「誰のため」
「虎次郎」
「はい」
「鳥の城から書状が来た」
「陸の国の将からでございます」
「何と?」
「自分の首を差し出すので、他の兵の命は助けてほしい、と」
「……」
「城を占領した責任は自分にある。兵たちは命令に従っただけだ、と」
「そうか」
「いかがいたしましょう?」
「その将も、死ぬ必要はないじゃろ」
「よろしいので?」
「うむ」
「兵も?」
「もちろんじゃ」
「陸の国の兵でございます」
「分かっておる」
「敵兵です」
「戦は終わったのじゃろ?」
「はい」
「なら、もう敵ではない」
「……」
「自分の首一つで皆を助けようとしておるのじゃ」
「はい」
「そんな者を殺す理由がない」
「では」
「全部、許そう」
「承知しました」
「城を取り返せたのだから、それでよい」
「はい」
「兵たちにも帰る場所があるじゃろ」
「そうですね」
「では、書状を返そう」
「何と?」
「誰も殺さぬ、と」
「はい」
「将にも、兵にも」
「承知しました」
「それから」
「はい?」
「ちゃんと帰ってよい、と伝えてくれ」
「分かりました」
しばらくして、虎次郎が新しい書状を手に戻ってくる。
「姫様」
「うむ」
「中の国から返事が来ました」
「鳥の城のことか?」
「はい」
「何と?」
「陸の国の将と兵を、すべて処刑したそうです」
「……」
「将だけではありません」
「兵も?」
「全員です」
「……そうか」
「さらに」
「まだあるのか?」
「鳥の城は中の国の城であるから、九の国の部隊は引き上げるように、と」
「……」
「労いの言葉もありません」
「そうか」
「九の国の兵が奪還した城なのですが」
「うむ」
「まるで最初から自分たちだけで取り戻したような扱いです」
「……」
「姫様?」
「虎次郎」
「はい」
「私たちは、何のために戦ったのじゃ?」
「鳥の城にいる人を助けるためです」
「そうじゃな」
「それに、陸の国の兵も助けるためでした」
「うむ」
「ですが」
「うむ」
「中の国は、そうは考えなかったようです」
「……」
「どうされますか?」
「九の国の兵を迎えよう」
「承知しました」
「ちゃんと労ってやらねばな」
「はい」
「命を張って戦ったのじゃ」
「はい」
「誰かに褒められなくても」
「……」
「私が覚えておればよい」
「姫様」
「うむ」
「それで十分でございます」
「そうか?」
「はい」
「なら、よかった」
「はい」
「虎次郎」
「はい」
「次に誰かが助けを求めてきたら」
「はい」
「私は助ける」
「……」
「でも」
「はい?」
「もう、誰かのために戦った兵を、誰かの手柄にはさせぬ」
「承知しました」
「九の国の兵は、九の国の兵じゃ」
「はい」
「ちゃんと、私が迎える」
「はい」
「帰ってきたら、団子も出そう」
「……」
「何じゃ?」
「兵全員にですか?」
「うむ」
「かなりの数になります」
「では、大きな団子を作ろう」
「団子の大きさで解決する問題ではございません」
「そうか?」
「はい」
「では、たくさん作ろう」
「それなら、何とかなるかもしれません」
「よし」
「はい」
「帰ってきた兵には、ちゃんと伝えよう」
「何と?」
「よく帰ってきた、と」
「……はい」
「それだけは、誰にも邪魔されぬからな」
「左様でございます」




