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 夜になり、夕飯の時間となった。


「まあ、酒場で食事なんて私初めてでしてよ。お昼はお庭で丸太に座っての食事。そして夕食は酒場のテーブル。素晴らしいわ! 新しい経験が溢れてますわ~!」

「そいつは良かったな」


 人数も増えてきたので、俺らは庭ではなく、酒場を使って食事をする事にした。せっかくフランが綺麗にしてくれのだ。今こそテーブルや椅子の出番だ。


「フラン、手伝おうか?」

「ありがとっ、お願い」


 人数が多いので食事の用意も大変だ。大鍋や大皿を運ぶだけでも重労働だ。


 フランを手伝い、熱々のシチューや、キノコと豚肉の羊肉のグリル、それに塩とスパイスを絡めたパスタなどを運んでいく。


「お野菜も大事だよ!」


 俺が苦手なのを知っときながら、生人参や生玉ねぎを細く刻んだサラダまで用意してるのは無慈悲だが。


 食卓に並ぶ豪華なご馳走に、一同がおおーっと声を揃えて上げる。


「今日は豪華ですね」

「もう食ってもいいだかや?」


 俺もフランも席に着いたところで、やっと食事が始まる。


 ナズとターナは黙々とバクバク食べ、ルッカとフルトは穏やかに。そして、ヴィオラは流石に上品な所作で口へと運んでいく。


「ヴィオラさんのお口に合えばいいんだけど······」


 と、心配そうに言うフランにヴィオラはニコリと笑いかけた。


「合うも何も、とっても美味しいですわ! なんて表現すればいいのかしら。手の温かみ。そう、温かみですわ! 作った人の温もりが感じられる料理ですわ~!」

「そ、そう? えへへ」

「でも、お前って毎日豪華で美味いもん食ってんだろ? それでも庶民の味は美味いもんなのか」

「むしろ普段あまり食べない食べ合わせや味付けだから新鮮ですわ。それに、冷えてないし」


 シチューをゆっくりと食べながら言う。


「家で食べる時は大抵冷えてますの。毒があるか無いか調べたりもするけれど、食べる部屋と作る部屋が遠かったり、並べるのに時間かかったり。そういうのが全部重なってぬるくなってたりしますわ。そこへきて、このお料理達は熱々ですわ~!」


 貴族は貴族で大変なんだね、とフランが呟くように言った。




 飯が終わり、新たに加わった仲間に先住民らは興味深々のようであれこれ質問したりしていた。


「なあなあ、ヴィオラさん。オラ、お嬢様ってどんな趣味を持ってるか気になるだ」

「趣味って程のものではありませんが、詩を読んだり劇を見るのは嫌いではありませんわ」

「そこはお嬢様っぽいですね」

「ですが。やはり体を動かすのが一番ですわ。己の力を持ってモンスター達を蹴散らして民の暮らしを守る。これこそ淑女の嗜みですわ~!」

「す、凄いね······」

「ははは、僕らみたいなインドア系には眩しいな」


 案外早くも場に溶け込み始めるヴィオラ。

 その様子を俺とフランは少し離れて見守った。


「ヴィオラさんって意外に優しいね?」

「まあ、そうだな」

「私、もっと怖くて破天荒な人だと思ってたよ。噂は聞いてたからね」


 ヴィオラはこの地方の兵士達の間では有名人だった。

 その強さもそうだが、何よりもはちゃめちゃな性格をしていて、とんでもないじゃじゃ馬だと有名だった。


「でも、まさかそれがラインフォース家のお嬢様だったなんて」

「だな。それにしても······」


 柔らかい笑みで何か答えたり、時折豪快に笑い立てるヴィオラ。


「あいつ、俺にだけ態度悪いんだよなあ。何でだろ? 俺にだけはズケズケと言いたい事言うんだが······」

「······」



 結局、この日はそのまま新しいメンバーを祝うような盛り上がりの後、そのまま眠る事になった。









 翌日。



「ん~っ、ふうっ。朝か」


 窓を開け放ち、爽やかな朝の光を浴びて今日も一日が始まる。


 ヴィオラも加わった俺の店のメンバー。これで戦力も充実してきた。

 今日は改めて彼女にこの商売のルールでも教えてやるか。


 身支度を整え、下へと下りる。


 一階の酒場に下りると、奥の台所からちょうどフランとルッカの二人が鍋を運んでくる所だった。


「おはよー、トレイル」

「おはよう、トレイル君」

「よ、二人とも。おはようさん」


 どうやら少し起きるのが遅かったようだ。既に朝食が始まろうとしていた。



 昨日の夕飯は外だったが、朝食はまた外で食べる事にした。やはり、朝の空気を吸いながら食うと飯がさらに美味くなるからな。


「フルトさん、バターは要りますか?」

「ありがとうナズ君。貰うよ」

「ヴィオラさん、シチューはこのくらいで足りる?」

「ええ。でも、美味しそうだからお代わりすると思いますわ」

「ルッカさん、本当にパンは要らないずら? もしかして遠慮してるんじゃないかや」

「う、ううん。私、少食だから······」


 無人で廃墟同然だったこの拠点が、ここ数日でこんなに賑やかな場所になるとは思わなかったな。


「フラン、大盛りで頼む。今日もモリモリ働くからな」

「はいよっ」



 朝食を摂りながら、ヴィオラに俺らの今現在の目的や目標を教える事にした。


 ついでに、メンバー全体にも共通の認識や目標として共有したかったので、改めての確認という意味でもちょうど良かった。


「なるほど。つまり、まずはこのお店の存在をもっと多くの方に知らしめてご覧になりたいと。そして、モンスターを利用しての新しい技術や道具の開発。これを達成して副産物でも利益にしていきたい。それらを同時にこなしていく。これが今のところの目標かしら?」

「その通り。みんなも、そんな感じで胸にとどめておいてくれ」

「分かりました」

「難しいけど、頑張るだ」

「僕らもなるべく現場に出て素材を集めなくちゃね」

「う、うん」

「トレイル隊長! ずばり、今日の予定は?」

「未定だ」

「がくっ! もう、しまらないな~」

「いや、そうは言ってもな」


 このままモンスター討伐に行くのもアリだが、留守の間に依頼が来たりするのももったいないし、どうせなら依頼料を貰いながら討伐したいからな。


 依頼が来るまではここで待機してた方がいい。

 もちろん、出来ればすぐに討伐とかに赴きたいが······。


「あ、トレイルさん」


 そんな風に今日の予定をどうしようかと考えていたら、ナズが呼んだ。


「誰か来ましたよ」


 庭先に、見知らぬ人間が数人現れた。

 その先頭に居る人間には見覚えがあった。



お疲れ様です。次話に続きます。

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