屋へ向かい、回復ポーションや必要な道具を買い揃えた。


「何があるかわからないし、少し多めに持っておこうか」


「おぅ!」


悠陽は店内を見渡し、ふと食料が並んでいる棚を見つけた。


「なぁなぁ!これも買ってこうぜ!!」


「……え?」


凪は悠陽が抱えている食料を見る。


「そんなにご飯いらないよ。何日ダンジョンに潜るつもり?」


「……一週間?」


「一週間!?」


凪は思わず声を上げた。


「ゲームでレベル上げする時、一週間くらいひたすら同じダンジョン潜ってたじゃん!」


「……確かに、やってたけど!」


「だろ!?」


「いやいや!今回はゲームじゃないんだから!」


凪は慌てて首を横に振った。


「必要な鉱石を取って、少し探索したらすぐ帰るよ!武器を頼まないといけないんだから!」


「……そっかぁ」


「そうだよ」


「……ちぇー」


「そんなに残念がらないでよ……」


凪は呆れたように笑った。




――一日半後


王都を出発してから一日半。

二人はようやく、目的のダンジョンへ到着した。


「……おぉーー!!」


山の麓には、大きな洞窟の入口があった。

その周辺には、露店のようなものがいくつも並んでいる。


「すっげぇ!お祭りみたい!」


「本当だね。こんなにお店があるんだ」


二人が辺りを見回していると、一人の男が声をかけてきた。


「おい!そこの兄ちゃんたち!」


「……はい?」


「今からダンジョンに入るのかい?」


「えぇ、そうですけど」


「そうかそうか!だったら、ちょっと頼みがあるんだが」


男はにやっと笑った。


「ダンジョンで採れる鉱石を、このくらいの値段で買い取るからよ。少し分けてくれないかね?」


男が提示した金額を見て、凪は少し考えるような素振りを見せた。


「……すみません。先約がありまして」


「おぉ、そうかい!それなら仕方ないな!」


「それに、おじさん」


「……ん?」


「その鉱石の相場、もっと高いですよね?」


男の表情が固まった。


「い、いやぁ!そうなのかい!?おじちゃん、ちょっと昔の感覚で話しちゃってなぁ!」


「……昔の方が、もっと高かったはずですけど」


「…………チッ」


男はしばらく黙り込んで、小さく舌打ちをすると、機嫌を損ねたようにその場を離れていった。


「……なんだったんだ?」


悠陽が首を傾げると、凪はため息を吐いた。


「多分、この辺りのお店はダンジョンで採れた鉱石を冒険者から買い取るための店なんだろうね」


「へぇー!」


「さっきみたいに、相場を知らない冒険者を騙して安く買おうとする人もいるみたいだけど」


悠陽は周囲を見渡した。

すると、香ばしい匂いが鼻をくすぐった。


「……良い匂い……あっ!」


「……悠陽(はる)?」


「なぁ!あの焼き鳥食ったら行こうぜ!」


「……えぇ!?ここでも食べるの!?」


「腹が減っては戦はできぬって言うだろ!」


「……さっきご飯食べたばっかりだよ?」


「別腹!」


「……焼き鳥って別腹なの?」


「もちろん!」


「……もう、しょうがないなぁ」




焼き鳥を食べ終え、ダンジョンへ向かう。


「よーーし!!行くぞーー!!」


「うん!」


大きな洞窟の入口をくぐると、ひんやりとした空気が漂っていた。


「……うわぁ……!」


悠陽は思わず声を上げた。


「やっば!!楽しみすぎる!!生ダンジョン!!」


「そうだね。ゲームではよく潜ったけど、本物は初めてだもんね」


「おぅ!!」


悠陽は辺りを見回した。

すると、洞窟の壁がぼんやりと光っていることに気がついた。


「……お、おい!!凪!!」


「ん?」


「見てみろよ!!壁が光ってる!!」


「……本当だ」


凪は壁へ近づき、興味深そうに眺めた。


「これ、なんだろう。光苔かな?」


「すっげぇ!!灯りもないのに明るい!!」


「そうだね。これなら松明もいらなさそう」


「ダンジョンって感じするーー!!」


「……ふふっ悠陽(はる)、楽しそうだね」


「そりゃそうだろ!!」


