「兵の帰り道」
「虎次郎」
「はい」
「兵の帰りが早いな」
「はい。予定より少し早く戻っております」
「何かあったのか?」
「道が良くなったおかげかと」
「道?」
「以前、姫様が整えようとおっしゃった道です」
「そうじゃったか」
「ぬかるみも減りましたし、荷車も通りやすくなりました」
「それで帰りが早くなったのか」
「はい」
きらりが少し考える。
「道が役に立ったのじゃな」
「はい」
「人が歩きやすいようにしただけなのに」
「兵も人でございます」
「……そうじゃった」
「はい」
「私は兵のために作ったつもりではなかったぞ」
「存じております」
「領民が歩きやすいようにと思ったのじゃ」
「はい」
「それが兵にも役に立つ」
「そういうことでございます」
「面白いな」
「はい」
「なら、道は大事じゃな」
「かなり」
「では、もっと整えよう」
「よいと思います」
「今度は兵がもっと早く帰ってこられるように」
「……」
「何じゃ?」
「少しだけ目的が変わっております」
「そうか?」
「最初は領民のためだったはずですが」
「兵も領民じゃろ?」
「兵でございます」
「九の国の者ではある」
「はい」
「なら、歩きやすい道があったほうがよい」
「その通りでございます」
「だったら、やっぱり同じじゃ」
虎次郎が少し笑う。
「左様でございますね」
「それに」
「はい」
「兵が早く帰ってくれば、家族も安心する」
「……はい」
「だったら、やっぱり道は整えたほうがよい」
「承知いたしました」
「虎次郎」
「はい」
「道を広くするのは大変か?」
「場所によります」
「では、簡単なところから」
「はい」
「坂は?」
「少々難しいかと」
「なら、坂をなくそう」
「姫様」
「なんじゃ?」
「国から坂をなくすのは、道を作るより大仕事でございます」
「そうか」
「はい」
「では、坂は残そう」
「ありがとうございます」
「でも歩きやすくする」
「承知いたしました」
「それから雨の日でも」
「はい」
「……」
「どうされました?」
「屋根をつけるのはどうじゃ?」
「またその話でございますか」
「よい考えじゃと思うのじゃが」
「道を整えるだけで十分でございます」
「そうか」
「はい」
「残念じゃ」
「九の国が屋根で覆われずに済みます」
「それもそうじゃな」
「はい」
「では、道を頼む」
「お任せください」
「皆が早く帰ってこられるように」
「はい」
「兵も」
「はい」
「領民も」
「はい」
「私も」
「姫様は馬車でございます」
「……」
「歩きやすい道でなくても問題ないかと」
「私だけ仲間外れじゃな」
「そういう意味ではございません」
「では、私の馬車も早く帰れる道にしてくれ」
「結局、姫様もでございますか」
「当たり前じゃろ」
「承知いたしました」




