「動き」
「虎次郎」
「はい」
「伊の関所の近く、最近騒がしいそうじゃな」
「はい。四の国の兵が以前より動くようになっております」
「東の国と?」
「よく戦っているようです」
「前とは違うのう」
「はい」
「兵が増えたのか?」
「それほどではありません」
「では、武器?」
「大きな変化はないようです」
「食事?」
「兵糧は以前より安定しているようですが、それだけでは説明がつきません」
「では、何じゃ?」
「分かりません」
「虎次郎にも?」
「はい」
「珍しいな」
「最近よく言われます」
「何を?」
「『分かりません』と」
「そうか」
「はい」
「士気が上がっておる、と書いてあるな」
「はい」
「前は?」
「積極的に戦おうとはしていなかったようです」
「それが今は?」
「東の国が攻めてくると、こちらから出ていくこともあるとか」
「ずいぶん変わったな」
「はい」
「誰かが何か言ったのか?」
「その可能性はあります」
「新しい武将か?」
「まだ確認できておりません」
「褒美を出した?」
「それも分かりません」
「四の国が急に良い国になった?」
「……」
「何じゃ?」
「それは、まだ何とも」
「そうか」
「ただ」
「うむ」
「以前、四の国から陸の国へ逃れた武将もおりました」
「うむ」
「今回の変化と関係があるのかもしれません」
「人が変わった?」
「あるいは、考え方が変わったのか」
「なるほど」
「理由が分からないのは、少し気になるな」
「はい」
「でも」
「はい?」
「ちゃんと戦うようになったのなら、悪いことではないのでは?」
「東の国にとっては悪いことでしょうね」
「そうじゃな」
「我々にとっても、少し複雑です」
「なぜじゃ?」
「四の国が強くなれば、九の国への負担が減るかもしれません」
「うむ」
「ですが、戦そのものが激しくなる可能性もあります」
「それは困る」
「はい」
「四の国には頑張ってほしいが」
「はい」
「戦は増えてほしくない」
「難しいところでございます」
「では」
「はい」
「しばらく見ておこう」
「それがよいかと」
「理由が分かるまで?」
「はい」
「もしかしたら、四の国にも何かあったのかもしれん」
「……」
「どうした?」
「姫様」
「うむ」
「最近、人のことをよく見るようになられましたね」
「そうか?」
「はい」
「国が変わるのは、人が変わるからじゃろ?」
「……」
「違うか?」
「いえ」
「なら、四の国で何が変わったのかも、人を見れば分かるかもしれん」
「その通りかもしれません」
「では、もう少し様子を見よう」
「承知しました」
「それに」
「はい?」
「四の国がちゃんと戦ってくれるなら」
「はい」
「援軍の催促が少し減るかもしれん」
「……」
「それは良いことじゃ」
「それが一番の理由でございますか?」
「うむ」
「やはり姫様らしいです」




