「人と仕事」
「虎次郎」
「はい」
「最近、鍛冶場が忙しいそうじゃな」
「はい」
「何をそんなに作っておる?」
「農具やら、鍋やら、武器やら」
「ずいぶん色々じゃな」
「人が増えましたから」
「人が?」
「働く者も増えております」
「九の国の者か?」
「それだけではありません」
「ほう」
「四の国から来た者もおります」
「他には?」
「中の国から来た者も」
「中の国からも?」
「はい」
「東の国から来た者もおります」
「東の国から?」
「はい」
「ずいぶん遠くから来るのう」
「九の国で仕事があると聞いて来たようです」
「仕事があるから?」
「はい」
「なら、仕事をしてもらえばよい」
「そのようにしております」
「どんな仕事でも?」
「できる仕事があれば、ですが」
「できるならやってもらえばよい」
「姫様」
「何じゃ?」
「以前も同じことをおっしゃいました」
「そうか?」
「はい」
「私、そんなに同じことを言っておるか?」
「かなり」
「覚えておらん」
「私は覚えております」
「虎次郎はよく覚えておるな」
「姫様が忘れすぎなのでございます」
「そうかのう」
「はい」
「でも、いろんな国から来るのはよいことじゃな」
「はい」
「鍛冶ができる者が来れば鍛冶をしてもらう」
「はい」
「米を作れる者なら米を作ってもらう」
「はい」
「商売ができる者なら商売をしてもらう」
「はい」
「歌が上手い者なら?」
「……」
「何じゃ?」
「歌だけでは仕事に困るかもしれません」
「では、私の前で歌ってもらおう」
「姫様の仕事になっております」
「そうか?」
「はい」
「では、私も仕事を作ってやらねばな」
「十分ございます」
「何が?」
「姫様のお仕事でございます」
「私は何をしておる?」
「国主を」
「それだけ?」
「それが一番大事でございます」
「そうか」
「はい」
「では、皆には仕事をしてもらって、私は国主をする」
「左様でございます」
「うむ」
「何か嬉しそうですね」
「人が増えて、仕事も増えておる」
「はい」
「なんだか、国らしくなってきた気がする」
「……以前から国でございます」
「そうじゃった」
「はい」
「でも、前より賑やかじゃ」
「それは間違いありません」
「なら、よいな」
「はい」
「仕事がない者が来たら?」
「仕事を探します」
「仕事が見つからなかったら?」
「何とかします」
「虎次郎」
「はい」
「お主は大変じゃな」
「今さらお気づきになったのでございますか?」
「うむ」
「遅すぎます」




