「揃った」
「虎次郎」
「はい」
「鉄砲が増えたな」
「はい」
「前に見たときより、ずいぶん多い」
「製造が安定してきました」
「安定?」
「以前は職人によって出来に差がありましたが、今は同じようなものを続けて作れるようになっております」
「ほう」
「数も増えております」
「玉は?」
「こちらも十分に作れるようになりました」
「火薬は?」
「そちらも問題ありません」
「……」
「どうされました?」
「三つとも揃ったな」
「はい」
「鉄砲だけ増やしても仕方がないと言っておったのう」
「以前、姫様がおっしゃったことです」
「覚えておったか」
「もちろんです」
「今は?」
「鉄砲があり、玉があり、火薬もある」
「しかも、作り続けられる」
「はい」
「すごいな」
「かなりの変化でございます」
「九の国で全部作っておるのか?」
「すべてではありませんが、かなりの部分を国の中で賄えるようになりました」
「前は?」
「鉄砲を買うだけでも大変でした」
「それが今では?」
「作る側になりました」
「……」
「姫様?」
「九の国、大きくなったな」
「はい」
「兵も増えた」
「はい」
「米も増えた」
「はい」
「人も増えた」
「はい」
「仕事も増えた」
「はい」
「鉄も、火薬も、玉も作れる」
「はい」
「前は、援軍を一度出すだけで大騒ぎだったのにのう」
「今では複数の部隊を動かせるようになりました」
「……」
「姫様?」
「私、何をした?」
「いろいろなことをされました」
「そうか?」
「はい」
「団子を食べていただけのような気がする」
「それだけではございません」
「でも、団子は食べた」
「それは否定いたしません」
「では、団子のおかげじゃな」
「……」
「違うのか?」
「そういうことにしておきましょう」
「うむ」
「ただ」
「何じゃ?」
「人が増え、仕事が増え、商いが増えて」
「うむ」
「それぞれが得意なことをするようになった結果でございます」
「……」
「鉄砲を作る者、玉を作る者、火薬を作る者」
「うむ」
「米を作る者、道を作る者、物を運ぶ者」
「うむ」
「それが繋がって、今の九の国になったのだと思います」
「では、私がやったのは」
「はい?」
「みんなが働けるようにしただけか」
「それが一番難しいことなのかもしれません」
「そうか」
「はい」
「なら」
「はい」
「これからも、みんなに働いてもらおう」
「承知しました」
「そして」
「はい?」
「鉄砲も、もっと作ろう」
「はい」
「玉も」
「はい」
「火薬も」
「はい」
「団子も」
「……」
「何じゃ?」
「最後だけ、国力とは関係がございません」
「私には大事じゃ」
「それは存じております」
「なら、よい」
「はい」
「九の国は、まだまだ大きくなるぞ」
「……はい」
「そのうち、本当に大国と呼ばれるかもしれませんね」
「大国?」
「はい」
「では、団子も大きくなるのか?」
「そこだけは変わらないと思います」
「残念じゃ」
「何がでございます?」
「国だけ大きくなって、団子がそのままでは釣り合わん」
「……姫様」
「うむ」
「国のほうを心配してください」
「ちゃんと心配しておる」
「本当でございますか?」
「うむ」
「では、安心いたしました」
「だから団子も増やそう」
「やはりそこに戻るのでございますね」
「大事じゃからな」
「……左様でございます」




