突然の出会い
夜も更けたというのに、大修道院内の街は活気にあふれていた。
むしろ汗をたらして、その日その日を生きていくための金を稼いでいる労働者たちが、疲れをいやそうと仲間同士で酒場に集まっているので昼よりも活気にあふれているかもしれない。
酒場が満席なので酒だけ買い、外で立ちながら飲んでいる者たちもいる。
だが街よりも少し高い場所にそびえたっているファルテーヌ大修道院は夜だろうと昼と変わらず静寂そのものだった。
ニルスは、満席になっている酒場のうちの一角をどうにか取ることができ、少し前に頼んだキンキンに冷えている大ジョッキの麦酒、なぜか麦茶、半分に分けられた若鶏の丸焼きに塩をかけただけのシンプルなもの、羊肉と玉ねぎの串焼き、鶏肉のシチューなどがちょうど届いたところであった。
「で、あんた誰?」
ニルスは横に座っている少女といっても差支えないほどの背丈の女に疑問の目を向けつつ問う。少女程の身長ということは、ニルスと同じほどの年齢であるだろう。
そしてなぜかその女は鎧を着て、剣を携えている。
金というには少し薄いブロンドヘアーはちょうど肩に届くか届かないほどで瞳は少し薄い碧で鎧を着ているのがもったいない程の美しさであった。
現に周りの男たちの一部が女に目を向けていた。
ニルスが聞くとその女は飲んでいた麦茶を手に持ったまま咽始め、少し収まってきた時にようやく口を開いた。
「一文無しのあなたを助けて上げたのに、よく言いますね」
「だから怖いんだろうが、普通の人は一文無しの人をしかも男を助けたりしないぜ」
若鶏にかぶりつきながらもニルスは疑念の目を女から離そうとはしない。
そのとき、女がニルスの目を凝視してきた。
そのまま数秒経過し、空気に耐えられなくなったニルスが観念し口を開く。
「わかったよ、まずはありがとうだ、感謝をあんたに伝えよう」
「だから、あんたは誰なのか聞かせてくれないかい?」
「その呼び方は気になりますが、まあ一旦いいでしょう」
「私はリイラ、勇者であるあなたを守るために教会から派遣された騎士です」
ニルスは
「名前を知らなかったから呼び方はどうしようもないだろ」
と言おうかと少し迷ったが、ここで言うとさらにめんどくさそうになりそうだったので辞めた。
二ルスがなぜ教会は今更護衛を...と思っているとリイラが突然思いついたかのように、さっきよりも小声で言った。
「それと私は神をあまり信じていませんので、そこはよろしくお願いします」
「奇遇だな俺もあまり信じていない、でもじゃあなんで教会にいるんだ?」
リイラが言うには彼女は元々捨て子だったらしく、そこを教会に保護された。
なのでその恩に報いるために教会に従っているらしい。
「私は神は信じていません、ですが受けた恩には人として、騎士として報いなければいけないと思うのです」
ニルスは何回か頷き、手を伸ばし言った。
「いい考えだ、じゃあとりあえず自己紹介もできたってことで、魔王倒すまではよろしく頼むぜ」
「はい、よろしくお願いします」
二人は軽く握手をしたのちにテーブルの上にまだ結構残っている晩餐をそれぞれの口に運び始めた。




