カラクレナイ#97 じっくりコトコト煮込んでく
気づけばもう97話、来週で100話ですわ。
「やあ!ここで訓練していると聞いてきたのだが、庵くんは……あぁ、随分としごかれたみたいだね。」
「アテネ、さん……?」
最初に倒れてから少し経った頃、闘技場に空いた穴から勢いよくアテネさんが滑り出てきた。少しとは言っても意識がある時間がちょっとだから実際に経っている時間は4時間とかなんだが、そこまでいったら俺もなんだかんだ言って熱にはまぁ慣れてきて5分ぐらいは維持できるようになっていた。逆に言えば4時間もかけて4分ぐらいしか成長してないんだが…なんせ慣れとか以前に急に倒れちまうんだ。フィードバックもあんまいいもんじゃないしな、だって…
「意識がなくならないようにするコツ?そうですねえ…気合いとしか言えないんですが…強いて言えば倒れないと頭の中で唱え続けることでしょうか?案外単純なことで脳というのは騙されるのですよ。」
ヘルメースさんはこう言ったが、気合って…この人と話す時大体気合いの話してんな。まぁ確かに言葉の通りにやったら30秒ぐらい伸びたが…やっぱ気合いなのか。サウナのようなものだと割り切った方が楽なのかも知れない。だったらせめて水風呂みたいなものをくれと声を大にして言いたいが…まずはアテネさんだ。今の…地面に突っ伏した状態で話し続けんのは失礼というかなんというか。とりあえず立ちあがろう。
「おや、アテネ様、こんな城の最深部にどんな御用が?」
「決まってるだろう?ここでヘルメース様と庵くんが訓練してるって聞いたからな。その様子を見にきてあげたのさ。」
そう言うアテネさんは以前見たような純白の重厚感あふれる鎧ではなく、白い軍服のような服の上に外套を羽織っていた。まぁ騎士団に所属しているんだから違和感は無いな、周りが全部赤色なこの城の中ではかなり目立つけど。
それはそれとしてせっかくきてくれたのだから何かしらアドバイスが貰えるのでは?俺にはとても気合いだけじゃこの技は乗り越えられない。せめて手がかりぐらいでもくれればいいのだが。
「なぁ、アテネさん。この技ってなんかコツとか無いのか?」
「この技?あぁ血姫状態のことか?そうだなぁ、最終的には自分の気力で耐えるとしか言えないのだが…庵くん、君は熱を上げすぎて無いか?」
「熱を?」
ヘルメースから言われてるのはただ魔力を込めて熱を上げることぐらいなんだが…上げすぎ、か。確かにゾーン状態に入った後もそのまま魔力を込め続けていた。確かにそんなことをすれば耐えれる温度も耐えれなくなってしまう。意識したことなかったな……
「あぁ、確かに高い温度にするのも大事なんだが、実は最初のうちは案外低い温度でも血王状態は使えるんだ。だから…無理に温度を上げる必要はない、ちょうどいい温度を維持すればいい。……ふむ、この様子だとヘルメースの説明が足りなかったかな?」
本当にそうだ。アドバイスの質が違う。すごくわかりやすく話してくれてこちらも助かるぜ。ヘルメースさんは…あの時はわかりやすかったんだけどな。色々と魔式が使えない理由を考察してくれたりしてたんだが…急にIQが下がったような気がする。大丈夫か?あんなんで。
とにかく、ゾーンになるぐらいの…俺の場合大体60度ぐらいで魔力を込めるのを緩めて体温を維持すればいいわけだ。要するに保温だな。弱火でコトコト煮詰める的なニュアンスだ。なるほど、それだったら長くできそうだ。
「庵様のことを考えてですよ。時には説明しない方がいいことだってあるんです。」
「嘘いえ、こんなこと教えたらすぐに庵くんが帰っちゃうから教えなかったんだろ?君はなんだかんだで気に入った人を近くに留めたがるからな。」
なんだよそれ、まぁ泣いて喜ばれるぐらいだからそりゃ気に入られてんだろうけど、こっちとしては迷惑ではある。こっちとしては猶予が1年しかない中でできるかもわかんない魔式をどうしても習得しないといけないんだ。言ってしまえばその前段階であるここでそんな時間を使いたくはない。まぁ、好意はありがたく受け取っておこう、それじゃ……
「そう言うことだったら、残念だけどここでお別れだな。今日で習得して明日には城を離れてやるよ。」
「ふっ、そうですか。まぁ、そういうことにしておきましょう。アテネ様、ご観覧なら座席に。」
「そうか。じゃ、期待して見ておこう。」
アテネさんは大きくジャンプして闘技場の座席が置かれている場所に移動し真ん中の、俺たち全体が一番よく見える場所に座る。後ろから見られてるのはなんかむず痒いが気にしないで頑張っていこう。
魔力を込めて身体の熱を上げていく。体温がおよそ60度ぐらいになったら込める量を最小限にしてこの体温を維持する。はぁ…視界がゆっくりになって…いい感じに…ハイになってきやがったぜぇ!観客がいてなんぼのもんじゃい!俺の勇姿ってやつを見せてやるぜェッヘイ!!
「では…その状態を10分維持できれば合格としましょう。もちろん、手加減は…抜きでねっ!!」
ヘルメースが杖を空中に放り投げると今までとは比べ物になんない血腫の波が押し寄せる。へっ、手の内を離れさせて意図的に暴走でもさせてんのかぁ?でもま、俺にはあんま関係はねぇけどなぁ…ハッハー!動きがぬるすぎて話になんねぇぜ!!こんなもん……
「余裕だなぁっ!!」




