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「そうか。お前ら二人ともクビにされたのか」

「う、うん。わ、私はともかく、フルト君までクビにされたのは驚きだけど······」


 三人でベンチに座って話し込む。久しぶりに集まったのに、会話の内容は暗い。


「ま、まさかトレイル君まで居るなんて。あ、あははー、世間は狭いねー!」

「お、おう。そうだな」


 ルッカの奴は何故か俺と話す時はテンションがおかしくなる。もしかして苦手な奴だと思われてるのか。


「でもまさか僕らは三人とも追い出されていたとはね。はは、そのお陰でこうやって再開したんだけど、いいんだか悪いんだか······」


 自嘲気味に笑うフルト。ルッカの方はあからさまにガックリと落ち込んでいた。


「うう、私ってやっぱりダメだからクビにされたのかなあ」

「そんな事ないだろ。少なくともお前らは頭良かったし、真面目だったし。俺はともかくとして、明らかな落選ミスだろ」


 そう言うと、ルッカが嬉しそうにはにかんだ。


「そ、そうかな? えへへ、そう、だといいな」


 確か、ルッカは家族との仲は悪くなかったはずだし、故郷はここから遠くはなかったはずだ。


 彼女は普通に家に帰るのだろう。


「二人とも故郷まで一緒に旅するのか?」

「うん。その予定だよ。僕もルッカも方向は同じだしね。一人より二人の方が安全かと思ってね」

「そうか」


 ふうむ。

 この二人は同じ部隊に居たし、歳も同じくらい。しかもタイプも学者肌同士。

 なーるほど。あまり邪魔するのは無粋ってやつだな。

 あんまし二人の時間を取るのも良くないな。


「僕らはこの後の商人の定期便に乗せてもらう予定なんだ。荷物を預かってて貰ってね。そこに今までの書物とかノートとかあるんだ。数少ない財産ってとこかな」

「わ、私も。お金以外の物は大体預かって貰ってるの」

「そうだったのか」

「トレイル。君はどうするんだい?」

「あー、俺は······俺はしばらくしてから出る予定だ。だから気にしないでくれ」

「そうか。君も一緒だったら物凄く心強かったんだが、仕方ないな」


 残念そうに笑うフルト。


 本当はこの二人の専門的な知識とかも何かしらに役立つかもしれないから俺の店に誘いたかったんだが······。

 まあ、こればかりはしょうがない。


「それじゃあ、トレイル。久しぶりに会えて良かったよ」

「あ、あの、トレイル君······。その······ま、またね」

「おう。あ、俺はかなり長い間ここに居る予定だからさ、二人とも一段落したら遊びにでも来てくれ。北門近くの酒場にいるからさ」

「分かったよ。それじゃあ」


 歩き去っていく二人の後ろ姿を少し名残惜しく見送った。


「あの二人はモンスターの研究とかしてたんだっけか。その知識、俺の商売に活かせそうなんだけどなあ」


 惜しい人材達だったが、スレイヤー屋は危険も伴う。行く当てが無いなら誘ったが、こればかりはしょうがないな。


 帰るとしよう。



 その後は特に誰に会う事もなく、家に帰った。


「あ、お帰りー」

「お帰りなさい」

「お帰りだー」


 庭先でフラン、ナズ、ターナの三人がワイバーンの素材をあれこれいじっていた。


「よ。何やってんだ?」

「あのね、ターナちゃんの本を見ながらワイバーンの素材の保存加工をしてたの。ほら、この尻尾とかはこのままだと腐っちゃうから」


 買ってきた専門書を使って、早速加工を施しているらしい。


「でね、ナズちゃんの本によるとね、モンスターの肉質をなるべく劣化させない薬品とかも作成出来るらしくてさ」

「ほう、それは興味深いな」

「でね、必要な薬草とかが──」

「オーケー、俺も作業を手伝うから、やりながら教えてくれ」


 みんなで素材加工をしながら、あーだこーだと新しい知識を共有した。



 作業が一区切りついたので、昼飯にすることにした。

 そろそろ中の竈も使えるようになってるはずだが、天気も良いし、外で食うのは美味いしで何時も通り庭で昼飯を食う。


 食いながら、俺はさっき考えた事。つまり、今現在のスレイヤー屋の方針について皆に話してみる事にした。


「と言う訳でよ。とりあえず、今日明日の飯は心配要らなくなった事だし、これからのスレイヤー屋はどうあるべきか。それに関して皆の意見を聞きたいんだ」

「うーん。方針ねー」


 スプーンを口に当てながらフランが唸る。


「やっぱり、もっと多くの人達にこの仕事の事を知って欲しいかな。それで、有料のモンスター討伐が当たり前っていう認識が広まれば、安定すると思う」


 隣のナズに目で促すと、遠慮がちに意見を述べた。


「それと、私やターナちゃんがやってる作業によって出た生産品の安定したルートを確保したいかもです」

「そうずらねー。店長達の直接的な稼ぎと、オラ達の、ふく、ふく······服屋さん物?」

「副産物か?」

「そう、それずら。副産物でより効率よく稼ぎたいずら」


 やはり、基本的には今まで通りにやってくのが良いんじゃないかという感じか。


 ならば、後は宣伝方法。そして、細かい報酬金や料金設定などか。


「ふーむ」

「どうしたの? トレイルが考え込むなんて珍しいね」

「いやな、どうももう少し何か他の仕事もありそうな気がするんだよ」

「他の仕事?」


 つまり。


「モンスター倒して、素材売って、ポーション売って。そういうの以外にも、何かしらの仕事があるような気がするんだよな」

「うーん。あるかなあ?」


 こう、すぐここまで出かけているんだが、スッと出て来ないんだよな。


 モンスターを倒せる。

 その一点だけで、いくらでも他にも出来そうな事があるような気がするんだよな。


「それと、今後の事を考えればもっと仲間が必要な気がする。あくまで理想像なんだが、これから店が有名になって、たくさん依頼が舞い込んだら四人で回すのはキツいからな」

「それはそうだね」

「はい。それに、私みたいに戦闘でお役には立てない人間も居ますし、他にも戦える方が居た方がより討伐依頼を受けられると思います」

「ナズさは役に立ってるだよ~」

「あ、ありがとターナちゃん」


 確かに、ナズの言う通りだ。

 討伐依頼を多くこなすには戦力が必要だ。俺やフランに匹敵する程の人間は難しくとも、それに準ずるくらいのレベルの人間が仲間に加わってくれれば助かるんだが······。


「あと、ついでに。やっぱり店の名前を変えたい」

「あ、まだこだわってたんだ」

「ああ。今はまだ『スレイヤー屋(仮)』だからな。もっと凝った名前にしたい」


 それに、スレイヤー屋と言いつつも素材売ったりポーション売ってるんだ。


 そこの辺も、もっと総合的に言い表した名前にしたい。


「ま、名前とかはボチボチ考えてくか······」


『た、大変だー!』


「ん?」


 青空会議に響き渡る、緊急を知らせる声。


 見知らぬ男が庭に駆け込んできた。


「なんだ、客か?」

「ぜえっ、ぜえっ、ち、違う! 俺は伝言係だ!」


 男が荒い息を整えて言う。


「衛兵から緊急の依頼だ! 街道に出た定期便がモンスターに襲われている!」

「なんだと?」


 定期便。


 嫌な冷や汗が背中を伝った。


お疲れ様です。次話に続きます。

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