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旅立ち

「でも俺に話しかけてきた神は...」

ニルスが続きを話始めようとしたその時だった。


唐突にモラナが聖堂の中にいるもの全員に聞こえるように言った

「たった今我らが神の啓示が下りました!ニルス様が聖剣を抜くことができなかったのは、神がもはや聖剣がなくとも魔王を打ち倒せると認めたから!」

「そう!これは神からの試練なのです!!」


でも神は俺の村を襲わせ、俺を勇者に仕立て上げたと言っていた。

ニルスはそう言おうとした、だがそんな時間は与えられなかった。


「レシイお願いします」

そうモラナが言ったとニルスが思った時には既に大修道院を囲む城壁の門の目の前にただ一人夕陽を背にぽつんと立っていた。


先ほどまでいたはずの聖堂の荘厳な雰囲気など少しも感じられなかった。もう夕方だ、市場は夕飯の材料を買いに来た人であふれ、夜から開業する店などは忙しそうに開店の準備をしている。


「俺はなんでこんなところに...」


「今日はほんとにずっとよくわからない事ばかり...いやそんなことはどうでもいい、あいつは神はなんなんだ」

ニルスは困惑しつつもつぶやき、立ち止まったまま動かず、いままで働かせることができなかった脳を存分に働かせていく、少しずつ今までに起こったことが脳内で整理されていく。


(つまり、今までの奇跡やら加護やらはすべて茶番で、俺の家族も住んでいた村さえもその茶番に利用したというのか...ふざけるな!!何が神だ...人の人生をショーとしか思っていない神など俺はいらない!!)


ニルスは怒りに顔をゆがませ、歯を軋ませている。今彼は完全に怒りに飲み込まれていた。彼は今まで神に心酔することはなくとも、神を信じていた。

自分を救ってくれた慈悲深い神だと、そんな心を神自身に踏みにじられた。

そして神を信じてきたニルスにすれば、それは怒りの感情だけではなく恐怖をも生み出していた。


(そもそも、なんで俺はこんなところにいる、また神の仕業か...?)


(神の言っていたことに従うのは癪だが魔王は人類の敵、どちらにせよ倒さなくてはいけないか...)


「教会のやつら一文無しの状態でほっぽり出しやがった、これから魔王を倒そうというやつにこの仕打ちかよ...」


ニルスはもう夜になりそうな大修道院の市場通りを一人とぼとぼ歩き始めていた。


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