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しばらく歩き続けると、伐採地である地点が見え、俺らはそこに赴いた。
「へえ、結構開拓してるな」
抜根などもされており、かなり本格的だ。
「ここら一帯は自由に木を伐採しても良い自由地区になってるらしいな。それと平行して、開拓事業もしてるって訳か」
「畑でも作るのかなー」
たしか、魔王との戦いであらゆる産業がガタガタになっていると聞いた事がある。とりわけ、鉱山の採掘や森林の伐採、河川や湖、海での漁などはほとんど壊滅的な損害を受けたとも聞く。
今やっと、それらの産業が回復しつつあるのだろう。
「しかし、魔王が死んでもモンスターが健在じゃなあ。状況はあんまし好転してなさそうだ」
「そのためにっ。私達が必要になる。でしょ?」
「お、分かってきたなフラン。その通りだ。木こり達のため、世のため人のため、ひいては人類のため、何より俺の金のため頑張るぞ」
「最後の最後で台無し~」
近くにあった小屋を覗いてみると、ちょうど数人の木こりが居たので、これからモンスター討伐のために森へと入ると伝えておいた。
「気をつけてな。衛兵達は街道のモンスター討伐や警戒でこっちまで来てくれないから助かるよ」
「おう、仕事だからな」
フランと共に、切り株を跨いでいきながら森へと入る。
「深くはない森だな。そこにゴブリンが拠点を作るとは。この間のクイーンアントといい、モンスターどもが図々しくなってきてやがるな」
「街道で頻繁に人が襲われてるようだし、生息圏がどんどん広がってるのかな」
にも関わらず軍縮だもんな。被害はますます大きくなるだろう。
「もしかしたら、俺のこの商売······かなり先見の明があったのかもな」
その内流行るかも。
辺りを警戒しながら奥へと進む。
事前に聞いていた通り、拠点までの道には木こり達によって折られた小枝の道標があって迷わずに進める。
「近いな」
「うん」
ゴブリンの物と思われる糞尿と、捨てていったらしき魚の骨などの痕跡が散見される。
幸い、ここまで他のモンスターと遭遇してないから、このまま静かに奇襲がかけられそうだ。
「······あれか」
やがて、道の奥に自然物ではない影が見え始めた。
木や草などを雑に組み合わせた原始的な家。鳥の巣をでかくして、もっと不恰好にしたような物だ。
それが三つほど。その周りにゴブリン達がウロついている。
あの奇怪な鳴き声を上げながら、木の実や何かの肉などを食ったり運んだりしている。ザルの代わりだろうか、木こりの帽子や兵士の兜などに木の実を入れて棍棒で擦ってたりする。
「10、13、14······確認出来るのは14だな」
「オーガが二体居るね」
拠点の真ん中辺りにどっしりと座る巨体はオーガだ。
数は多いが、どいつもこいつも油断していて武器などはほとんどそこらの地面にほっぽり出されている。
奇襲をかければ楽に済みそうだ。
「よし、フラン。まずはあの家を焼き払ってくれ。きっと中にも何体か居るはずだ」
「おっけー」
「家に火が付いたと同時に、今度はあの中央付近に氷属性の魔法を放ってくれ。火が広がるのを防ぐ意味もあるが、武器を地面に凍りつかせて欲しい」
「任せて」
他にも細かい打ち合わせを二、三して俺らは別れた。
俺は北側に回り、フランはそのほぼ対極。挟むようにして配置する。
ゴブリン達は気づいてない。
「······」
俺が合図の手を上げると同時に、炎の弾が
──ドドウッ──
と数発放たれ、それぞれの家に狂いなく直撃した。
『ギギイイイィッ』
家から、獣のような雄叫びを上げながら、火だるまになったゴブリンらが飛び出す。
それと同時に
「アブソリュート・ゼロ!」
というフランの上級魔法の詠唱が響きわたる。
白い靄が、水流のようにうねって空を切り、オーガ達が座る中心部に直撃する。
『グゴオオオッ』
『ガゴオオオッ』
『ギャギイイッ』
『ギャギャッギャッ』
俺の元にまでぶわっと届く冷気。霜だらけになったオーガやゴブリンらが転がるようにして逃げ出す。
「はっ!」
そこで俺も動く。まだ漂う白い冷気をなるべく吸いこまないように呼吸を止める。
まず、あぶり出されたゴブリン達に一気に詰め寄り、その急所を切断したり貫く。
声も上げずに即死するゴブリンを跨ぎ、真っ白になった頭を押さえるオーガの後ろに回る。身震いする寒さをぐっと堪え、風属性を纏った剣で首を一気に切断する。
その頭部が地面に転がると同時に、足元で悶絶するゴブリン達も同じように片付ける。
半分以上を倒した辺りで、ようやく何体かが俺へと敵意を向ける。
しかし、武器は地面に凍り漬けにされており、拾い上げようとしたゴブリンらは手にする事が出来ずに悲鳴のような声を上げた。
速やかに止めを刺し、やっと反撃体勢を整えたもう一体のオーガの喉元に炎属性の刃を突き刺す。
生き物を焦がす嫌な臭いが辺りに溢れ、オーガの身体は大きく跳ねるようにして後ろへと倒れていった。
「サンダーアロー!」
残ったゴブリンらにフランの援護射撃が入り、そのまま絶命していく。
まだ生きている者達にも止めを刺し、燃える家には、その火が周囲に広がる前にフランが水魔法を使って消火する。
勝負は二分とかからずに着いた。
「これで全部か?」
「思ったより少ないね?」
フランと共に首を傾げていると
「!」
こちらへ近づく気配を感じた。
「まだ居るぞ!」
二人で構えると同時に、茂みの向こうから怒り狂ったゴブリンとオーガらが現れる。
オーガが一体、ゴブリンが五体だ。
「フラン、援護頼む」
前へと出て、反撃の体勢を整える。
「っ!?」
その時、まだ別の気配が居る事に気づいた。
木の上。枝の上に居ると感じ取った。
「フランっ、気をつけろ! 木の上にも居る!」
「!」
そう注意したと同時に
──ヒュッ──
矢が風を切る音がした。
反射的に剣を構え、叩き切る準備をする。
「?!」
しかし、こちらに向かってくるはずであろう矢の姿が見えない。
代わりに──
──ドッ──
『グギイッ』
矢が肉に突き刺さる音と、ゴブリンの短い悲鳴が聞こえた。
お疲れ様です。次話に続きます。




