87
本日3本投稿予定です。
「食事中にすまない。今いいかね?」
そう言って少し伺うように言うのは南自治区のエイブ会長だ。アーミアントの討伐依頼をした人物だ。
立ち上がりかけるフランを止め、俺が対応する。
「フラン、俺のお代わり分残しておいてくれよな」
皿とパンを置いて客人達の方へと向かう。
「よ、待たせたな。立ち話もなんだから応接間に来てくれ」
「いいのか? 食事がまだのようだが」
「平気だ。一応、俺がここの店の責任者だしな。ところで、そっちの面々は?」
会長の後ろには三人の男女が居る。
「こちらの方々は私と同じ自治区の代表をしていたり、郊外の畑や林を管理している立場の人達だ」
「そうか」
なるほど。
やはりこれは応接間でちゃんと話を聞いた方が良さそうだ。
各代表者達を酒場へ案内し、昨日俺らが夕食を食べた席を勧める。
「ちゃんとしたソファとかは無くてな。すまんがこれで勘弁してくれ」
「いや、大丈夫だ」
改めて、全員で席について用件を聞く事に。
「では改めて。ようこそスレイヤー屋へ。本日のご用件は?」
「まず、私からだ」
最初に名乗りを上げたのは会長だ。
「先日、君らに頼んだ件なんだが、お陰でモンスターがピタリと出なくなったんだよ。まだほんの二、三日とは言え、明らかに効果を実感してる」
「そいつは良かった」
「今日はその報告と、約束の依頼金を持ってきたんだ」
200ゴールドの銀貨数枚がテーブルに出される。
「まいどっ。また何かあったら相談してくれ」
「それでだね。私が今回の事をこちらの方々に話したら大変興味を持たれてね。最近、どこもモンスターによる被害が増えているんだ。衛兵に頼もうにも手が回らなくなってるみたいだし、軍はなかなか動いてくれない。みんな困ってるんだ」
「そこで、貴方の話を聞いたってわけ」
少しふてぶてしい婦人がそう言う。
「貴方ならモンスターを何とかしてくれるのよね?」
「討伐は出来る。が、永遠に煩わされないようにしたり、モンスターの被害をゼロにするのは無理だ。だが、駆除を行えばある程度の効果は期待出来るだろう」
そう言うと、他の二人、爺さんとオッサンが質問してくる。
「どのくらいかかるのかね? 我々は基本的には数千ゴールドの予算を立てているのだが······」
「それは依頼の内容によるな。例えば下級モンスター数体の討伐だったら多分数百ゴールドで済む。けど、中級モンスターとかだったら一体でも数百くらいするし、上級なんてなったら数千ゴールドになる。実はそこんとこの料金表を今後作成する予定でな。今はとりあえずの暫定料金でやらせてもらっている」
「なるほど」
「ふうむ、なら十分予算内で足りるか······」
代表者達は少しの間、頭を捻って考えていた。
「それでは。すまなかったね、食事の邪魔をして」
「仕事だからな。気にしないでくれ。依頼は全部三日以内にとりかかって終了させる予定だ。もし、無理そうなら改めてこっちから話をしに行く」
「ええ、そうしてちょうだい」
「それじゃあな、若いの」
商談は数分程度で纏まり、俺の手には依頼書──と言っても、俺がメモしただけのちゃちな紙が残された。
「一度に三件か。いきなり依頼が飛び込んできたな」
思わぬ依頼量だ。あの会長が知り合いに話すという形で宣伝してくれたからだろう。
つまり、この三件もちゃんと達成すればまたそこから誰か知り合いに噂が流れ、そこでまた依頼がやってきて······。
ねずみ算式に増えていくかもしれない。
やる気がぐんっと上がってきた。
庭に戻り、待っていた皆に今の話をすると、驚きの反応が多く見られた。
「やったじゃんトレイル!」
「まさか一度に三件も······」
「おう、こいつは忙しくなるぞ。みんな、飯を食い終わったら酒場へ集まってくれ」
仕事の件は一旦置いといて、まずは力を付けるために飯をしっかりと食う。
「という訳で、まずは皆にも依頼の内容を共有して貰おうと思う」
一堂に集まったメンバーらの中心にメモを置く。
「依頼は全部で三件。一つは西自治区の会長から。一つは城壁の外にある農園の管理者から。そしてもう一つも城壁の外、近隣の林や森での伐採等を行っている木こり達の代表者からだ」
全員がメモを見る。
「西自治区の会長の依頼は先日の南自治区での依頼に似ている。小型のモンスターが頻繁に現れるようになって生活圏を荒らしているのをどうにかして欲しいという話だ。これに関しては城壁の穴が関係してるかもしれんので、モンスターを討伐しつつ原因の調査だ」
「城壁の穴?」
ヴィオラが怪訝な顔をする。
「城壁に穴が空いてると言いますの?」
「ああ、そうか。お前は知らなかったな。そうなんだ。俺らのこの拠点からそう離れてない地点にも崩れた跡があってな。そこから小型モンスターが迷い込む事もあるみたいだ」
「壁は住民の生命線。それを放置してるだなんて······。ここの町長は誰だったかしら?」
怒りを滲ませるヴィオラ。
「いけませんわ。ここで言っても仕方ありませんね。この件に関してはラインフォース家の私として別に対処しときますわ」
「おう、任せたぞラインフォース嬢」
「茶化さないでくださる?」
どうやら領主の家が預かり知らぬ事だったらしい。そっちは任せるとしよう。
「で、二件目だ。これは農園の管理者からの依頼だ。東街道から出て少し南側に行った所に農園があるんだが、そこにドンボアの群れが現れたらしい。作物を食い荒らしてるらしくてな。それの駆除依頼だ」
「ドンボアかー。一応、中級モンスターだし群れだから気をつけないとね」
「そうだな。で、三件目。木こり達からの依頼だ。どうも伐採地の近くにゴブリン達が拠点を築き上げたらしくてな。オーガも居るらしく、彼らではどうしようもないとの事だ」
皆を見回す。
「てな訳で。どういう順番で片付けていくべきだと思う?」
「······ねえ、トレイル」
と、ここで。フランが神妙な顔をして言った。
「せっかくだからさ、チーム分けしない?」
「チーム分け?」
思わぬ意見に、俺も何かピンっとくるものがあった。
お疲れ様です。次話に続きます。




