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「だりゃ~!」


 ──ズッコーンッ──


 ターナの回転ハンマーのクリティカルヒットによって最後のブラットが吹っ飛び、戦闘は終了となった。


「お疲れさん」

「ふい~。やったずら!」


 現れたブラット七匹を全て撃破。小型の下級モンスターとは言え、こんな堂々と群れが町の中に入ってるのは驚きだ。


「調査に来て正解だったな。もしかしたら近くに巣とかあるかもしれんし」

「ずら~。ブラットは何にもお金にならないだ。ボーナスは無しだ~」


 少しガッカリするターナ。


「まあ、仕方ないさ。森の中で数時間狩りをしてもなかなか金には結びつかないんだからよ。気を取り直して行こうぜ」

「んだ」


 さらに奥へと進む。

 先ほどと同じようなキノコや、見慣れない植物なども見つかり、興味が沸いてくる。


「ふーむ。後でフランにも見てもらうか? いや、それよりもナズの方が······」

「あっ、店長! スライムずら!」


 前方からゲル状の塊が現れる。


「ずら~。オラのハンマーじゃあんまりダメージ与えられないだ」

「俺がやろう」


 一体ではなく、やはり数体現れるスライム。

 ここは軽く氷属性を纏った剣で斬っていく。


「はっ!」


 ──ズバッ──


 スライムらはブルルッと震えた後、ぐにゃりと地面に溶けていった。


「ずら~······またお金にはならないだ······」

「そうだなあ」


 まあ、そもそも金になるモンスター自体少ない。


 軍ではモンスターの生態や能力、身体構造などを研究して人類の役に立てないかという研究もしてると友人から聞いた事がある。

 その研究で、今は金にならないモンスターが富になったりしたらウハウハなんだけどな。


「さ、もう少しで壁だ。行こうぜ」

「んだ」

「そう落ち込むな。今度新しいフィールドを調査しようと思ってるんだ。連れてってやるから、そこで稼ごうぜ?」

「ほんとずら? んだ! オラ頑張るだよ!」


 前の薬草ポイントは復活に時間かかるだろうし、どこか新しいポイントを探そうと考えている。


 この林にあればとも思ったが、流石にそう上手い話はなかった。



 元気を取り戻したターナと共に進む。

 それ以上はモンスターとも遭遇せずに、目的の壁まで到達した。このパデスの町を囲う城壁だ。


「でっけーずらね~」

「そうだな」


 一般的で規格化されている方式の城壁だ。高さは約15シルト。成人男性の身長9人分よりやや低いくらい。厚さは3シルト程だ。


「だいぶ放ったらかしだな。手入れはされてないが、壊れてもいないようだが······。ターナ、少し壁に沿って西へ行ってみよう」

「分かったずら」


 東側は北門の方向だ。あっちは整備も行き届いている。あっちからモンスターが侵入してるとは考えにくい。


 なので、壁を観察しながら西側に進む。


 すると──。


「あっ」

「ビンゴだな」


 木々の向こうに、岩が崩れたような跡が見えた。

 近くに行ってみると、それはやはり崩壊した城壁であった。そのすぐ横は用水路になっており、川から引いた水流がゆっくり流れていた。


「なるほど。ここからか」


 そこそこ大きな割れ目が空いている。馬車は通れないが、馬くらいなら十分に入れそうな程だ。


「これじゃあ町にモンスターが入ってきちまうな」


 モンスターは積極的に人里へ侵入はしないが、こんなに簡単に出入り出来る場所があれば迷い込む事もあるだろう。


「店長、どうするずら?」

「役所に報告だな。それで直して貰うしかない」



 こうして、俺とターナの調査は望んでいたボーナスなどの収穫こそ無かったものの、原因を突き止める事は出来た。


 すぐに拠点に戻り、待っていたフランとナズ達にも話す。


「それなら私が直しちゃおっか?」

「俺もそう思ったんだが、城壁だからな。勝手にいじるのはマズイ。役所に言ってくる」


 三人に留守番をしてもらい、俺は久しぶりに中枢区画へと足を運んだ。



 俺の商売の登録手続きをした役所に着き、早速窓口に行って、先ほどの件を伝える。


「て訳なんだ。あれじゃあモンスターが入りたい放題だ。塞いでくれないか?」


 対応をしたのは俺より少し上くらいの男だった。


「そうですか······。実は、前から同じ苦情が入っていて、何度も報告はしているのですが、町の予算不足で改修工事の許可がなかなか下りなくて······」

「そんな事言ったって重要なライフラインだぞ?」

「分かっております。しかし、町議会が認可しない限りは······」

「······。なら勝手に直しても良いか?」

「ここでは何とも申し上げられませんが、多分咎める人は居ないでしょう」


 何とも妙な気分になるような話だったが、一応対応は出来そうな形で俺の用事は済んだ。



 中枢区画の通りを歩きながら、今後の事をぼんやりと考えた。


 それは、これからどうしようかという事だ。

 そう、この今の仕事。始めた商売の今後についてだ。


 俺がこの商売を始めたきっかけは必要に迫られてからだ。

 軍をクビにされ、どこにも雇って貰えず、そして財産も無ければ帰る家も無い。そんな人生詰みの状態だった中で見出だした僅かな希望だったのだ。


 幸いな事に人との巡り合いには恵まれたらしく、フランやナズ、ターナなどとも出会え、想像よりもトントン拍子で稼ぐ事が出来た。


 そして、この間の大仕事での稼ぎなどもあり、俺らは当分の間は生活に困らないくらいの資産を得る事が出来た。少なくとも、明日の飯が食えるかどうか心配していた数日前に比べたら奇跡としか言えない状況だ。


 だが、これで全てが終わった訳じゃない。

 俺らがこれから生きていくためには今の商売を世間に定着させ、安定した収入源を確保していく必要がある。


 そのためにはこれから何をどうするべきか。

 今一度みんなと考えていくのが良さそうだ。


「うーん······。まずは店の完全な復旧だろ。そんでもって宣伝。後は顧客の確保に、ナズやターナの業務の確立······」


 考えなきゃいけない事は山のようにある。

 だが、俺は経営なんてした事ないし、あらゆる専門知識も持ち合わせていない。


 誰かに相談とかするべきだろうか?



「ふーむ。商売って難しいな······」


『あれ? もしかして······。失礼、そこを歩く君』


「ん?」


 誰かに呼び止められたようだ。

 俺は頭の痛くなる考えを切り上げ、今しがたの声の主の方へ振り返った。


 そこに居たのは──。


「あっ! やっぱりトレイルじゃないか!」

「えっ? フルトか?」

「そうだよ、まさかこんな所で会えるなんて!」


 そこに居たのは、少し痩せた眼鏡の似合ういかにも学者っぽい男。

 軍に居た頃の友人フルト・シュトルムだった。


「おおっ、フルト」

「トレイル!」


 感動の再開に俺らは手を取り合った。美しき友情だ。フルトの口からどんな感極まった言葉が出るだろう。


「トレイル! 前に貸した200ゴールド返してくれ」


 感動のあまり膝からガクっと折れそうになった。


お疲れ様です。次話に続きます。

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