「見送る」
「虎次郎」
「はい」
「今日は兵が出るのじゃな」
「はい」
「三百人?」
「三百でございます」
「多いな」
「前よりは増えました」
「そうじゃったな」
「はい」
「……」
「どうされました?」
「何か言うことはないのか?」
「私がですか?」
「兵たちにじゃ」
「お気をつけて、と」
「それだけ?」
「無事に帰ってこい、とも」
「それじゃ」
「はい」
「他には?」
「姫様がおっしゃればよろしいかと」
「私か……」
「はい」
「頑張れ、では変じゃな」
「そうでしょうか?」
「もう十分頑張っておるじゃろ」
「……確かに」
「死ぬな、も変じゃ」
「戦でございますから」
「うむ」
「では、何と?」
きらりは少し考える。
「行ってらっしゃい」
「はい」
「ちゃんと帰ってくるのじゃぞ」
「……」
「それでよいか?」
「はい」
「簡単すぎるか?」
「いえ」
「そうか?」
「姫様らしいと思います」
「なら、それにしよう」
「はい」
「皆、帰ってくるとよいのう」
「そうでございますね」
「三百人とも」
「はい」
「一人も欠けずに」
「……」
「虎次郎?」
「はい」
「何じゃ?」
「私も、そう願っております」
「うむ」
「では、行ってらっしゃい、と」
「うむ」
「ちゃんと帰ってくるのじゃぞ、と」
「うむ」
「それで十分でございます」
「そうか」
「はい」
「では、そう言ってくる」
「はい」
「虎次郎」
「はい」
「お主も帰ってくるのじゃぞ」
「……私は行きません」
「そうだったか?」
「はい」
「なら、安心した」
「何がでございます?」
「お主まで行ったら、誰が私の相手をするのじゃ」
「……それは困りますね」
「じゃろ?」
「はい」
「では、見送ってこよう」
「承知いたしました」




