「鳥の城攻略」
「虎次郎」
「はい」
「鳥の城、どうやって取り戻す?」
「まず、兵の数が問題です」
「たくさんは出せぬな」
「はい。九の国から出せる兵には限りがあります」
「城は大きい?」
「かなり大きいです」
「攻めにくい?」
「はい」
「西側は?」
「川に守られております」
「川か」
「はい」
「それは困ったな」
「正面から渡るのは難しいでしょう」
「なら、川をなくせばよい」
「……」
「どうした?」
「なくす?」
「うむ」
「川を?」
「そうじゃ」
「そんなことができますか?」
「堀なら埋めるじゃろ?」
「はい」
「川なら?」
「……」
「せき止める」
「……なるほど」
「違うか?」
「いえ」
「川をせき止めれば、水が上流側に溜まります」
「うむ」
「今の時季なら、収穫前で水も多い」
「では?」
「川下の流れを弱めれば、城の周囲に水が溜まる可能性があります」
「城のほうに?」
「はい」
「それでは」
「城の周囲が水で囲まれることになります」
「川が堀になる?」
「元々川ですので、今より深くなるかもしれません」
「……」
「姫様」
「うむ」
「その逆です」
「逆?」
「城を守っている川を、城を孤立させるために使うのです」
「そういうことじゃな」
「はい」
「では、城を攻めやすくするのではなく」
「はい」
「城から出にくくする」
「そのほうがよいかと」
「兵をたくさん使わなくても?」
「可能性はあります」
「なら、それじゃ」
「ただし、慎重に行う必要があります」
「なぜじゃ?」
「水を扱う以上、こちらにも危険があります」
「味方にも?」
「はい」
「なら、無理は駄目じゃ」
「その通りです」
「城を取り戻すために、こちらの兵をたくさん失ったら意味がない」
「はい」
「城の中の人まで苦しめるのも嫌じゃ」
「……」
「どうした?」
「いえ」
「何じゃ?」
「やはり姫様は、そこを気にされるのですね」
「城を取り戻すのじゃろ?」
「はい」
「なら、そこにいる人も九の国の人になるかもしれん」
「なるほど」
「だったら、最初から傷つけすぎぬほうがよい」
「おっしゃる通りです」
「早く終わらせよう」
「はい」
「長引けば、その分だけ兵も民も苦しくなる」
「では」
「うむ」
「川を利用して城を孤立させる」
「うむ」
「こちらの兵は無理に突入させない」
「うむ」
「まずは出入りを断ち、城内の様子を見る」
「はい」
「そして、降りてくる機会を作る」
「はい」
「戦わずに済むなら、それが一番じゃ」
「……」
「虎次郎?」
「はい」
「何じゃ?」
「最初は、どうやって城を攻めるかばかり考えておりました」
「うむ」
「ですが、姫様は最初から『どうすれば戦わずに済むか』を考えておられた」
「そうか?」
「はい」
「私は兵が少ないから、そう考えただけじゃ」
「それだけではないと思います」
「そうかのう」
「はい」
「まあよい」
「はい」
「それより川じゃ」
「はい」
「せき止める場所は?」
「調べております」
「水が溜まりすぎたら?」
「その場合はすぐに流せるようにします」
「うむ」
「味方の陣も安全な場所に置きます」
「うむ」
「できるだけ短期間で決着をつけます」
「それじゃ」
「はい」
「鳥の城を取り戻す」
「はい」
「兵を減らさず」
「はい」
「民も傷つけず」
「はい」
「できれば」
「はい?」
「城も壊さず」
「……」
「何じゃ?」
「注文が多ございますね」
「大事なことじゃ」
「承知しました」
「虎次郎」
「はい」
「できるか?」
「やってみせます」
「頼んだぞ」
「はい」
「では、川を味方につけよう」
「承知いたしました」
「九の国は兵が少ないからな」
「はい」
「その分、頭を使えばよい」
「……」
「何じゃ?」
「また、さらりと難しいことをおっしゃいますね」
「難しいか?」
「はい」
「なら、虎次郎に任せる」
「最初からそのおつもりだったのですね」
「うむ」
「……承知いたしました」




