カラクレナイ#98 熱い風呂だってだんだん慣れる
あと2話
「おや…余裕、ですか?」
「あんたも薄々わかってんだろ?血王状態だったらこの程度の攻撃余裕だってよぉ?」
「それは…確かに、そうですね。ではもっと……」
あぁん?攻撃パターンが増えた?抱きつき……って魔力の膨張!?自爆か!!おっと、危ない危ない!!モーション自体はゆっくりだが予想してなかったなぁ!でもこれくらいなら……っ、次は血槍!?しかも反射するやつ!選択肢が増えてきやがったなぁっ!!俺の被弾0を全力で阻止しようとしやがってよぉ…っ!
血腫のするような攻撃…引っ掻きや噛みつき、それに加えられた抱きつき自爆…そして反射する血槍!こんぐらいか?いや、ちょっと待てよ。あの血槍結晶化するやつじゃねぇか!確定で避けないといけねぇじゃねぇか…めんどくせぇことになってきやがった…っぐ!!
どっからともなく炎も剣も追加かっ!!あの杖から出てるみたいだが…どう言うもんなんだよっ!!これじゃサーカスの興行みたいなもんだぜぇ…しかも全部の演目詰め合わせ!嘘みたいな密度だな……テンション下がってきたー
……けど血王状態だったら簡単に避けれる!見る世界が遅いからゆっくり考えて、それを実行に移せるし…ただ身体能力が上がっただけとは思えないほどの動きが可能になってる!
血槍による網目を掻い潜って、血腫の攻撃を避けているところに剣が飛んでくる、それを斬で迎撃した後、今度は剣と同時に炎がぶっ飛んでくる。血腫に挟み撃ちされていたのでその血槍の股をスライディングで通り抜け、闘技場を走り回って避ける。もちろん血槍の網目を掻い潜るために自分でも恐ろしいほどの歪な姿勢で走っている。これがまぁ…大体数秒の出来事、しかもこれが連続して起こっている。それもこれも実行できてるのは全部血王状態のおかげだ、いまだに被弾はゼロだぜ。
「まだまだですよ!」
「おいおい、俺をピエロとでも思ってんのかぁ!?」
「あんな大層なことを話したんですから、道化と思われても仕方ないでしょう?」
まぁ、確かにこの攻撃を余裕ってのはなかなかのことだとは思うが…はっ、まだ避け切れてるんだよなぁこれが。どれほど弾幕が濃かったとしてもこのゆっくりと見える視界がある限りどうやったって攻撃はあたらねぇ!ま、これ以上に増える可能性は十分にあるが、そうだとしてもこのスッカスカの弾幕にいくら増えたところで俺を捉えることは出来ねぇな。
今考えるとグローはよくこんな状態のアイコスに攻撃を当てられたな。やっぱ運命の強制力ってぇのは怖いぜ。……奇しくもあの時のグローとほぼ同じことをしてんのか。あいつは言葉の通りにやり遂げたが…どうなるかな?
「恐ろしいほどの機動力…そしてその柔軟性、それを実行に移せるほどの混血とは思えないほどのセンス……あなた、一体何者なんですか?」
「……俺か?俺は……」
「ただの、人間さ。元な」
特別な答えを求められてんのかは知らねぇが…俺はなんだって言われてもこう答えるしかない。実際のところナイトメアに助けられなかったら俺はそこら辺にいる平凡な高校生でしかなかったはずだからな。センスだなんだ言われてもよくわかんねーし俺としちゃどーでもいい。
そう答えられたヘルメースは…口を開けたまま少しの間ぼーっとして動かなくなった。攻撃も止まったんだが…ボーナスタイムだな。ははっ。
「……そう、ですか。ナイトメア様はいい目を持っていらっしゃる。あなたほどの人間を見つけるなんて。」
「そうかぁ?俺なんか大したことねぇだろ。」
「ふっ、本当に…恐ろしい」
そう言うとヘルメースは杖を手元に戻し杖の端で2回強く地面を叩くと今いる血腫たちが分裂しさらに量が増していく。なんなら剣や血槍も増量って…いや、この密度ならまだいけるぜ!大体今までで6分ちょい、あと4分か…血王状態で熱がこもって倒れる様子もねぇし余裕!よーし行ける行ける!とヘルメースさんのアドバイスもちゃんと実行していく。それぐらいの余裕があるってこった。
「まだ避けますか…ですが、そろそろですかね。」
「あぁん?」
そろそろ?俺の思考がパンクするのを待ってるんだったらそんなのはありえないぜ?並列処理は得意なんだよ。もはや自分がどう言う動きしてるかいまいちよくわからないが…今は一応空中で立体機動してるな、体はスクリューしながら。なんでだよ。
とはいえ油断は禁物、何か来るならそれの警戒を…攻撃方法が増えているわけではないし、密度が増えてるわけでもない。今のところ何にも無いが…いや、ちょっと待て、気のせいか?攻撃が加速している?違う!これは…血王状態が切れかけてる!?どうして?まさかヘルメースさんはこのことを言ってやがったのか?どうにかしないと避け切れない!というか10分維持するっていう話が無くなっちまう!保温なんて言ってらんねぇ、もっと体温上げないと……っ!あぁっ!もう攻撃が避けづらくきたっ!
「終了です。」
「え?おっと!」
急に攻撃が止んだ…うっ、血王状態が切れかけてるのがバレたか……?確かに“この状態を‘10分間維持するのが条件だったからな…切れちゃったら元も子もないか……って空中でスクリューしながら考えることじゃねぇ、まずは床を踏みしめに行こう。
「わかっているとは思いますが…これがその作戦の欠点です。低い温度だと熱に慣れてそもそもアドレナリンが出なくなる…戦いの際に使えなくなったら元も子もないでしょう?」
なるほど…低い温度だと使いやすさと引き換えに簡単に慣れてしまうと…今の6分間に加え、さっきまで練習してた分でもう体はこの熱を脅威とは思わなくなったってことだ。…そんなこと言ったらいずれこの技って使えなくなるんじゃ…
「60度なんて低い体温じゃなくもっと高くしましょう。庵様であれば…90度ぐらいがいいのでは?」
「90?30度も上かよ!?」
「血王状態なんて熟練者は大体そのようなものですよ。100度ともなると慣れる以前に血が蒸発してしまうのでね。ここが慣れない程度のちょうどいい塩梅なのです。」
うーん、理屈としては理解できるんだが……地味にこの人、熟練者レベルを進めて無いか?できるようになるまでにどんくらいかかんだよ……なんだろう、すごく嫌な予感がする……
「ということで、これからも引き続き頑張っていきましょうね♪庵様♪」
あっ、これ…まだ続く感じだ。
60℃に慣れるって結構すごいよね。知らんけど