二人は顔を見合わせて笑い、ダンジョンの奥へと進んでいった。




――第十階層


「……よっしゃ!」


悠陽の放った矢が魔物に命中した。

魔物はその場に倒れ、光の粒子となって消えていく。


「お疲れ様、悠陽(はる)」


「おぅ!」


ここまでに現れた魔物は、スライムやコウモリなど比較的小さなものばかりだった。


「なんか、思ったより余裕だな!」


「まだ十階層だからね」


凪はドロップ品を拾い上げながら言った。


「……そういえばさ」


「ん?」


「スライムのドロップ品って、食べられるのかな?」


「……え?」


悠陽は凪の手元を覗き込んだ。


「……なんか、味しなさそう」


「でも、アニメとかでスライムを料理して食べてることあるよね」


「あーー!そういえば!」


悠陽はぽんっと手を叩いた。


「戻ったら、なんか作って食ってみようぜ!」


「そうだね!ちょっと気になる!」


「だろーー!」


二人は笑いながら、さらに下の階層へと向かった。




――第二十階層


「……おっ!」


目の前を、角の生えたウサギのような魔物が駆け抜けていった。


「速っ!」


「悠陽(はる)!!」


悠陽は素早く魔法を放った。


「……よし!」


魔物が倒れると、凪が辺りを見回した。


「下に行くにつれて、魔物が強くなってる感じだね」


「ゲームと一緒だ!」


「そうだね。となると……」


凪は少し真剣な表情になった。


「怖いのは、これからだね」


「おぅ!気引き締めていこうぜ!」


「……悠陽(はら)がだよ?」


「なんでだよ!」




――第三十階層


ここまで来ると、現れる魔物も随分大きくなっていた。

熊や鹿に似た魔物が次々と襲いかかってくる。


「……よっと!」


悠陽は火球を放ち、最後の魔物を倒した。


「……ふぅ!」


「悠陽、一旦休憩しない?」


凪が近くの岩に腰掛けた。


「さすがに、ちょっと疲れてきた」


「あーー、そうだな!ぶっ通しで来たし!」


悠陽も隣に腰を下ろした。


「……腹減ったーー!」


「……やっぱり?」


「そうだ!!」


悠陽は勢いよく立ち上がった。


「さっきさ!熊みたいなのが肉落としたよな!?」


「……うん?」


「肉!!焼こう!!」


「……それ、僕に焼けって言ってるよね?」


「……へへへー!」


凪は呆れたように笑った。


「……まぁ、いいけど」


「やったーー!!」


悠陽は両手を上げた。


「にーーく!にーーく!にぃくっ!」


「はいはい。ちょっと待ってね」


凪は火の魔法を使い、手際よく肉を焼き始めた。

香ばしい匂いが辺りに広がっていく。


「……うまそーー!」


「もう少しだから待って」


「はーーい!」


しばらくして、焼き上がった肉を二人で頬張った。


「……うっま!!」


「本当だ!結構おいしいね!」


「だろーー!」


「……悠陽(はる)が焼いたわけじゃないけどね」


「細かいことは気にすんな!」




食事を終えて片付けを済ませると、凪が悠陽に尋ねる。


「……どうする?今日はここで休む?」


「ん?」


「それとも、そのまま下まで行っちゃう?」


「俺はまだ行けるけど……凪は大丈夫か?」


「うん。ここまでそんなに魔力使ってないし、まだ全然平気だよ」


「そっか!」


「じゃあ、もうちょっと進んでみようぜ!」


「うん!」


悠陽は立ち上がった。


しかし、この先に何が待ち受けているのか。

この時の悠陽は、まだ知る由もなかったのだ。





「……うわぁ……」


目の前に現れた巨大な魔物を見て、悠陽は足を止めた。


「……な、凪……」


「ん?」


「……あのさ……」


「どうしたの?」


「……俺、クモ無理……」


そこには、悠陽の身体よりも遥かに大きな蜘蛛がいた。

長い脚を動かしながら、ゆっくりと悠陽達へ近づく。


「……うぅ……」


「……あぁ、そうだったね」


凪は思い出したように笑った。


「いいよ。クモは僕が倒すから」


「……ありがとう……!」


