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「ん~······よく寝たあ······」
朝。
カーテンの隙間から漏れる日が白い。
ベッドから下りて、フランが取り付けてくれたカーテンを開ける。
──シャッ──
「ふぉ······」
眠気の詰まった意識への不意打ちのような朝の光。夢気分は一気に吹き飛んだ。
「今日も良い天気だな」
さ。今日はどうするかな。
昨日、エクアル村から帰った後はフラン主導の下、酒場の機能回復や各個人の部屋の充実を図った。
俺らの店であり、家でもあるこの拠点だが、長く暮らしていくにはまだまだ資源不足だ。
設備は最低限必要な物は整ってきたが、まだ快適とは言い難い。
資金はこの間のワイバーン討伐により潤沢だが、まだ修理すべき箇所も多い。腐って抜けた床や、割れて失くなった窓は専門の業者を雇った方が良いだろう。
それに、エクアル村やワイバーン討伐のようなでかい依頼はあったが、逆に言うとまだそういう数件の依頼しか来てない。市場調査や宣伝ももっと積極的にやった方が良いだろう。
昨日フランと買ってきた資材の配置は完了していないし、やることは山積みだ。
「あと、やっぱ名前だよなあ」
スレイヤー屋。聞き慣れない言葉だからか、あんまり定着しない。
あと、個人的にはもうちょいユニークなものにしたい。
なんと言えばいいのか。こう、もっと短くて、斬新で、かつ伝統的な雰囲気の名前。
「ねえか。んなもん」
──ズドンッ──
「んっ?」
なんて呑気な事を考えながら階段を下りていた時だ。
裏庭の方から大きな音がした。ちょっとした爆発音のようだ。
「何が?」
反射的に剣を抜いて、すぐに駆ける。
裏口を開けて飛び出す。
飛び出した瞬間、こちらに背を向けて立つフランと、その後ろに隠れるように立つナズの姿が見えた。
「フランっ、ナズっ、無事か?!」
何があったかは分からないが、ともかくすぐにフランの前に出る。
「何事だ?」
「あっ、ごめん~。トレイル起こしちゃった?」
と、気の抜けるようなフランの声に俺も拍子抜けして肩の力を抜いた。
「なんだ、何ともないのか」
しかし、目の前には確かに爆発の跡がある。地面の破壊具合からいって爆裂系の魔法だろうが。
「何があったんだ?」
「えっとね──」
フランが話すところによると、ナズと一緒に裏庭の様子を見に来たら、林の奥からモンスター達が現れたらしい。
幸い大した事ないスライムとかブラット(鼠のようなモンスター)などの小型モンスターだったらしく、今の一撃で事は済んだそうだ。
「モンスターどもが林から、か」
「うん。まあ、小型だったけどね」
ここは元々モンスターの被害によって閉鎖に追い込まれた場所だ。何時かはこういう事も起こるとは想定していたから驚きはしない。
「だが、小型とは言えモンスターはモンスター。それに、この裏の林に居るという事実はやっぱり無視出来ないな」
「うん、そうだね。私とトレイルはともかくとして、ナズちゃんやターナちゃんしか居ない時に襲われたら大変だもん」
「ナズ、大丈夫か?」
「は、はい。少しびっくりしてしまいましたが」
だが、やはり不安そうに林を見つめるナズ。
ふむ。
「なあ、フラン。今日はこの林を探検してみないか?」
「え? ここを?」
聞き返すフラン。
「モンスターを駆除するの?」
「うーん。まあ、そうでもあるが、そもそもどこから入ってくるのか知っておきたいんだ」
ここは町の内側だ。なのにモンスターが入って来ているという事は、防壁のどこかが崩れているのかもしれない。
なら、そこを塞げば問題は解決するかもしれん。
「モンスター駆除専門業者の店がモンスター被害にあってるなんて知られたら面目丸潰れだもんな。金にはならなさそうだが、行こう」
「オッケー」
「そういやターナは?」
ターナの姿が見えない。ナズだけだと心配だから、二人で居て欲しいんだが。
「ターナちゃんは野草採りに行ってます。少しでもお腹の足しにしたいって。もうすぐ帰ってくるかと」
「あ、みんな裏庭に居ただかや~」
と、言ったところで丁度ターナが帰ってきた。
「どしただや?」
「ああ、実はな」
今起こった事と、今からやろうとする事を話したらターナが目を輝かせた。
「なら、オラも行きてえだ! もしかしたら素材が手に入って稼げるかもしんねえだ!」
「そうか。だけどこの家にナズ一人にするのはなあ」
「あ、なら私ここに残るよ。トレイルとターナちゃんで行ってきて」
と、フランが言うと、沈みかけたターナの笑顔が再浮上した。
「ありがとずらフランさん!」
「よし。そうと決まればターナ。すぐに出れるか?」
「もちろんずら!」
パタパタと走っていき、すぐに自分の得物であるハンマーを肩に掛けて戻ってくるターナ。
「店長っ、よろしくずら!」
こうして、俺とターナタッグで裏の林の調査に行く事になった。
「じゃ、行ってくる」
「いってらっしゃーい」
「お気をつけて。ターナちゃんも、無理しないでね」
「んだ!」
ターナと二人で藪を掻き分けて入っていく。
「ふーむ。まあ、何て事もない林だな」
「ここにも薬草ありそうずらね」
特に何の変哲もない林だ。普通の樹木や草があり、有用な物は見当たらない。
「とりあえず、北に真っ直ぐ進めば壁に当たるはずだ。そこへ行ってみよう」
「あい」
警戒しながら進むが、モンスターには出くわさない。
「ふーむ。さっきの奴らだけだったのか?」
「店長、店長。あのキノコ何ずら?」
「ん?」
ターナが指差す方を見ると、いやに大きいキノコがあった。小さな椅子くらいありそうだ。
「キノコか。食えるのか?」
「あ、ここ見てずら。齧った跡があるずら」
確かに。何かに齧られた跡がある。
「ふーん。ちょうどブラットの歯形に近いな」
ここが餌場なのかもしれないな。
──ガサッ──
「ん?」
『ヂヂヂヂッ』
言ってるそばから、ブラットが茂みを揺らして現れた。
「ターナ、下がってろ」
「あい。背中は任せて欲しいだ」
辺りから数匹のブラットが現れ始める。
お疲れ様です。次話に続きます。




