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「これがトレイル達の家?!」
「す、すごい······」
「まあ、借り家だけどな」
俺達の拠点を見たフルトとルッカ二人の第一感想は純粋な驚きその物だった。
実際、まだまだ改善と修復の余地はあるものの、元の建物自体は立派な酒場であり宿なんだ。そこが家だと言われれば驚くだろう。ましてや、この二人は俺の出自を知ってる訳だし。
「見ての通りここは宿屋だからよ。まあ、まだ全部の部屋が元の機能を取り戻した訳ではねえけど、二人分の部屋くらいならある」
二階建ての宿で、個室含めた寝室は全部で十以上もある。
俺とフランは個室で、ナズとターナが共同部屋を使ってる(ターナが寂しがり屋だからナズが一緒に寝てやってる)が、部屋の空きはまだまだ有る。
「けど、掃除しただけの部屋がほとんどだからよ。布団とかに関してはちょっと調べてみないと分からん。あー、フラン。どうだったか。二人分の寝具ってあったか?」
「多分あったよ。でも、しまってある奴だったから今すぐ干さなきゃ」
「分かった。ナズとターナは裏か。フラン、二人にも手伝うように言ってやってくれ」
「オッケー」
宿の裏に走っていくフランの背を、フルトとルッカは戸惑うように見送って言った。
「トレイル、本当に良いのかい? その、あまり手持ちも余裕なくて、宿代が払えるか······」
「おいおい、水くさい事言うなよ。もちろんタダだよ」
「トレイル君、わ、私もあまり手持ちが······」
「もちろんタダだ。ルッカは特に」
「え、ええっ?!」
女の宿泊客なら大歓迎だ。
「トレイル、すまない。この借りは必ず倍にして返すよ」
「······ぷっ」
「あ、あれ? 僕、おかしな事言ったかい?」
「ふふふ。いや、そのセリフ。ずっと俺が金借りる時に言ってたセリフだからよ」
「あ······。ははは、そうだったね」
釣られて笑うフルト。
「まさか逆に言う日が来るなんてね」
「ああ。これは有耶無耶になった借金の代わりみたいなもんだ。気にしないでくれ。ルッカも。こんな形で誤魔化すようなんだが、とりあえず借金のお返しって事で」
「う、ううん! 私は全然いいよ! で、でも、本当にいいの?」
「お前なら大歓迎だ。特に、毎晩添い寝をしてくれるなら何日居てもいいぞ」
「え、ふええっ?!」
「こらこら、トレイル。ルッカはそういう冗談に弱い事知ってるだろ?」
半分本音だからつい。
「まあ、ともかくさ。二人とも今日くらいは何も心配せずにゆっくりしてけよ。飯だってあるからさ。もちろん、金なんて取らないから安心してくれ」
「トレイル······すまない」
「トレイル君、ありがとう······」
二人はじーんっとするように、その場で俯いた。
「そうだ。さっきも話したが、フラン以外にも同居人が二人居るんだ。後で挨拶してくれ」
と、言った側から、フランがナズとターナの二人を連れて戻ってきた。
「フルト君、ルッカちゃん。この二人が私達の同居人であり、同僚のナズちゃんとターナちゃんだよっ」
「は、初めまして。ナズです。あの、ここには本当に厚かましくお世話になってまして······」
「オラ、ターナずらっ、好きな食べ物はわりかし何でも食べて、趣味は汚れてる泥とかを擦る事でっ······」
早速それぞれの個性のある自己紹介をする二人。
そんな二人を見てフルトとルッカらも挨拶した。
「突然訪ねたりしてすまないね。僕はフルト。トレイルとは軍に居た頃の友人だよ」
「わ、私も。あ、あの。トレイル君が友人だと思ってくれてるなら、だけど······」
互いに遠慮がちな自己紹介を交わす四人。
「ま、そんな訳だからよ。ナズ、ターナ。今日の晩飯は六人分用意しなくちゃならん。後でフランを手伝ってやってくれ」
「はいっ」
「ほいじゃあ、オラ薪割ってくるだーっ」
「じゃあ、私はお皿の用意をっ」
「あ、いや、まだ夕飯まで時間が──」
俺の言葉も待たずに二人はすぐに走って行ってしまった。
「はは。すまんな。二人とも少し緊張してるみたいだ」
「すまない。僕らも手伝うよ。いくらなんでも世話になりすぎてるから」
「いや、今日は大変だったんだ。ゆっくり休めよ」
俺がそう言うと、フランも後押しするように大きく頷いた。
「そうそう! 二人はさ、今の内に部屋でも選んでてよ。それまでに必要な物を揃えておくからさ!」
「で、でも······」
戸惑うルッカをフランが背中を押す。
「いーから、いーから! あーあ、私も二人と色々話したいのになー」
「悪いなフラン。客人のおもてなしは女将にしか任せられないからな」
「ふふ、りょーかいっ」
寝具などの用意のため、フランは家へと入っていった。
俺は、改めて二人に今後の事などを聞くために、近くにある丸太イスを勧めた。
「ここで一番の特等席だ。素材の良さをふんだんに使用した天然チェアーだ。二人ともそこに座ってくれ」
「ありがとう」
「お、お邪魔します」
三人でゆったりと座る。やっと落ち着いて話せそうだ。
「まさかトレイルがこんな立派な店を構えているなんて」
家を見上げながらフルトが感嘆の声を漏らす。ルッカも見上げて頷いた。
「本当。流石はトレイル君だね」
「ふ。惚れたか?」
「ふえっ?! え、あ、えっと、その、あの······」
「こらこら、トレイル」
「冗談だ。俺みたいな金にだらしない男に惚れたら火傷するぜ」
「いや、そうじゃなくてトレイル。はは、まあ、いいや。僕が口出す事じゃないし」
「?」
なぜか意味ありげに笑うフルト。ルッカは下を向いたままだ。
「でも、こんな家を手に入れたなんて、もしかして借金でもしたのかい?」
「俺がそんな事する男に見えるか?」
「見えるって言うか、実積が多数あるんだが······」
「おっと、こいつは不利な流れになっちまったな」
三人で小さく笑う。懐かしい感じだ。
「トレイル君、新しい商売を始めたって言ってたよね? それってお宿屋さん?」
「いや、違う。話せば長くなるっつうか、ちょいと自分でも良く分かってないんだがな──」
モンスターを討伐したり、薬草や素材を集めて稼ぎにしていると説明すると、二人は興味深そうに身を乗り出した。
お疲れ様です。次話に続きます。