凪は杖を構え、魔法を放った。

巨大な蜘蛛はあっという間に倒れ、ドロップ品を残して消えていった。


「……終わったよ!」


「……ほんと?」


「うん!」


悠陽は恐る恐る顔を上げた。


「……よかったぁ……」


「そんなに苦手だったっけ?」


「苦手だよ!!普通のサイズでも無理なのに!!」





「……ぎゃーーーーっ!!」


「……悠陽(はる)!?」


「カマキリ!!無理っ!!きもい!!」


目の前には、巨大な鎌を振り上げた魔物が立っていた。


「わっ!!凪ーー!!」


悠陽は慌てて凪の背後へ隠れた。


「無理無理無理無理!!」


「……そんなに虫無理だったっけ?」


「ただでさえ苦手なのに!!巨大になったらもう無理!!」


「……ははは!」


「怖い!!キモい!!」


凪は笑いながら杖を構えた。


「はいはい。じゃあ、これも僕が倒すね」


「……お願いします……!」


しばらくして、魔物を倒した凪がこちらを振り返った。


「……悠陽(はる)、しまうのくらい手伝ってよ」


「……袋に入れて中身見えなくしてくれたら……手伝う」


「……あはははっ!」


「笑い事じゃねぇ!!」




――第四十階層


「……はぁぁ……」


凪が大きく息を吐いた。


「……さすがに疲れた……」


「……ごめん……」


悠陽は地面に膝をつき、深く頭を下げた。


「……本当にすみませんでした……」


凪は思わず笑った。


「三十階層から四十階層まで、こんなに虫の魔獣が多いとは思わなかったね」


「……うん……」


悠陽は俯いた。


大蜘蛛。

巨大なカマキリ。

その他にも、見たくもない魔物が次々と現れた。


そのほとんどを、凪が倒した。


「……俺、何もしてねぇ……」


「ははは!気にしなくていいよ!」


凪は悠陽の肩を軽く叩いた。


「いつも助けてくれてるし!」


「……凪……」


「こういう時くらい、僕に任せてよ」


「……うん。ありがとう……!」


「ふふっ。それじゃあ、今日はここで休もうか」


「……おぅ……」


凪は荷物を取り出しながら尋ねた。


「ご飯は?」


「……ご飯……」


悠陽は先程までの光景を思い出した。


「……いらない……」


「……え?」


「……フラッシュバックして……食べられる気分じゃない……」


「……あはははっ!珍しい〜!」


「笑うなよぉ……!」




――翌朝


「……うっまーー!!」


悠陽は朝食を頬張りながら、満面の笑みを浮かべた。


「やっぱ朝飯は最高だな!!」


「……昨日、あんなに落ち込んでたのに」


凪が呆れたように笑った。


「寝たら元気になった!」


「……ふふっ。よかったね」


「おぅ!」


朝食を食べ終えると、二人は再び探索の準備を始めた。


「このダンジョンは五十階層までだから、あと十階で最下層だよ」


「おぉーー!もうすぐじゃん!」


「そうだね」


二人は荷物を片付け、さらに奥へと進んだ。




――第四十一階層


「……おっ?」


階段を下りた悠陽は、周囲を見回した。


「……なんか、雰囲気変わったな」


「本当だね」


それまでの岩肌とは違い、壁や地面には所々に鉱石のようなものが埋まっていた。


「なんか、採掘場みたい!」


「そうだね。ここから鉱石が採れるのかな」


「おぉーー!」


悠陽は壁に近づき、きらきらと光る鉱石を眺めた。


「すっげぇ!これ、武器に使えるかな!」


「多分ね。あとで調べてみよう」


「おぅ!」


二人は周囲を警戒しながら進んでいった。


「……なぁ、凪」


「ん?」


「こういうところってさ、ゴーレムとか出てきそうじゃね?」


「……あぁ、確かに」


「あと、鉄食ってゴッツゴツになった熊とか!」


「……熊って!」


凪が吹き出した。


「やだよ、そんな熊!ははは!!」




その瞬間、


「……グルルルル……」


低い唸り声が、洞窟の奥から響いた。


「……ん?」


二人が顔を上げると、そこには一頭の巨大な熊が立っていた。


