「商人の道」
「虎次郎」
「はい」
「この前の商人、また来たのか?」
「いえ。今回は、その商人から分かったことがございます」
「何じゃ?」
「砂鉄を仕入れる道があるそうです」
「砂鉄?」
「はい」
「何に使う?」
「鉄を作るのにも使いますが……火薬を作る上でも、鉄を扱う道具を揃える上でも重要になります」
「鉄砲にも?」
「はい」
「では、大事じゃな」
「かなり」
「その道を使えるのか?」
「商人との付き合い次第かと」
「付き合い?」
「向こうにも商売がありますから」
「たくさん買えばよいのか?」
「それだけではありません」
「では?」
「信用してもらうことです」
「信用?」
「この国なら安心して商売ができる、と」
「なるほど」
「一度来ただけで終わるより、また来てもらえるほうがよい」
「この前の商人も、また来たな」
「はい」
「では、九の国を気に入ったのか?」
「商売になると思ったのでしょう」
「それなら、もっと気に入ってもらおう」
「何をすればよいでしょう?」
「……ちゃんと話を聞く」
「はい」
「無理な値段をつけない」
「はい」
「約束したことは守る」
「はい」
「来たら、ちゃんと迎える」
「それは大切です」
「帰るときも、また来てくれと言う」
「はい」
「それから」
「まだありますか?」
「団子を出す」
「……」
「商人も団子は好きじゃろ?」
「人によります」
「では、嫌いなら別のものを出す」
「そういうことでございます」
「商人も人じゃからな」
「……」
「何じゃ?」
「いえ」
「また変なことを言ったか?」
「いいえ」
「ならよい」
「姫様」
「うむ」
「商人との付き合いを大事にするというのは、まさに今おっしゃった通りだと思います」
「そうか?」
「はい」
「商人からすれば、儲かる場所が一番じゃろ?」
「はい」
「なら、儲けてもらえばよい」
「その通りです」
「こちらも欲しいものが手に入る」
「はい」
「向こうも儲かる」
「はい」
「だったら、どちらも嬉しい」
「左様でございます」
「なら、商人は大事にせねばな」
「はい」
「砂鉄を持ってきてくれる商人も」
「はい」
「米を売ってくれる商人も」
「はい」
「魚を持ってくる商人も」
「はい」
「団子を売ってくれる商人も」
「……」
「何じゃ?」
「最後だけ少し違う気がいたします」
「大事じゃぞ」
「姫様にとって、でございますね」
「うむ」
「それは否定いたしません」
「では、その商人が次に来たら」
「はい」
「ちゃんと迎えてやろう」
「承知しました」
「それから砂鉄の話を聞こう」
「はい」
「どこから来るのか」
「はい」
「どうやって運ぶのか」
「はい」
「どれくらい持ってこられるのか」
「はい」
「それで、いくら儲かるのか」
「……」
「どうした?」
「姫様」
「うむ」
「商人の話をするうちに、すっかり商売の話がお好きになられましたね」
「国を強くするのに必要なのじゃろ?」
「はい」
「なら、商人とも仲良くせねば」
「おっしゃる通りです」
「人が人を連れてくるように」
「はい」
「商人も商人を連れてくる」
「……」
「なら、まずは今いる商人を大事にしよう」
「それが一番の近道かもしれませんね」
「近道なら、道も整えよう」
「話がまた道に戻りましたね」
「大事なことじゃ」
「はい」
「人が来る道じゃからな」
「……そうでございますね」
「では、商人が歩きやすい道にしよう」
「承知いたしました」