真っ白な毛並み。

そして、その背中には鋭く尖った鉄のようなものが、無数に生えていた。


「…………」


「…………」


凪はゆっくりと悠陽の方を向いた。


「……出たぁぁーー!!」


「悠陽(はる)!!フラグ立てないでよ!!」


「ごめん!!まさか本当に出るとは!!」


「笑ってる場合じゃないよ!!」


白熊が大きく吠え、悠陽達へ突進してきた。


「……うおっ!!」


悠陽は素早く飛び退き、銃を構えた。


「……えいっ!」


放った弾が熊の身体に命中する。



しかし――


「……カンッ!」


硬い音を立て、弾が弾かれた。


「……えっ!?」


「悠陽(はる)!?」


「……こいつ、かってぇ!!」


「見た目どおりってことだね!」


凪は魔法を放ったが、熊は怯むことなく向かってくる。


「……弱点とかないのかな!」


「……熊の弱点ってどこ!?」


悠陽が尋ねると、凪は少し考えた。


「……鼻だけど?何するの?」


「……ふっふっふーー!」


悠陽はにやりと笑った。


「こいつも熊なら!!」


「……あっ!そっか!」


「よーーし!!」


悠陽は熊の動きを見極め、銃を構え直した。


「……そこだっ!!」


放った弾丸が、熊の鼻先を捉えた。


「……グオォォォ!!」


熊が大きく仰け反る。


「今だよ!悠陽(はる)!」


「おぅ!!」


さらに追い打ちをかけるように、攻撃を仕掛けた。

やがて、巨大な熊は地面へ倒れ込んだ。


「……よっしゃーー!!」


悠陽は両手を上げた。


「倒したーー!!」


「お疲れ様!」


凪が笑いながら近づいてくる。

悠陽はドロップ品を亜空間収納へしまった。


「……いやぁ、強かったな!」


「そうだね」


凪は悠陽を見て、にっこりと笑った。


「……悠陽(はる)も、たまには頭使えるんだね」


「……たまにはってなんだよ!!俺だっていつも考えてるわ!!」


「……本当かなぁ?」


「おい!!」




それからも、二人はダンジョンの奥へと進んだ。

鉱石を採掘しながら、現れるゴーレムや様々な魔物を倒していく。


「……おぉ!これも綺麗!」


「悠陽(はる)、それも持っていく?」


「おぅ!何かに使えるかもしれないし!」


「じゃあ、少し多めに採っておこうか」


必要な素材を集めながら、階段を一つずつ下りていった。


そして――




――第四十九階層


「……おっ?」


目の前には、大きな扉があった。

これまでの階層とは違い、重厚な造りの扉には、不思議な模様が刻まれている。


「……なんだこれ?」


「……ボス部屋、かな?」


凪が扉を見上げながら呟いた。


「……ボス部屋!?」


悠陽は目を輝かせた。


「すっげぇ!!ボス部屋とかあるんだ!!」


「……本当にゲームみたいだね」


「なぁなぁ!何が出るかな!?」


「……さぁ?」


「ドラゴン!?でっかいゴーレム!?それとも魔王とか!?」


「……魔王はさすがに出ないんじゃない?」


「わかんねぇじゃん!」


「……ふふっ。そうだね」


悠陽は扉へ手を伸ばした。


「……よーーし!!」


凪も杖を構える。


「気をつけてね、悠陽(はる)」


「おぅ!」


悠陽はゆっくりと扉を押した。


――ギィィィィ……。


重たい音を立てて、扉が開いていく。


「……ん?」


悠陽は思わず目を瞬かせた。

そこに広がっていたのは、想像していたような薄暗い部屋ではなく……

色とりどりの花が咲き乱れ、柔らかな光が辺りを照らしている。


まるで、庭園のようだった。


「……花畑?」


凪も驚いたように声を漏らした。


「……なんだ、ここ……」


二人はゆっくりと部屋の中へ足を踏み入れた。

そして、花園の奥に小さな人影がある事に気付いた。


「……ん?」


そこには――

花々に囲まれながら、静かに座っている小さな妖精が居た。


「……妖精?」


悠陽は思わず呟いた。



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